日本時間の9日、米・トランプ大統領は、世界各国を対象に発動した「相互関税」の一部について、90日間一時停止することを認めると発表しました。

一方で、米国に対し84%の対抗関税を課すと表明した中国に対しては、104%としていた相互関税を125%に引き上げると表明。

突然ともいえる、大幅な方針転換。
キャノングローバル戦略研究所・主任研究員の峯村健司氏は、その裏側には、トランプ氏の「焦り」が垣間見えるといいます。

キャノングローバル戦略研究所 峯村健司氏:
トランプさんの強気の発言、「俺のディールだ」と言っているのは多分強がりで、内心、めちゃくちゃびびっていると思いますね。
一つは株式市場、世界でいうと数百兆円の富がなくなった。“まずい”が1つ。もう一つは国債ですね、アメリカの国債がバカバカ売られてしまって、かなり債券市場が慌てた。トランプさん自身も「債券市場まずいな」とぽろっと漏らしている。3つ目はビジネスサイド、アメリカの企業から「ちょっと、いいかげんにしてくれ」ときている。その3つの理由だと思いますね。

――各国が交渉した結果ではなく交渉する姿勢を見せただけで一時停止をした裏側には、株価の乱高下に焦りがあったと?
実際に交渉すると言った国は、日本を含めてそんなにまだ多くはないんです。となると、株価がドンと下がったところで、一期目のトランプ政権を務めていた幹部の話によると、トランプさんは「俺はタリフマン(関税男)」だと言うのですが、実は関税よりも気にするのは「ダウ」だと。つまり米国の株式の価格をすごく気にするらしいと。下がったときは「なぜ下がったのか原因を追及しろ」と、結構幹部には言ってきたらしく、かなり株価は気にしていると。
(トランプ氏は)一期目の時も、貿易戦争はなくなったと言った二日後とかにまた関税をかけたりと、普通に我々は慣れちゃっていたので、「また言ってるよ」と。だから、あまり一喜一憂しないというのは大事ですね。

――では90日というのも覆る可能性が?
今回は90日とはっきり言っているので、90はやると思いますが、ディールがうまくいかないと、ひょっとしたらまた関税という形になるかも知れませんね。
トランプ関税の裏に“ナバロ氏” 交渉のカギは?
峯村氏によると、今回の「トランプ関税」には、上級顧問であるピーター・ナバロ氏(75)が強く関わっているのではないかといいます。

ナバロ氏は、トランプ政権一期目でも通商政策担当の大統領補佐官を務めていた、トランプ氏の側近の1人です。
「米国がダメになったのは貿易赤字のせい。巨悪の根源は中国だ」という考えを持っており、対中関税は、「中国と戦うには関税」というナバロ氏の発想から来ていると言われています。政府関係者の中には、「ナバロ氏が暴走している」と話す人も…。

キャノングローバル戦略研究所 峯村健司氏:
ナバロさんの言うことは、トランプさんは一期目の時から聞いていたらしいので、そのナバロさんが「とにかく関税をかけましょう」と言うのを、トランプさんは間に受けてやってみたと。

――なぜナバロ氏の言う中国だけでなく、同盟国にも?
ナバロさんが言う中国が悪い理由がまさに「貿易赤字」なんです。ですから、他に貿易赤字を作っているところも、同盟国であっても悪いと。同盟の重要性より貿易赤字が悪だという思いが強いんです。
ナバロさんやトランプさんは1980年ごろの発想が強いんです。その頃で言うと、貿易赤字というのは負の部分が多かったのですが、ここまでグローバル化が進んでいると別に貿易赤字だけが悪いというのは時代遅れと。

一方で、米国のベッセント財務長官は、「日本は交渉の先頭にいる」と記者団に述べた上で、交渉を望む全ての国々の話を聞きたいと思っていると説明しました。
一時停止の90日間で、日本はどのような交渉を行うべきなのでしょうか?

キャノングローバル戦略研究所 峯村健司氏:
まずはオールジャパンで交渉に当たらなくてはいけない。小さなパーツではなく、LNG(液化天然ガス)を購入するとか、あとは「米が700%」と言ってきているので、そこの関税をどうするのか。自動車なんかも、車検などの日本独特の制度が悪いと批判している。本当に見直すべきところは見直すべきだと。これはいろんな省庁にまたがっているのをまとめる、それは石破さんの役割だろうと。

キャノングローバル戦略研究所 峯村健司氏:
もう1点、切り札で言うと、安倍昭恵さんかなと見ています。
暴れるトランプさんに“誰が鈴を着けられるのか”という話をトランプ政権の人に聞いたところ、「誰もいないけど、あえて言うとメラニア夫人ではないか」と。メラニアさんにはかなり頭があがらないらしく、メラニアさんのいうことは聞くだろうと。で、メラニアさんと一番仲がいいのは?となると昭恵夫人だと。ですから、昭恵さんが特使ではないですが、メラニアさんに言っていただいて、トランプさんの首に鈴をつけるとやれれば、少しこの交渉は良くなるのではないかと。
(「サン!シャイン」 4月10日放送)