アメリカ発祥「エステートセール」に密着

かつては“形見分け”で大切に引き継がれた遺品。
最近は核家族化が進み、処分という形になる事が多い。

そんな中、注目されているのがアメリカ発祥の「エステートセール」。
プロと共に行う生前・遺品整理のことで、物と一緒に心も整理するという日本版エステートセールを取材した。

処分していいのか…思い入れがあるモノだからこそプロと一緒に

依頼した女性:
これを売ってしまっていいものなのか、どうか…

遺品整理をしているのは、かつてこの部屋で1人暮らしをしていた女性の娘夫婦。亡くなったのは2019年の秋だが、離れて暮らしていたため、なかなか部屋を片付ける事ができずにいた。

日本エステートセール協会 堀川一真代表理事:
味がありますね、この辺(のお茶碗)はお母さんが大事に持っていらっしゃった?

依頼した女性:
そうですね。一通り全部見たんですけど。この数を持って帰っても使いこなせないので、使ってくれる人に

堀川さん:
じゃあ(売りに)出してみますね

プロとともに片付ける遺品。「エステートセール」と呼ばれる新しい形の整理法だ。

依頼した女性:
思い入れがあって処分ができない。捨てられないものがあるので、それは(プロに)お願いしようと

「間違いなくこれ海外向けですね」…遺品整理で光る目利き

アメリカで1970年代に広まった生前・遺品整理のエステートセールは、暮らしていた家を公開し、家財一式を売ってしまうスタイルで、日本エステートセール協会の堀川一真さんが2年前、日本に紹介した。

本場アメリカでは多いと1000人もの客が家にやって来る事もあるそうだが、日本の住宅事情などを考えると、このまま導入するのは困難。

そこで、堀川さんが考えついたのがインターネットでの販売だ。しかも日本ならではのやり方があるようで…

堀川さんが、食器棚から取り出したのは陶器の人形。

堀川さん:
手描きの博多人形。素敵です。間違いなくこれ海外(向け)なんですね

他にも、ひな人形に将棋の駒、碁石と碁盤も見つかった。こうした日本の古いものは、ジャパニーズアンティークとして海外のコレクターに人気が高いとのこと。

実際、こちらの日本人形は、ロシアの女性に35ドル、およそ3750円で売れた。

他にも漆の重箱は40ドル、およそ4300円でオーストラリアへ。

茶道具はアメリカの女性に100ドル、およそ1万700円で売れた。

一方、国内で人気なのは抹茶茶碗などの陶器。

堀川さん:
さすがですね、この辺の焼き物ですよね。犬山焼かな、この地方独特の美濃の織部焼。素晴らしい

古くからの陶磁器の産地が多い東海地方は、そうとは知らずに良い物を持っているお宅も多いんだとか。意外なお宝が眠っているかもしれない。

ちなみに国内外問わず人気のモノも…

堀川さん:
ちょっと昔の作り、昭和の非常にレトロなミッドセンチュリーのにおいがする。これはすごい素敵です。これは国内に出してみようと思います。よろしいですか

ミッドセンチュリーとは、1940年代から60年代にかけアメリカで生まれたデザイン。シンプルで機能的なことから世界中にファンがいるという。これはプロの眼でないと見落としてしまっていたかもしれない。

単なる不用品処分にしない・・・会話をしながら“心の整理”も

そして、ここからが日本版エステートセールのポイント。
お母さんが弾いていたという琴を見つけた堀川さん。

堀川さん:
お琴を弾いてらっしゃるところを見たことは?

依頼した女性:
小さい時1回くらい。でもずっと家にあったのは知ってました。記憶はずっと残ってます。珍しいものなので

思い出話を交えつつ、依頼主との会話を重視しながら進める。

依頼した女性:
捨てるのは、やはり…

堀川さん:
できませんもんね

堀川さん:
日本では何が違うかというと、“物=心”。物ではなく、お客さんの心に向き合うっていう形なんですね。思いを聞き出すことで、物と一緒に心も整理されるようにするのが、普通の不用品買い取りと違うところです

これは手元に置いてください…手放さないよう示唆することも

堀川さん:
これはノリタケ。ノリタケが1990年くらいに現代の技法でオールドノリタケを再現したものなんです。これ飾って下さい、是非。コレクションに

品物によっては手放すのをやめるよう、アドバイスすることもある。価値を知り、手元に置いて大事にしてもらうことが理想だという堀川さん。

堀川さん:
単なる不用品を販売するという作業ではなく、お客さんの心を前向きに、思いをちゃんと伝達できるように

終わりがけには、珍しい一刀彫の観音像も出てきた。

依頼した女性:
旅行行ったときに買ったのは覚えているんですけど

数十年前に家族旅行の記念に買った物で、お母さんがずっと大切にしていたという。

依頼した女性:
母が大事にしてたので、思い入れがあったと思うんです。旅行に行った時に買った品とか、その頃のこと思い出しました

毎年の家族旅行を楽しみにしていたお母さん。親子で一緒にお土産を選ぶのを喜んでいたそうだ。

依頼した女性:
自分の気持ちと向き合う事もできたし、捨てなきゃいけないっていう感覚よりも、またどこかで生かしてもらえるというのもある。(心の)整理ができるいい時間だったなと思います

今回依頼した女性は、家族旅行でお母さんが買った観音像を売らずに持って帰った。

一方、手放す事を決めた物にどれくらいの値をつけて売るのかというと、「博多人形」は海外向けに40ドル、日本円で約4200円。「ミッドセンチュリーのカップソーサー」は約6000円。「琴」は約2万5000円など。

全て売れれば、合計でおよそ26万円になる。
オークションサイトに掲載するなどし、1年を目安に販売。買い手が現れたら販売益の約半分が依頼主に渡るという仕組みだ。

今回の日本エステートセール協会・堀川さんへの取材は2020年2月で、対面での遺品整理だったが、今はコロナの影響でオンラインでの相談サービスも始まっているため、安心してお願いすることができるとのこと。

(東海テレビ)