2005年に全国で14番目の政令指定都市となった静岡市。しかし、人口減少に歯止めがかからない。5年前には70万人を割り込むなど20ある政令市の中で最下位に沈む。このまま何も対策を施さないと2050年には約49万人にまで減少するという危機的状況にある。
県内初の政令市“県都”で止まらない人口減

静岡市は東京と名古屋のほぼ中間に位置し、豊かな自然と温暖な気候に恵まれた今川氏や徳川家康の時代から発展を遂げてきた都市だ。
県の政治・経済・文化の中心的役割を担い、2005年には県内初の政令指定都市となった。
しかし、いま大きな課題に直面している。
それが深刻な人口の減少だ。
2023年に就任した難波喬司 市長は、2025年2月定例会の施政方針演説で「静岡市の人口減少は他の政令市と比べ最も厳しい状況下にある」と前置きした上で「様々な原因があると思うが、根底には厳しい状況にある現実を直視せず、その原因分析を行なわず、具体的対策をとってこなかったことによるものと考えざるを得ない」と過去の市政運営を暗に批判した。

静岡市の人口は1990年をピークに減少し続け、5年前には70万人を割り政令指定都市の中で最下位。
このまま何も対策を施さないでいると2050年には約49万人にまで減少すると推定されている。
デジタル関連企業を誘致し若者の転出を防ぐ

こうした中、静岡市が人口減少対策の1つとして目を付けたのがアニメやゲーム、コンピュータグラフィックスなどのデジタル・エンタメ産業だ。
関連する企業を市に誘致し、学生やUターン希望者の就職の場を増やすことを主な狙いとしていて、静岡市産業基盤強化本部の恒川文栄 次長補佐は「デジタル関係の企業やゲーム・アニメの企業が若者に人気があり『世界的にも成長産業になり得る』という話を聞いていたので、就職で転出してしまっている若者たちを留める施策として可能性があると思った」と話す。

実は、静岡市内にはデジタル関連のスキルを勉強できる大学や専門学校が8校あり、1学年に約800人が在籍している。
ただ、約4割は卒業後に静岡市を離れて主に首都圏で就職しているのが現実で、理由は市内でデジタル関連の仕事に就きたくても関連する企業が市内の全事業所の1%ほどと少ないからだ。
デジタルスキルを持つ若者の就職事情

専門学校に通う学生は「アニメなどの企業がたくさんあるのが東京や大阪と聞いているので、就職するとしたら東京になるかな…」と話し、別の学生は「地元に企業があれば就職したいが(数が)少ない」と口にする。
また、「誰でもいいわけではなく、一定以上のスキルを持った人が欲しいというのが現場の声。1人でも多く即戦力になる人材を求めている。特に人が集まる首都圏での(人材の)奪い合いがすごく大きい」と説明してくれたのは静岡デザイン専門学校の大川直樹 先生だ。

静岡市は、こうしたデジタル関連のスキルを身につけた学生たちに卒業後も市に残ってもらうため、就職の受け皿を拡大しようと制度を新設。
ゲームやアニメ、CGといったデジタル関連企業が市外から初めて静岡市にオフィスを構える場合、賃料や市内在住の人材の雇用に対して補助金を支給するというものだ。
さらに、2024年10月にはデジタル関連企業7社と連携協定を締結し、企業の進出や人材の育成面で連携することで企業側が進出しやすい環境づくりを進めている。
進出した企業は今後に手応え

都内に本社を置くアニメ制作会社のシャフトはテレビや劇場向けなどのアニメ作品を数多く手がけているが、2022年6月に静岡市の中心部にオフィスを構えた。
進出当初は5人だった静岡オフィスの社員が今では17人に増え、その多くが市内に住んでいる。

アニメ制作は長い時間をかけて技術を身に着ける環境が重要なため、シャフトの久保田光俊 社長は「学生に関しては毎年興味を持って入ってくる人、志望する人がどんどん増えてきて手応えを感じている。県外からも静岡市で働きたいという人たちが毎年何名か出てきているので、働く環境として魅力があると考えている実感はある」と話す。

静岡市は今後5年間でシャフトのようなデジタル関連企業10社の誘致を目指しているが、スキルを持った若者たちの就職の場の確保と人材を地方に求め進出を希望する企業、この両者がWin-Winの関係になるためのメリットをいかに打ち出せるのかがカギとなりそうだ。
(テレビ静岡)