3日、日本時間の午前5時過ぎ、米・トランプ大統領が、貿易相手国と同じ関税率を課す、「相互関税」の具体的な内容を発表しました。

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説明に使用したボードには、米国が貿易赤字の解消をはかりたいとする国や地域の名前が掲載されており、日本に対しては今後、24%の相互関税を課すといいます。

3月下旬には、輸入する全ての自動車に25%の関税を課す大統領令にも署名。日本時間の3日から発動となっており、乗用車は2.5%だった関税が27.5%に。トラックは25%から50%に倍増。

対応を協議した自民党の会合でも、強い警戒感を示しています。

自民党 小野寺政調会長:
相互関税をかけるというトランプ大統領の指摘がございます。仮にもしこれが20%とすると、乗用車においては47.5%、トラックにおいては70%。もうこれだけの関税では、おそらく各企業は利益を上げるどころか、ほとんど赤字になってしまう。日本全国、全ての地域において影響が出る大きな問題となる。

「サン!シャイン」が、愛知県碧南市にある自動車部品製造業の「旭鉄工」を取材すると、不安の声が…。

「旭鉄工」木村哲也社長:
米国に部品を直接輸出はしていないのですが、トヨタさんを通じて完成車として部品をお納めしている。売上げの中でもそれなりの割合はありますので、まず関税がかかって売上げが下がる、もしくは米国の経済そのものが調子悪くなって車の売れ行きが下がる、結果として我々の売上げも下がるということになりますので。
これがいつまで続くのかという…、いきなり米国の現地生産に移すということはできないんですけど、なんとか日本政府と米国政府の間で折衝して回避してくれないかというのが当然ながら一番の願いではあります。

石破茂首相は米国との関税問題について、1日、「引き続き措置の対象からの除外を強く求めていく」と説明。影響を受ける企業への短期対応として、資金繰り支援の強化、全国に相談窓口設置、政府が経営アドバイスなどを行う「ミカタプロジェクト」などを発表。

さらに、武藤経産相は日本時間3日未明、米・ラトニック商務長官と電話会談し、日本の主張をあらためて伝えるとともに、トランプ政権の対応を聴取し、今後の日本政府の対応を検討するものとみられています。

日本国民への影響は?米国企業の株価急落

今回の発表はどれほど私たちの生活に影響があるのか?第一生命経済研究所の首席エコノミストである永濱利廣氏に詳しく聞きました。

左:キヤノングローバル戦略研究所 峯村健司氏 右:第一生命経済研究所 永濱利廣氏
左:キヤノングローバル戦略研究所 峯村健司氏 右:第一生命経済研究所 永濱利廣氏

第一生命経済研究所 永濱利廣氏:
すでに先物市場で日経平均が1000円以上下がっていて、そもそも24%の関税というのが想定以上だったんです。元々20%ぐらいだと思われていたのが24だったので、かなり株も下がっているので、これは自動車産業だけでなく、輸出産業に大きな影響があるので、そうなると業績が下がれば今年の春闘は良かったですけども、来年の春闘に影響が出てくると。なので、来年のお給料とかはこのままいくと厳しいことになると。

――米国内の製造業も株価が急落しているが?
キヤノングローバル戦略研究所 峯村健司氏:

トランプさんの頭の中と(マーケット)のずれなんです。トランプさんの頭の中は1980年代で止まっているんです。80年代は日本が伸びてきて、自動車は日本製が増え、ビルも日本の会社に買われていくと、だから「日本は敵」というイメージが残っているんです。
製造業も当時米国の国内で完結して作っていたのが多かったのですが、今はどうかというと、いろんな国で作った部品を集めてやっているわけです。何度も米国の国境を往復することが分かっていないと。米国の企業からしたら「これだけ通過したらいくらになるの?」というギャップが今の市場に現れているのだと。

第一生命経済研究所 永濱利廣氏:
そもそも日本から米国への輸出のうち、自動車関連だけで3分の1以上を占め、さらに国内産業で自動車が最も裾野の広い産業なので、影響は相当大きいと思います。
日本のトヨタ自動車が春闘でいくらつけるかも多くの産業に影響するので、そのことからも雇用や賃金への影響は大きいと思います。

――元々日本からの自動車関税が2.5%でしたが米国からのは?
0です、関税がかかっていないです。ですからそもそもトランプ氏の考え方はおかしくて、なぜ米国の自動車が世界で売れないかというと、自動車の性能自体が悪いからなのに、トランプ大統領はそうではなく、色々な環境が不公平だからと言っていて、そもそも根本から間違っているので、こういった理不尽な政策を打ち出してしまう。

――一番不利益を被るのは米国の国民?
おっしゃるとおりだと思います。みんな物の値段が上がってしまって、だから自動車も結局売れなくなってしまうから、米国の自動車メーカーの株も下がっていると。
この政策をそのままやったら、米国経済は相当悪くなるんですよ。それにトランプ氏は耐えられるのかなと。逆に言うと、交渉の余地をかなり残しながらの高めの球を投げている気がします。
(「サン!シャイン」4月3日放送より)