通信や放送などの分野で功績があった人に贈られる前島密賞に、民間放送では初めて、手話放送などを30年以上続けてきたOHKが受賞しました。
「前島密賞」受賞という形で評価されたOHKの手話放送の取り組み。専門家は、ローカルテレビ局の新しい姿を示したと指摘します。
(社会構想大学院大学コミュニケーションデザイン研究科 橋本純次准教授)
「共生社会、インクルーシブ社会の実現を目指すのが一過性のものではないということ。ある種、長年やっている中で企業文化として根付いている。これが評価された」
こう指摘するのは、ローカルテレビ局を研究している東京の社会構想大学院大学の橋本純次准教授です。
江戸時代に越後国、現在の新潟県に生まれ、日本の近代郵便制度をつくった政治家、前島密。この名前を掲げたのが「前島密賞」です。1955年に設けられ、郵便を含む情報通信事業や放送事業に貢献した人に贈られてきました。最近ではテレビ番組やラジオ番組のインターネット配信事業に貢献した人に贈られています。
OHKは1993年、聴覚に障害がある夫婦の取材をきっかけに、ニュース番組で30年以上、手話のコーナーを展開。その後、「情報から誰一人取り残されない社会」を目指し、手話放送委員会をつくってテレビで分かりやすい手話表現に挑戦しました。
さらにスポーツ分野での手話実況や手話実況者を育成するアカデミーの設立など、取り組みを全社的に進めたことが評価されました。民間放送で「前島密賞」を受賞するのは今回が初めてです。
持続可能な社会が多くの企業でキーワードとなる中、橋本准教授は、岡山・香川のローカルテレビ局から新たな価値観が広がる可能性を指摘します。
(社会構想大学院大学コミュニケーションデザイン研究科 橋本純次准教授)
「持続可能性という言葉が全国的なキーワードになって注目される中、それに貢献したい企業は全国にたくさんある。例えばOHKはこんな取り組みをしている。前島密賞みたいな大きな賞を取っている。社会的に評価されているとなるとぜひ一緒に仕事をしないかと話がつながるかもしれない。これでインクルーシブ社会が広がるので良いこと」
一方、メディアの信頼が問われる時代。橋本准教授は、ローカルテレビ局が信頼を確かなものにするため、ローカル発の取り組みが重要だとした上で次のように指摘します。
(社会構想大学院大学コミュニケーションデザイン研究科 橋本純次准教授)
「普段、地域住民のことを考えて実践するのか地域住民に伝わって信頼関係が生まれる。今、求められているのはこういうことをやっているだけでなくどうしてこういうことやっているのか。(地域の人と)前提の共有。サッカー(実況)の手話放送をやっているのを見ていいねと思う。そこで終わってしまうのはもったいない。どうしてOHKがやっているのか。テレビ局がなぜやっているのか。しっかり共有する関係構築が必要」
OHKの手話放送の取り組みはローカルテレビ局の新しい姿を描く試金石となりそうです。