神戸市・三ノ宮駅近く、商業ビルで発生したエレベーター事故。

「エレベーターの地下1階に人が倒れている」

この記事の画像(12枚)

通報があったのは、2月27日の午前4時頃。

カラオケ店の従業員が、利用者が乗る「かご」がない状態でエレベーターの扉が開いているのを発見。

その後、作業員が確認をしたところ、「ピット」と呼ばれる地下1階部分に、男性があお向けで倒れているのを見つけたといいます。

地下1階で発見…一体何が?

男性は芦屋市に住む医師の田中翔さん(31)。搬送先の病院で死亡が確認されました。

捜査関係者によると、田中さんは知人とカラオケ店の4階の部屋を利用していて、1人で部屋を出た後、行方が分からなくなっていたということです。

警察は、田中さんが4階から地下1階まで誤って転落した可能性があるとみて、業務上過失致死の疑いも視野に調べています。

事故が起きたエレベーターは1977年に設置。
2024年6月の年1回の法定点検と2024年12月に行われた3カ月に一回の定期点検では、異常はなかったということです。

ビルは地下1階から地上8階建てで、エレベーターは2階から8階を移動。1階と地下1階からは、一般の人が出入りすることはできません。

点検の際、かごはビルの2階部分に停止していたといいますが、田中さんが見つかったのは地下1階でした。

一体、何が起きたのでしょうか?また、今回のような事故は、私たちが普段使うエレベーターでも起きる可能性はあるのでしょうか?

日本エレベータ保守協会理事 田中陽一氏
日本エレベータ保守協会理事 田中陽一氏

エレベーターの仕組みや保守点検に詳しい、日本エレベータ保守協会理事の田中陽一氏に解説していただきました。

エレベーター 扉やかごの仕組みは?

倉田大誠アナウンサー:
「かご」が停止していたのは2階で、男性が倒れていたのは地下1階ということですが…どんなことが考えられますか?

日本エレベータ保守協会理事 田中陽一氏:
エレベーターが4階に到着したときに何らかの不具合が発生して、エレベーターのかごだけが上昇するということで、乗り場の扉が開いた状態で空洞になったのではないかというふうに考えられます。
突然扉が開いた状態でかごないので落下するというような危険な状況が起こったのではないかと思われます。

倉田大誠アナウンサー:
そもそも、エレベーターの扉の開閉はどのように行われるものなのでしょうか?

日本エレベータ保守協会理事 田中陽一氏:
エレベーターの扉自体は、各階の乗り場の扉とかごの扉という形に分けられます。各階の扉自体は、実は動力がないので、かごが到着してかごの扉が開くと同時に、乗り場の扉が連動して開いていくということです。
ですので、今回4階で乗り場の扉が開いていたということは、我々にとっても理解しにくいような状態になっております。

今回のような事故を防ぐため、「戸開走行保護装置」というものがあります。
エレベーターのドアが開いたままかごが動いてしまった場合、そのことを検知してロープを挟み込むことによって、かごを緊急停止させる装置です。

この装置のきっかけは、2006年に起きた、突然上昇したエレベーターのかごの床と天井に挟まれ高校生が死亡した事故。
2009年9月28日から設置が義務づけられていますが、これ以前のエレベーターには設置義務はありません。
今回のエレベーターにはついていたのかどうか取材したところ、「捜査中のため回答を控える」ということでした。

倉田大誠アナウンサー:
「戸開走行保護装置」の設置率(2023年度時点)は全国で37%となっています。
専門家の方から見てもなかなか進んでいない状況なのでしょうか。

日本エレベータ保守協会理事 田中陽一氏:
やはり現場の方では費用もかかりますし、エレベーターを停止して工事をしていくこともありますので、なかなか「戸開走行保護装置」が広まるということは難しい状況にはあります。

利用者が身を守るためには?

日本エレベータ保守協会理事 田中陽一氏:
全国の6割近いエレベーターに「戸開走行保護装置」が設置されていない現状を考えると、エレベーターが到着した際に必ず、かごがあって扉がしっかり開いたということを確認していただくということがものすごく大事だと思います。
「戸開走行保護装置」が設置されているものには、エレベーターのかごの中に「戸開き走行防止」のマークが絶対に貼られているので、そちらも確認してください。

ジャーナリスト 風間晋氏:
個人的に思うのは、1万回に1回あるかないかみたいなことに日常的に備えるというのは、非常に厳しいんですよ。いつもエレベーターに乗るたびにマークを確認したり、かごがあるかないか確認したりする作業は、事実上不可能。
僕が思うのは、必ず誰かが降りてくるっていう前提でいるんです。そうすると、エレベーターが止まって扉が開いた、で、一呼吸待つ。それが日常化していれば意外と、かごがないということの発見に結びついても、おかしくないんじゃないかなと思います。

ジャーナリスト 風間晋氏
ジャーナリスト 風間晋氏

日本エレベータ保守協会理事 田中陽一氏:
そうですね、エレベーターが到着して、扉が完全に開ききるというような、一呼吸置いて確認をして乗るということが大事だと思います。
開き途中、閉じる途中に駆け込んでエレベーターに乗るということは、今回のようなことではなくても、ケガや事故につながるという恐れがありますし、扉が勝手に開くという構造ではありませんので、到着してかごがないということはあり得ることではないのですが、扉が開いていたという状況を見たということであったり、何らかの不具合がある際には所有者や管理者にご連絡いただいて、不具合の状態を正常に戻すということが、第一の問題ではないかなと思います。(「めざまし8」3月3日放送より)