10月の量産開始前に予約が2000件以上!軽自動車よりもコンパクトな「1人乗り」の需要が掘り起こされている。東広島市で開発が進む超小型EV(電気自動車)の予約者を対象にした初めての試乗会が開かれた。

予約者を工場に招き、初の試乗会

颯爽と走る独創的な1人乗りの車体。東広島市のスタートアップ企業「KGモーターズ」が開発中の超小型EV「mibot(ミボット)」だ。量産開始は2025年10月を予定しているが、4月5日、先駆けて予約をした人を工場に招き、初めての試乗会が開かれた。

「うぇーい、うおおお」
そう言って笑顔で試乗するのは神奈川県から訪れた予約者の女性。

ミボットに試乗した予約者
ミボットに試乗した予約者
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車から降りるなり「欲しい!」と完成が待ちきれない様子。ミボットの魅力について「日常でそこまで長距離を走ることもないので、普段の買い物に行ったりちょっとした場所に移動するのにはとてもいい」と話していた。

また、徳島県から訪れた男性は「これから歳をとっていく者でも車がすごく近い存在で使える」と先を見据えた購入のよう。広島・福山市から参加した親子は「期待値以上でした。このフォルムを見たときにどんな形であれ買おうと思いました。もちろん、妻には内緒です」と話し、コロンとした丸いフォルムがお気に入りだ。

ミボットの最高時速は60キロ。静かな走行で直角のカーブも自在に曲がれる小回りのよさが超小型EVならでは。車検の必要ない“原付ミニカー規格”に分類され、価格110万円(税込)に加えて維持コストの安さやデザイン性でも注目を集めるようになった。2024年8月に一般販売予約をスタートさせてから半年あまりでSNSを中心に反響が広がり、開発段階にもかかわらず全国から2000件以上の予約が寄せられている。

「ハンドルが重い」利用者の声を反映

KGモーターズ・横山文洋さんは試乗会の参加者に「きょう乗ってもらった皆さんの意見が、ミボットの量産に向けて重要なものになっていきます」と呼びかけ、“一緒につくっていく”という姿勢を強調した。スタートアップ企業にはまだ実績がない。その分、既存の概念にとらわれず、試乗した人の声をできる限り量産車に反映させようとしている。

試乗を終えた1人1人に、開発責任者のKGモーターズ・久保昌之さんが聞き取りを行う。
「車体の安定感で気になったことはありますか?」
「急にハンドルを切ってもふらつく不安はなかったです」

質問を重ねることで、今まで見えていなかった気づきもあった。

試乗中、ミボットのハンドルが「重い」と感じた人
試乗中、ミボットのハンドルが「重い」と感じた人

「よいしょ!重い!」
試乗した人の中に、急ハンドルを切ったときに少し「重い」と感じる人がいた。
「小回りがきく車なんでもう少しハンドルが軽いほうがいいんじゃないかなと自分は思いましたね」

試乗した人の意見をヒアリング
試乗した人の意見をヒアリング

それを聞いた久保さんは「特に年配の人に乗ってもらいたいと思っていて、そこは改善が必要」と前向きに受け止めていた。

“ゼロからみんなでつくる”を貫く

2021年のプロジェクト発足以降、開発の様子を YouTubeで積極的に情報発信し、仲間たちと「ゼロ」からノウハウを積み上げてきたKGモーターズ。

待望の量産開始に向け予約者も立派な「開発メンバー」に加え、さらなる進化を目指す。
KGモーターズ・横山さんは「予約が伸びているのはポジティブなようで、信用を裏切ってしまうと崩れるのは一瞬だと思っています。試乗した人の声を聞いている限り、満足度は及第点。楽しんでもらえたのではとホッとしています」と胸をなで下ろした。

また、KGモーターズ・楠一成社長は今回の試乗会のねらいについて「できる限りありのままお伝えする。みんなでつくっている乗り物なんだよ、というのを皆さんに感じていただけるのが非常に重要かなと思っています。量産化に向け、できることはできる限りやっていきたい」と意欲を見せた。量産化が現実のものとなった今も、思いはプロジェクト発足当時のまま。夢を追いかけるユーチューバー集団は伴走者を増やしながら加速し続けている。

(テレビ新広島)

テレビ新広島
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