死刑執行を当日に知らせるのは憲法に違反するとして、死刑囚が「執行に従う義務がないことの確認」などを求めて国を訴えた裁判の控訴審。
大阪高裁は、「死刑執行に従う義務がないことの確認は、確定した刑事判決との矛盾を生じさせる」として裁判で争う対象とせず、訴えを「却下」した1審の大阪地裁の判断を取り消し、差し戻す判決を言い渡した。
一方で、死刑囚が求めていた損害賠償の支払いについては訴えを退けた。

■死刑執行を当日知らせることは「不服申し立ての権利が侵害され憲法違反だ」死刑囚が「執行に従う義務がないことの確認」など求めた裁判
死刑囚2人は、法務省が死刑執行を当日の1時間から2時間前に初めて知らせる運用は「不服申し立ての権利が侵害され憲法違反だ」などとして、執行に従う義務がないことの確認と国に対して損害賠償を求めている。
弁護団によると、1970年代半ばまでは執行の前日までに告知されていたということだ。
1審の大阪地裁は(横田典子裁判長)「死刑執行の告知を死刑執行の当日に行うという運用を前提とする方法による死刑執行を受忍する義務がないことの確認を求めることは、確定した刑事判決との矛盾抵触を生じさせることになるから、この訴えは許されないというべき」として、裁判で争うことができないものとして却下していた。
また損害賠償については、「死刑執行を甘受すべき義務を負う」などとして、訴えを退けていた。
この判決を不服として死刑囚らが控訴していた。
■大阪高裁『死刑執行に従う義務がないことの確認』を「訴訟で争うことは許される」と判断
そして3月17日、大阪高裁(黒野功久裁判長)は、「死刑執行に従う義務ないことの確認」を求めた部分について、大阪地方裁判所に審理を差し戻す判決を言い渡した。
判決では、「仮に(当日告知という)運用が違憲・違法であるならば、これを改め、執行の当日ではなく前日までのしかるべき時期に告知を行うようにすればよいのであって、これにより適法に死刑執行を行うことは十分で可能である」と指摘。
その上で「運用が違憲・違法であることをもって、直ちに死刑判決そのものを違法の判決と解さなければならない理由は見当たらない。この訴えが実質上において、刑事判決の取り消し変更を求めることに帰すものということはできない」として、『死刑執行に従う義務がないことの確認』を「訴訟で争うことは許される」と判断した。
損害賠償を求めた訴えについては、控訴を退けている。

この判決について、法務省は「判決の内容を精査し、適切に対応してまいりたい」とコメントしている。
(関西テレビ 2025年3月17日)