2月18日、エジプト観光・考古省が約3500年前のファラオ(王)、トトメス2世の墓が「王家の谷」の周辺で発見されたと発表しました。

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古代エジプト王の墓としては、ツタンカーメンの墓が見つかった1922年から103年ぶりの大発見です。発掘場所は、年間数百万人の観光客が世界中から集まるという人気観光地、「王家の谷」に近い地点。

ツタンカーメンの先祖にあたる王、トトメス2世の墓とみられており、古代文字が記されたものや、青い塗料が残された天井など、歴史を紐解く貴重な品々が見つかりました。

なぜ今?100年以上見つからなかった理由

世紀の大発見となった、“新たな王の墓”。なぜツタンカーメンの墓が発見されてから100年以上見つかっていなかったのか?それは墓の場所が関係していました。

今回新たな王の墓が見つかった「王家の谷」は、古代エジプトの新王国時代に、約500年間使用されていました。

この間に即位した王は数十人しかいなかったため、1922年のツタンカーメンの墓が見つかった時点で「すでにほとんどが見つかっており、新たな墓はない」として、調査権を返還する人が出るほどでした。そのため「王家の谷」周辺は、全盛期と比べると、あまり盛んに発掘調査が行われていなかったのです。

駒澤大学文学部教授でエジプト考古学者でもある大城道則氏は、今回の発見を「レアケース」といいます。

エジプト考古学者 大城道則氏:
エジプトでは多くの発見がありますが、王の墓が見つかるのは本当にレアケース。僕らはびっくりして。元々発見されていた墓ではあるのですが、「王の墓」だと断定したのはこれが初めてなので。

――王家の谷にはなぜ王の墓が集中しているのですか?
ちょうど500年間くらいここが王墓として使われるのですが、隠すための谷がある。盗掘から避けるためだと思います、場所としては。
ツタンカーメンの墓が見つかる前段階で「もうない」と、何年もやってきたけれど、すべて盗掘・発掘されているので諦めたんです。諦めて調査権をハワード・カーターに譲ったわけです。そしてハワードが探していたら見つかったと。ないと言われたのに見つかったと。

エジプト・王家の谷
エジプト・王家の谷

――今回の発見で他の場所でも見つかる可能性も?
100年前に見つかったのがツタンカーメン、もうないかなと思っていたところを、考古学者があるかもしれないと探し出したんですね。(それ以降)それでもないとまた諦めた頃に、見つかったということは、他にもあるかもしれないと。

エジプト考古学者 大城道則氏:
(トトメス2世の)ミイラ本体は、今から200年前に他の場所で見つかっていて、それは古代の段階で盗掘がされていたので。
(エジプトでは)王のミイラは守らなければいけないという感覚があります。ミイラというのは魂が宿る存在で、それが破壊されると来世で復活できないと。おそらく古代の段階ですごく信心深い人が「王のミイラだけは、なんとかしなくては」と思い、王のミイラだけ集めて隠したんです。
ただ色々な説があって、このあたり何十年か何百年に1回水害があるんです。水害の跡がどうもあったらしく、それを避けるために先に引っ越した可能性もある。なので、もしかしたらまだ墓があるかもと。

決め手となった「即位名」「青い天井」

トトメス2世のミイラは別の場所にあったにも関わらず、なぜ今回「王の墓」と特定に至ったのでしょうか。

今回見つかった王の墓の入り口は、2022年にすでに見つかっており、発掘が行われていました。
当初は王妃の墓と考えられていましたが、埋葬室内のがれきの山から見つかった出土品に「トトメス2世」の即位名の「アアケベルエンラー」が掘られていたのです。

また、埋葬室の天井の一部がまだ青いまま残っており、現地調査を統括するピアーズ・リザランド博士は、海外メディアに対し「天井の一部はまだ無傷で、青く塗られた天井に、黄色い星が描かれていた。青く塗られた天井に黄色い星が描かれているのは王の墓だけだ」と説明しています。

エジプト考古学者 大城道則氏:
王の墓の特徴ですね、天井に夜空が描かれているんです。ダークブルーの。そこに金や黄色の星が瞬いているように作られているのがあって、これが王の墓の特徴のひとつ。
もうひとつが、青く残されていたのが宗教モニュメントのひとつ、来世にいったらどうなるか、どうすればいいかが書かれている、その一部。そこから判断して、トトメス2世の墓で間違いないと断定されたと。

トトメス2世は、ツタンカーメンの先祖であること以外は詳しいことが分かっておらず、今回の発見でトトメス2世の治世を知る重要な手がかりになるかもしれないと期待されています。
逆に、トトメス2世の妻・ハトシェプストは、初の女性ファラオとして、エジプトを代表するファラオの1人といわれています。

今回見つかった王墓からは、副葬品などは見つかっていませんが、大城氏によると今回の墓は洪水に遭っていた跡があることから、別の場所に移されていた可能性があるといいます。

調査チームはトトメス2世の2つ目の墓の場所も大まかな見当をつけており、そこにはまだ金の装飾品など副葬品が無傷で残っている可能性があるとしています。
副葬品には様々な文字が書かれており、見つかれば作られた時代やトトメス2世について知ることができます。
特に金はさびないため、考古学的に資料として非常に価値が高く、発見に期待が高まっています。

エジプト考古学者 大城道則氏:
きちんと見つかれば。ただ逆にいえば(金は)溶かされるので、なくなる可能性も高い。だから未盗掘の墓が見つかるとすごく価値がある、調査的・資料的に価値があると。

――最近、副葬品が見つかったのは?
80年前です。小さいものは出てきますが、黄金のマスクとかは出てこない。
(「めざまし8」2月27日放送より)