475年前、西洋との交流の玄関口だった長崎県平戸市。平戸にいまも息づく西洋文化を見つけてきた。

平戸と西洋とのつながりを伝える「平戸オランダ商館」

平戸市は長崎市中心部から車で約2時間の場所にあり、平戸港に近い海沿いには国指定の史跡・平戸オランダ商館がひと際目を引く。

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オランダとの貿易の拠点として1639年に建てられた倉庫が2011年に復元された。平戸と西洋とのつながりを伝える館内を、岡山館長に案内してもらった。

岡山芳治館長:1550年に南蛮貿易、いわゆるポルトガル貿易があり、1609年からオランダ、1613年にはイギリスがやってきて貿易をした。

平戸から西洋の様々な文化や物資が日本にもたらされ、平戸が拠点となって外国との玄関口になっていたことがわかる。この建物でもオランダの倉庫技術を見ることができる。

外側で荷物を吊り上げ、2階のドアから荷物を入れることができるロープが備え付けられている。岡山館長によると、今でもオランダにはオランダの建物の象徴として残っているという。

最盛期にはオランダやイギリスから10隻以上もの船が着き、平戸の街には2000人近い外国人が行き交った。

鎖国により失われたもの

しかし、物と人の交流は江戸幕府の鎖国政策によって終わりを告げる。岡山館長が象徴的な「あるもの」を見せてくれた。

岡山芳治館長:こしょろの「ジャガタラ文」。1639年にオランダ人の妻子がインドネシアに国外追放となった。インドネシアから肉親に宛てて送られた手紙を総称して「ジャガタラ文」という。

キリスト教や異国の脅威を恐れた幕府は、巨大なこの西洋の倉庫も建築からわずか2年で取り壊した。

老若男女が楽しめる「シューレン」

この日、商館外には人が集まり、賑やかな声が響いていた。行われていたのはオランダの伝統ゲーム「シューレン大会」だ。

「スカイフ」と呼ばれる30個のコマを1から4の釘が打たれた穴を目がけて滑らせる。入らなかったコマはもう一度投げて1回目が終了。

入る穴やコマの入り方で決まる点数を競う。大会には大人と子供の部にあわせて70人ほどが参加し、1回目と2回目の合計点の上位5人が決勝に進む。KTN記者も体験させてもらった。

KTN記者:もう少しだ!いけるかな。入った!やったー!

コマは思ったよりも軽くてコントロールが難しかったから、か記者の結果は52点。決勝に進むには2回目は90点以上が必要だったが、クリアならず。しかしコツを掴めば1回で80点を超える人もいる。

参加者の中には「入れるのは難しいし、ごちゃごちゃになると入らないからうまくばらけさせて入れるのがコツだと思った」など、自分なりのコツを探す人もいた。この日の大人の部での優勝者は予選の合計点が153点。

シュ-レンは、年齢関係なく知らない人とでも盛り上がるそうで、楽しみながらオランダの文化を体験できそうだ。

幕末のお菓子を現代でも?!

平戸に残る西洋文化は建築や遊びだけではない。岡山館長は「菓子図鑑」なるものを見せてくれた。

岡山芳治館長:ここにあるのが幕末に書かれた菓子の図鑑。ちょうどカステラの部分が書かれている

幕末の時代に平戸藩主が編さんした「万延元年菓子図鑑」。「ケイジャーダ」というポルトガルの修道院でもともと作られていたお菓子で、当時のレシピを勉強し平戸の菓子店で作っていると聞いて、地元商店街を訪ねた。

商店街には歴史的な建物が並ぶ通りに菓子店が点在している。1762年創業の牛蒡餅本舗 熊屋では、別の菓子図鑑「百菓之図」に記された「花かすていら」を販売している。シナモンが練り込まれた生地であんを包んでいる。

 

「花かすていら」を試食させてもらった。

KTN記者:シナモンの香りがしてとてもおいしい。ふわふわ。あんとシナモンってこんなに合うんだ。

通りを進むとケイジャーダを作る菓子店を見つけた。2025年で開業20年の菓子工房えしろでは10年以上前からケイジャーダを製造している。

菓子工房えしろ 江代智美さん:タルト生地を作ってチーズのフィリング(タルトの中身)を流して焼いている

「ケイジャーダ」は万延元年菓子図鑑に掲載されている「けさちいな」が元になっている。(提供:平戸オランダ商館)作り始めた当初は甘さ控えめだったが、日本人向けにタルト生地を厚くしたり、チーズの味を引きしめるのにレモンを加えるなどのアレンジをして、いまの形となったという。図鑑には分量など詳しいレシピが載っていないため、完成までは試行錯誤の連続だった。そのケイジャーダのお味は?

KTN記者:チーズの味がすごく濃厚。タルトがさっぱりとした甘さなのでそれと相まって、とてもおいしい。

江代さんは「平戸は城下町で、ポルトガルとの交流もある。そういうのをお菓子を通して伝えいきたい」と話す。

平戸に残る海外との玄関口としての歴史。街を歩けば400年以上前の日本と西洋の文化を今も感じることができる。

(テレビ長崎)

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