女性の社会進出が進み、かつてに比べ結婚の時期や仕事でのキャリアなどを考慮する女性が増えている。こうした理由から将来の妊娠に備えて自分の卵子を凍結する「卵子凍結」のニーズが高まっているという。

大分県内の医療機関でもこうした治療が行われていて、実際にその選択をした30代の女性に話を聞いた。

大分県の資料
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「これからいつどうなるのか分からないので保険として卵子を保存しておきたいというのがあった」こう話すのは、今回取材に応じてくれた大分市に住む30代の会社員の女性Aさん。

2025年1月に大分市内の病院で卵子を10個凍結した。かかった費用は約55万円。経済的にも精神的にも簡単ではないこの決断。背景には女性の多くが持つ悩みがあった。

取材に応じてくれた30代女性Aさん(右)
取材に応じてくれた30代女性Aさん(右)

日本産科婦人科学会によると、女性は年齢とともに妊娠しづらくなる。卵子のもととなる細胞は生まれた時から減り続け、思春期などを経て年齢を重ねるたびに妊娠する力が弱くなっていく。

そのため、少しでも若いうちに卵子を凍結しておこうというわけである。

女性の年代別の卵子の数
女性の年代別の卵子の数

「卵子凍結」の選択には社会的な背景が

具体的には、まず女性の体から卵子を取り出し、必要な処置を施したあと、それを液体窒素のなかで冷凍保存をする。

その後、妊娠を検討する時がきたら取り出して、受精させてから再び女性の子宮に戻す。しかし、これで必ず妊娠するとは限らない。
それでも女性が卵子凍結を選択するのには社会的な背景がある。

女性の社会進出が進みかつてに比べ結婚の時期や仕事でのキャリアなどを考慮する女性が増えている。“社会的適応”と呼ばれるこうした理由から卵子凍結のニーズが高まっているという。

イメージ
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産婦人科医「使用する時に体が高齢化していると高齢出産に伴うリスクが余計に出てくる」

大分市のセント・ルカ産婦人科でも、1年ほど前から社会的適応による卵子凍結の受け付けを始め、これまでに2人が行っているという。

しかし、卵子凍結が進む一方で、気を付けなければならないことも…。

「採取した卵は若いんだけど、使用する時に体が高齢化しているので、高齢出産に伴うリスクが余計に出てくる」と宇津宮隆史院長は話す。

加えて、保険は適用されず凍結した卵子の保管には1個あたり年間数万円かかる場合がある。

セント・ルカ産婦人科 宇津宮隆史院長
セント・ルカ産婦人科 宇津宮隆史院長

卵子凍結をした30代女性「保険ができた。お守りみたいな形でいつか使える時がきたら」

1月に卵子凍結をしたという先ほどのAさんは、結婚はしていないが周囲に不妊治療をしている友人が多く、30歳を過ぎてから卵子凍結を考えるようになった。

「20代の時は仕事や自分でしたいことがあったので、子どものことまで考えてなくて自分の経験をアップさせていきたいというのがあった。お金もかかるし若いうちからできるかと言われたらできない金額。それでも卵子凍結をしてよかった」とAさんは話す。

さらに「保険ができた。お守りみたいな形でいつか使える時がきたらなという安心感がすごくできた。40歳までには子供が欲しい。それまでに使えたらと思っている」と述べている。

取材に応じてくれた30代女性Aさん
取材に応じてくれた30代女性Aさん

妊娠の機能が低下する病気を理由に卵子凍結をする場合は県が助成を行っている

県は病気を理由に卵子凍結をする場合は助成を行っている。

がんなど、妊娠の機能が低下する病気にかかり、その治療前に卵子や精子を凍結する場合である。

15歳から39歳までの患者に対して国に先駆ける形で県は2020年から最大で費用の約70%を助成。

大分県福祉保健部健康増進室の工藤佳代子さんは「いま2人に1人ががんにかかる時代だと言われているので、まさかがいつ起こるかわからない。若い時から多くの方にこういった制度があることを知ってほしい」と話している。

将来、子どもを産むという望みをなくさない。今、卵子凍結は女性の人生設計の中でひとつの選択肢となりつつある。

卵子凍結の作業イメージ
卵子凍結の作業イメージ
テレビ大分
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