アメリカのトランプ大統領が発表した世界各国に対する相互関税。アメリカへ農林水産物を輸出している大分県内でも先行きが不透明なことから心配する声が聞かれました。
トランプ政権が打ち出した相互関税、日本への関税は日本時間の9日24%に引き上げられます。今後の影響が懸念されていますが、アメリカへの農林水産物の輸出品目のうち県内では養殖ブリが全体の半分以上を占めています。県によりますと県内の農林水産物のアメリカへの輸出額は2023年度、養殖ブリが最も多く3億3000万円、牛肉が1億9000万円、次いで木材などの製材品となっています。
3月には、養殖ブリとおおいた和牛の輸出に取り組む県内2つの団体が「積極的に取り組む手本となる産地」として国から「フラッグシップ輸出産地」と認められました。こうした輸出への機運が高まる中で発動された今回の相互関税。
認定を受けた県漁業協同組合は現時点では大きな影響は無いとしつつも、輸出拡大を目指す中で痛手となりそうです。
◆県漁協 佐藤伸弘経済事業部長
「トランプ大統領による関税の引き上げの話が続いて出鼻をちょっとくじかれたというような形で、(輸出の)ハードルは高くなったのかなというような思い」
もし、上がった関税分を価格に転嫁出来なければ、生産者にしわ寄せが来ることも予想されるということです。
◆県漁協 佐藤伸弘経済事業部長
「(輸出業者)が生産者の方へ値引きという形で価格を抑えてくる可能性があるので、生産者もそういった形が発生すると、ブリの価格自体が低くなって、厳しい状態になってくる可能性 が考えられるんじゃないかなと思う」
◆TOS甲斐菜々子記者
「竹田市久住にある農場です。こちらで育てられている和牛に も相互関税の影響が懸念されています」
養殖ブリに次いで輸出が多いのが「おおいた和牛」を中心とした牛肉です。こちらの農場でも「おおいた和牛」などおよそ160頭の牛を飼育しています。県内で育てられた和牛は卸売り会社を通じてアメリカなどに輸出されています。今の時点で大きな影響は無いということですが、えさ代の高騰などもあり今後への不安は隠せません。
◆まるひで 工藤一雄農場長
「肥育農家としてもまだ不安視しているところではある。餌の物価高を含めて安定して供給出来たらなと思います」
専門家はトランプ大統領の相互関税について、一番の懸念は各国が報復関税に踏み切ることだと危惧しています。
◆大銀経済経営研究所 渡辺剛之社長
「関税の応酬が続いていくと世界同時不況になるというような声も聞かれているので本当に世界同時不況ともなれば、当然ながら大分もその影響は免れないと思う」
また、製造業が盛んな県内経済にも今後、どのような影響があるが注視していく必要があるということです。
◆大銀経済経営研究所 渡辺剛之社長
「サプライチェーンの中で、直接、間接、問わず輸出産業との関係性は非常に強い県になりますので。アメリカにどの程度の輸出があるかというのも影響されるが今後その動向には注意が必要だと思う」
一方、県は中小企業や輸出事業者を対象にした相談窓口を4月4日に設置しました。県では当面の間、平日の午前9時から午後5時まで相談を受け付けるということです。
世界中で混乱が続く「トランプ関税」。政府による今後の交渉の行方はまだ見えませんが、輸出をする事業者にとって先の見えない厳しい状況は続きそうです。