南海トラフ巨大地震について、防災対策をした場合の被害の軽減効果の試算が示されました。
地震発生後10分で全員が避難を始めれば津波の死者が約7割減り、1人1人の行動が被害の大幅な軽減に繋がることが明らかとなりました。
政府の専門家会合は、建物の耐震化や津波避難タワーの整備などの防災対策だけでは国が2014年に掲げた「今後10年間で死者数を概ね8割減らす」との目標にはほど遠く、行政主体による対策だけでは限界があるとしています。
一方で報告書は「個人でも取り組める対策によって、被害が大幅に軽減することが見込まれる」としていて、それぞれが防災対策を行うことの重要性を改めて強調しています。
地震による津波について、早期避難の意識が低い場合は、津波による死者は約21万5000人と想定されていますが、地震発生後10分で全員が避難を始めた場合は約7万3000人と、7割ほど減らせるとしています。
また、火災の防災対策による減災効果も示されました。
南海トラフ地震の防災推進地域内で、揺れを感知してブレーカーを自動で切り火災を防ぐ「感震ブレーカー」の設置率は現在8.5%程度に留まっています。
この「感震ブレーカー」の設置率が100%になると、想定される火災による焼失棟数は、約76万7000棟から35万8000棟に減り、被害を半分近くに減らせる試算です。
地震の揺れによる家具の転倒や落下については、対策の実施率が現在の35.9%から100%になった場合、家具の転倒などによる死者を約5300人から1800人まで7割程度減らせるとしています。
地震による「揺れ」「津波」「火災」、いずれについても、個人が取り組める対策によって被害が大幅に減らせることが見込まれています。
日頃からの備えに加えて、大きな揺れを感じたら一刻も早く避難することが命を守ることに繋がるということが、改めて明らかになりました。
報告書では「『自らの命は自らが守る』という意識の下、住宅の耐震化や家庭での備蓄、迅速な避難行動に可能な限り取り組んでいただきたい」としています。