二つのノーベル平和賞候補に推薦
トランプ米大統領は、来年のノーベル平和賞を二つ獲得するのだろうか。
トランプ大統領は、イスラエルとアラブ首長国連邦、バーレン両国との関係正常化を仲介したことが評価され、ノルウエーのクリスチャン・ティブリンーイエッダ国会議員に2021年のノーベル平和賞候補としてノーベル委員会に推薦されたことが9日ホワイトハウスから発表されたが、今度は別の功績でやはり来年のノーベル平和賞に推薦されたことが分かった。

推薦したのは、スエーデンのマグナス・ヤコブッソン国会議員で11日、米国の仲介でコソボとセルビアが和平と経済発展のための協力を合意したことを評価して、三者をノーベル平和賞候補として推薦したとツイッターで明らかにした。

29年ぶり敵対関係に終止符
ユーゴスラビア連邦の解体から始まった内戦でコソボはセルビアからの分離独立を目指した。両国の間では1990年代後半から武力衝突が続き、セルビア群によるコソボのイスラム教徒の虐殺も多発して北大西洋条約機構(NATO)軍が介入して停戦が実現したが、セルビアはその後独立宣言をしたコソボ共和国を承認せず冷え切った関係が続いていた。
こうした中、トランプ大統領はリチャード・グレネル前駐独大使を特別代表に任命して両国の関係改善を図ってきたが、今回ホワイトハウスにセルビアのアレクサンダル・ブチッチ大統領とコソボのアブドゥラー・ホティ首相を招いてトランプ大統領立ち会いの下合意文書の署名式が行われた。

合意は両国の経済協力関係の促進を図るものだが、合意に伴ってセルビアは他国にコソボを承認しないよう働きかけることをやめることなどが合意されたので、29年ぶりに両国の対立に終止符を打つことになった。
この合意について、当日ホワイトハウスで記者会見をしたグレネル大使は、この問題に対する記者団の関心の低さと知識の無さに気色ばむ場面もあった。
「キミらは若すぎて、この問題を理解できないかもしれないが、これは本当に大きな取り決めなのだ。私はワシントン、特にこの部屋(記者会見室)の人間の関心の無さには驚くばかりだ」

大使の鼓舞激励にもかかわらず記者団は興味を抱かなかったようで、この署名式は米国のマスコミではほとんど扱われなかった。
しかし欧州では「画期的合意」との評価が支配的で、ヤコブッソン議員の推薦もそうした評価を反映したものと考えられる。
もう一つのノーベル平和賞クラスの外交交渉
これでトランプ大統領は、二つの外交的業績でノーベル平和賞に推薦されたわけで、ノーベル委員会はこれをどう評価するのか気になるところだが、実はもう一つノーベル平和賞クラスの外交交渉が進行中だ。
それは、カタールで12日から始まったアフガニスタン政府と反政府勢力タリバンとの和平交渉で、開会式には米国のポンペオ国務長官も出席して仲介者としての存在感を示威した。

この交渉がまとまると2001年に米軍の侵攻以来続く泥沼の抗争に終止符を打つことができるわけで、間違いなくノーベル平和賞クラスだ。
2021年のノーベル平和賞の推薦は来年1月締め切られ10月には受賞者が発表される予定だが、トランプ大統領が三つの平和賞の推薦を受けたらノーベル賞委員会はどう判断するのだろうか。
【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】
【表紙デザイン:さいとうひさし】