生まれつき皮膚や髪などの色素が少ない遺伝子疾患「アルビノ」。国指定の難病を抱えた小学生の男の子と家族が、その見た目の違いも「個性」として捉え、元気に暮らす姿がSNSで注目を集めている。
アルビノの小学1年生“りっくん”
北九州市若松区の小学校。空き箱を使った図工の授業に取り組む1年生たちの中に、白い髪の毛とひときわ白い肌の男の子がいる。

小村律月くん(7)。肌や髪の毛の色のもとになるメラニン色素が生まれつき少ないアルビノという難病を抱えている。

アルビノは、「眼皮膚白皮症」と呼ばれる先天性の遺伝子の病気で、約2万人に1人の割合で生まれると言われている。紫外線から体を守るメラニン色素が少なく、酷い場合は、日光で火傷を負ってしまうほどだ。

更に、色素の不足は、モノの見え方にも影響を及ぼしている。「目にも色素がないから青いんですよ。凄く眩しい。弱視で、視力は0.1」と母親の憂さんは話す。「以前、律月が『友達がどこにいるか分からない。だから昼休みとかも外に出ない』と話していた」とのこと。アルビノは、光を受ける網膜の形成が不十分なため、眼鏡などでの矯正がほとんどできない弱視の症状も多く現れる。国の難病にも指定されていて、根本的な治療法は今のところない。

日焼け対策と視力の低下に注意
「日焼け止め塗って!りっくん」。外出前に息子に日焼け止めを塗らせる母親の憂さん。紫外線に弱い律月君にとって、外出前の日焼け止めは年中欠かせない。

そして、つばが広めの帽子も必須アイテムだ。眼鏡も紫外線に反応してサングラスの役目を果たすものを使っている。それでも屋外では、一層、見え辛いようだ。「息子が小さい時には、結構、違う人に『ママ』とか言って、間違えてついて行ってたんですよ」と当時を振り返る。

この日も、律月君が「どこ行った?ママ…」とそばにいた母親を見失う場面があった。律月君は、体格や服の色で人を判別しているようだと感じ、憂さんは、律月君が見つけやすいように髪の色を明るく染めだしたと話す。

律月君は、2017年12月、子供7人の大家族である小村家の3男として産声をあげた。病気のことは、生まれるまで分からず、母親の憂さんも助産師から「あれ、なんかハーフみたいな子が出てきたよ」と伝えられ、本当にびっくりしたという。

「なぜ、白いのか?」という思いと同時に「この子、生きられるのかな…」と我が子に対面した瞬間を思い出し、涙ぐむ。

当時は、アルビノについての情報も少なく、紫外線に対して、とにかく過敏になっていたと話す憂さん。「電気からも紫外線が出ているという情報がどこかのサイトに書いていたので、電気も消した状態で暮らしていた」と正に暗闇にいたような時期だったと話す。
暗闇から救われたSNSでの出会い
そんな苦しい状況を抜け出すきっかけになったのは、SNSで見つけた「九州アルビノ会」との出会いだった。これまで漠然と恐れていた先入観のようなものが、次第に取り除かれていったという。憂さんが、まず驚いたのは、「アルビノの子って半袖でいてもいいの?」という基本的な質問に「全然、大丈夫よ」と答えられたことだった。

日本に5000人ほどいると言われるアルビノ患者。母親の憂さんは、当事者たちと直接交流を重ねるうちに、息子に降りかかった病への考え方が完全に変わったと話す。

「うちの場合は、アルビノは個性だと思っている。この子の強みだと」。母親の前向きな考えは、息子の律月君にも自然と伝わり、今では、周りの友達とは違う自分の髪の色についても、「そのままがいい!」と元気に答える。

「アルビノ理解を」SNSで発信
母親の憂さんは、アルビノの理解を広めたいと長女の真優さんと一緒に、4年前から、律月君の動画や写真の投稿を始めた。

再生回数は、なんと530万回。今ではSNSを通じて、アルビノに関する様々な悩みや相談が全国から寄せられるようになった。「本当にちょっとしたことが、やはり気になる。SNSなどを活用して、不安を取り除いて欲しい。1人じゃないから。子育ては、皆んなでしていくものだから」と憂さんは、同じ悩みを抱える人達に呼びかける。

「自分の個性」と胸を張って
律月君を育てる上で「生まれた時からずっと変わらず可愛がってくれる兄妹の存在に何度も救われた」と母親の憂さんは、感謝を口にする。

「人は、違って当たり前。ここにいる子達も皆んな顔が違うし、仕草や匂いだって違う。だからこそ自分の違うところを認めて欲しいし、胸を張って『これは自分の個性』って言ってほしい」と愛する息子にエールを送り続ける。
(テレビ西日本)