イトーヨーカドーに、国内初の「流動床」を活用した滑り台が登場した。
買い物ついでに遊べる施設として親子連れをターゲットにし、売り場の改装により売り上げ1.6倍を目指す。
イトーヨーカドーは、地域のコミュニティーとしての役割を強化し、家族が楽しい時間を過ごせる場へと進化しようとしていると専門家は指摘する。
親子が楽しめる場所に“ふわふわ砂の滑り台”が新設
いつもの買い物の場所で、これまでにない滑り台体験ができる。

26日、東京・江東区のイトーヨーカドーアリオ北砂店の子供関連売り場の一画「TOYLO PARK(トイロパーク)」に滑り台が登場した。

フジテレビ経済部・栁原弥玖記者:
通常の砂場ではなく、ふわふわとした感覚で、勢いよく滑っても安心感があります。初めての感覚です。

一見普通の滑り台に見えるが、砂の粒子を空気の力で持ち上げることで、不思議な感覚が楽しめる「流動床」を活用した国内初となる滑り台だ。

利用客(子ども):
楽しかったです。あったかいし、深くてボコボコしていた。

利用客(母親):
少し遠くに行かないと室内遊具がなかったので、雨の日とか近いので、ありがたいです。朝買い物をして、昼ご飯をフードコートで食べて、ここで子どもたちと夫が遊んでいる間、私は1人でウロウロしたい。

こちらの店舗では、子供関連売り場を広げることで、若いファミリー層の需要拡大を狙う。

改装前と比べ、売り上げ1.6倍を目指していて、来店動機を「買い物ではなく、遊びに行く」に変えることで、集客率アップにつなげたいという。

イトーヨーカ堂 スクールホビー部・山幡耕司さん:
まずはこのトイロパークに来てもらって、お子様が喜んでもらうというのが一番です。その帰りがけでもかまいませんので、夕飯の材料をイトーヨーカドーの食品売り場で購入していただければいいかなと考えています。
総合スーパー苦境…食品強化で反転攻勢へ
「Live News α」では、消費経済アナリストの渡辺広明さんに話を聞いた。
堤礼実キャスター:
ーー子どもが喜ぶ体験施設、どうご覧になりますか?

消費経済アナリスト・渡辺広明さん:
この「滑り台」は、大人の私でもやってみたいですね。この“大人もやってみたい”は、とても大事です。
自分もやってみたいほど面白そうなら、子どももきっと喜ぶはず。これは親子連れの来店を促すきっかけになり、ついで買いを誘うことが狙えます。
堤キャスター:
ーー今、総合スーパーの経営はなかなか難しい局面を迎えているようですね。
消費経済アナリスト・渡辺広明さん:
そうですね。洋服はユニクロ、家具や雑貨はニトリといった製造小売りの大手チェーンが「安くて、良いもの」を提供するようになり、総合スーパーは苦境を迎えてしまっています。
これに対して、イトーヨーカ堂はようやく採算が取れない33店舗の閉鎖を完了させました。今後は食品部門を充実させることで、反転攻勢をかけるようにしているのです。
ここでターゲットになるのが子育てファミリーで、今回の新しい体験施設もそれを意識したものになるのではないかと思います。
買い物+体験で家族の思い出づくりを支える店舗へ
堤キャスター:
ーー家族で楽しいお買い物の時間を過ごせるのは、いいですよね。

消費経済アナリスト・渡辺広明さん:
そうですね。イトーヨーカドーのような総合スーパーは、上履きや赤白帽子などの学童商品の販売も強いです。
こうした学童商品は毎年買い替えるため、定番商品として安定的な需要が見込まれます。子どもが使うものを家族と一緒に買い物をして、今回のような体験施設で遊んで、フードコートやテナントで食事をする。
このような家族の楽しい体験がやがて思い出になっていくと、お客様との関係性がより強固になって、固定客として長年愛されることにもつながるのではないかと思います。
堤キャスター:
ーーファミリー客の取り込みのためには、地域で愛される店舗になる必要もありそうですね?
消費経済アナリスト・渡辺広明さん:
その通りですね。人口減少で共働き世帯が増加すると、街の中心部にすべてがまかなえるコンパクトシティー化が進みます。
イトーヨーカドーの店舗は街の中心部に多くあるため、家族が楽しい時間を過ごせる地域のコミュニティーとしての役割を果たせるように、店舗を改めようとしているのではないかと思います。
要は、お得な買い物ができる場所から、楽しい体験を提供するというような形に、うまく切り替えが進むと、新たな成長戦略が見えてくるかもしれませんね。
堤キャスター:
遊びから得る学びもありますし、何より楽しい体験はうれしいものです。
日常の買い物の場所にワクワクの体験がプラスされると、より充実した時間に変わるのかもしれませんね。
(「Live News α」2月26日放送分より)