NPBイースタンリーグ参入2年目となるオイシックス新潟アルビレックスBC。参入1年目の昨季は最下位に沈み、複数選手の指名が期待されたドラフト会議も育成指名1人に終わった。なぜ多くの選手がドラフトから漏れたのか、そして参入2年目の戦い方は…今季から監督に就任した元北海道日本ハムファイターズの武田勝監督を直撃した。
NPB 82勝左腕に聞く!プロに入れる選手と入れない選手の違い
大学・社会人を経てドラフト指名され、NPBで通算82勝を上げた武田勝監督。独立リーグなども経験した武田監督が考えるオイシックスの存在意義とは…

Q.昨季からNPBのイースタンリーグに参入し、NPBへの多数輩出が期待されたが、結果として育成指名1人に終わった。その要因は?
個人的な見解だが、140試合の中で140試合見られている。良いところもあれば、悪いところも見られている。どうしても悪いほうを見られている可能性が高い。高校や大学・社会人は大きな大会で良いプレーをしたら、それが注目される。トーナメントやリーグ戦の短いスパンの中での結果なので、本当に安定した力がないとプロには行けないと改めて感じた。
Q.プロに入れる選手と入れない選手の違いは?
若い年齢であれば特化した力があれば良いと思う。例えば、飛ばすとか150キロを投げるとか。ただ、オイシックスというチームは元NPB選手や独立リーグ上がりの選手など色んな選手の集まり。年齢が少し高いことから、3拍子揃った野手や使い勝手の良い投手が求められていると思う。
Q.昨季はアピールできなかった
1年目で、すぐ作ったチーム。準備もないままに人数だけ集めたチームというのは正直あったと思う。ただ、2年目に入って選手をしっかり見定めて、人数も確保しながら、状態の良い選手を使い続けている2年目なので、去年に比べるとプロのスカウトからの注目は違うと思う。
求められるのは「即戦力一発」
Q.NPBに入ったことでのメリットは?
一つはNPBにアピールできることが最大の武器。その中で、自分たちで考えてやる野球。大人の考えた野球が求められていると思うので、自己犠牲のところは自己犠牲。積極的にいくところはいく自立してできるプレーヤーを育てていかなければならない。そういった点が去年と違って選手も2年目ということで把握してくれていると思う
Q.それがNPBにつながっている道
用意スタートで完成された選手でなければならないということ。
Q.ドラフトに入る時点でのハードルの高さが違う
違うと思う。即戦力一発という回答じゃないといけない。
「少ないチャンスをものにする選手」がプロで活躍する選手
Q.プロの中でも埋もれる選手と活躍する選手の違いは?
努力したからといって結果が返ってくる世界ではないので、そのチームに必要なピースになること。少ないチャンスをものにできる選手、最終的に身体の強い選手が生き残っていく世界。やっぱりタイミングとチャンスというのはいつ来るか分からないので、その準備ができる選手だと思う。

Q.勝者と敗者のメンタルの違いは?
僕の場合はピッチャーだったので、マウンドに上がったら8割~9割がメンタルの仕事だと思っている。それまでに体のコンディショニングを整える。準備できる時間があるので。マウンドに立てばフォームがどうとか、きょうはストレートが遅いとか、そういうことではなくて、バッターと対峙することが優先。そして、その結果に捉われず、まして自チームのベンチとも戦わず、やっぱり自分を表現できるかがポイントだと思う。
Q.メンタルを維持するために大事なことは?
表情を外に出さない、動揺しない心もそうだし、打たれても悔しさを出さない。相手が何を考えているか分からない選手が一番怖いと思うので、そういうところを目指したほうがいい。
オイシックスと独立リーグの違い…選手の選択肢に入るには?
Q.オイシックスと独立リーグとの違いは?
正直、僕も2年目だが、独立リーグも経験して一つ思ったのは、新潟と静岡の2チーム、後にプロ野球がどうなるか分からないが、最終的に12球団プラスアルファになったときに一番チャンスのある2チームだと思う。僕らがいつでも参入、1軍も2軍も通してできるときの土台づくりをしなければいけないし、それを今度誰かにつなげていくという仕事でもあるので、そのときのために今はしっかり準備をする段階だと思う。
Q.2軍で優勝しても上がれないもどかしさは?
まだ2年目だし、今後その5年10年先かもしれないし、いつでも呼んでいただけるような企業努力もそうだが、私たちも一人の社会人として認めてもらえるような振る舞いというのも覚えていかなければいけない。
Q.まだ野球をやりたい選手にとっての選択肢としてオイシックスを選んでもらうためには?
僕らも元NPBとして人脈も含めて構築しながら宣伝や情報をうまく共有するという機会を増やしていかないと、ただのチームになってしまう。選手を状況に応じて説明できる機会を設けて、こちらからアピールしていかないといけないんじゃないかなと思う。
全国で勝てない…新潟の野球を強くするヒントは?
Q.新潟県の野球振興について
新潟にプロ野球が誕生することは夢を持っていると思うし、それに尽力したいと思っている。まずは現場でチームを強くすることが仕事だが、最終的には新潟県と共に盛り上がってゴールを目指したい。

Q.新潟の野球を強くするには?
野球人口が減っているのは、球場が少ないとか、子どもたちのサッカーへの興味があるという状態がある。僕らも率先して子どもたちと交流を持って、野球を好きになってもらえる場を提供しなければいけないというのは感じている。
Q.小・中・高校生に伝えたい思い
みんなが大谷翔平選手のようになれるチャンスはあると思う。興味を持ってもらいたいことと、野球はみんなで力を合わせて勝ちに向かうスポーツなので、仲間意識を持って、みんなで一つの勝ちを分かち合う楽しみを感じてほしい。
指導者・会社の上司へ伝えたい「結果論で物事を言わない」
Q.甲子園で7イニング制の導入が議論されているが
選手の時は短く感じると思うが、いま監督をやらせてもらって感じるのは、選手の起用法で、疲労などを考えると少なくてもいいんじゃないかなとは思う。ただ、野球全体が変わってしまうので、指導者としてはありだが、1選手だったらと思うとそれはないのかなという、半分半分の気持ち。やっぱり形は9なので、それまでに役割分担とか、人数制限とかあるので。役割分担というのは決まっていると思うから、7イニングすると控えの人数も多くなって、今度は使い方が分からなくなったりとか、起用法が変わってくると思うので、また違った野球になってしまう。
Q.指導者にとって重要なこと
結果論で物事を言わないこと。一番選手が分かっているし、ミスしたらミスしたで悔しい、次取り返したいという気持ちは分かるので、次に向けた背中を押す言葉とか、サポートというのが必要になってくる時代になっていると思う。本当に決めつけた指導法というよりは、選手と同じ立場に立つ。意見を求めながら、良い方向をお互いに求めていくという指導法のほうが時間はかかると思うが、今の時代には合っているんじゃないかなと思う。僕らの時代は理不尽だったので、「あれやれ、これやれ」と言われて、全然結果が出なかった。

最後の言葉は、指導者だけでなく、会社の上司にも通ずると話していた武田監督。明るい性格で笑顔を見せる中にも、オイシックスや新潟県の野球界の将来について真剣に考える姿が印象的に映った。今季、そして今後のオイシックスの活躍が期待される。
(NST新潟総合テレビ)