福岡県などで結婚式場を運営する「アルカディア」が、破産申請の準備に入り、全ての挙式や披露宴が実施できなくなった。近く挙式を予定していた夫妻は、悲痛な思いだ。
結婚式場“破産準備”の衝撃
「せっかく、式の準備をしてきたけど、できないショックというか、ビックリしすぎて、あまり現実味がないという感じです」とTVカメラの前で率直な心境を話す山田さん夫妻(※仮名)。2025年のゴールデンウイークに結婚式を予定していたが、一方的に式場の運営会社からキャンセルされたという。

問題の舞台になったのは、福岡や佐賀で5つの結婚式場などを運営していたアルカディア。

この会社を巡っては2月、元社長の大串淳容疑者らが、新型コロナ対策の国の雇用調整助成金を不正に受け取った疑いで逮捕され、福岡労働局は、合わせて10億円余りの返還と違約金、約2億円の支払いを命じている。

北九州市に住む山田さん夫妻は、小倉北区にあるアルカディアの式場で、5月3日に結婚式を挙げる予定だった。費用は約450万円。式場を予約した時期は、1年ほど前。「チャペルが凄くおしゃれだったので、実際に会場を見て『ここがいいな』って思った」と妻は、アルカディアに決めた時の気持ちを思い返す。

夫妻は、結婚式の前金として1月末までに約50万円を支払っていた。しかし、その後すぐ、大串容疑者らが逮捕されたのだ。
被害に遭った夫妻が語る思い
逮捕のニュースを聞いた際、直感的に「大丈夫かな?」と思ったという夫妻。しかし、アルカディアのプランナーから「『挙式とかは通常通り、今後も行わせて頂くので安心して下さい』と言われたという。その後もアルカディアのウェディングプランナーとの式に向けた準備は進み、2月11日には、式に呼ぶ約130人に招待状も発送していた。
ところが、2週間後の25日夜、夫妻の結婚式の状況が一変することになった。アルカディアがホームページを通して、破産申請の準備に入ったことや営業停止となったことを発表したのだ。

驚く2人の元に送られてきたのは、プランナーからのLINEのメッセージ。その内容に山田さん夫妻は、更に追い打ちをかけられることになる。
プランナーから届いた驚きのメッセージ
「私たち従業員は、きのう付けで解雇と言い渡されており、メッセージをお送りすることも本来であれば難しい状況にあります。本日より今後、会社に立ち入ることも許されておりません。私たち従業員もきのう突然言い渡された兼ね合いで、皆様への個々の対応ができかねる状況にあります。本当に心苦しい思いですが、今後のお問い合わせは、代表者より順にお電話を差し上げます。そちらにお問い合わせいただけますと幸いです」(プランナーから送られてきたメッセージ全文)

メッセージを受け取った妻は、「プランナーさんたちも大変だろうな」という感情の方が強かったという。アルカディア側からの連絡は、このLINEのメッセージのみで、代表者との連絡は、まだとれていない。

東京商工リサーチによると、アルカディアは、新型コロナなどの影響で厳しい経営状況が続いていて、2024年8月末時点の負債総額は、約40億円にのぼるという。

「なんとか、もうちょっと早い段階でというか…『急に破産して、結婚式できません』じゃなくて、もうちょっと、なんか対応が…」と憤りを隠せない山田さん夫妻。既に支払った前金の50万円については「返ってこないだろうなとは思っています」と半ば諦めている状況だ。

1年の準備をかけた結婚式を一方的にキャンセルされた山田さん夫妻。新しい式場の目途は全くついていないが、「50万円は払ってしまったけど、気持ち良く結婚式を挙げられた方が嬉しいので、そこは切り替えて、もう『楽しもう』という感じに変わっています。『もっと良い結婚式できるだろう』みたいな感じになっています。準備をやり直しできるし、準備も楽しめる派だったので『このワクワクが続けばいいな』みたいな」と気持ちは前向きだ。

“新郎新婦”への救済・支援策も
アルカディアを巡る問題では、北九州市が27日、結婚式ができなくなってしまったカップルへの支援策を発表した。市内の施設や観光地を活用し、無料で結婚式やフォトウェディングができるという内容で、こうした問題で行政が、救済策を打ち出すのは異例だ。
また、福岡市のホテルニューオータニ博多は、アルカディアの事業停止によって挙式ができなくなった2025年8月までの婚礼予定者を対象に、既に契約していた司会や衣装、花などの持ち込み料を免除する他、新しく作り直す案内状の費用を負担する救済策を公開している。
人生の門出を祝う大切な結婚式。更なる支援の広がりが期待される。
(テレビ西日本)