大人になってから突然、食物アレルギーを発症する人が近年、増加傾向にある。「食べる」だけでなく「触れる」だけでアレルギー反応を起こすという発症のメカニズムや予防法を専門医に聞いた。
◆子供と大人のアレルギーは違う
食物アレルギーというと卵や小麦など子供に多いイメージがあるが、子供の頃は発症していなくても、大人になってから突然食物アレルギーを発症する人が増えている。子どもと大人の食物アレルギーの違いについて福井県済生会病院の長谷川義典医師に聞いた。

特定の食品に対して、免疫が過剰に働き身体に異常をもたらす食物アレルギー。発症すると、一般的には皮膚の発疹や目や口のかゆみなどの症状が出て、重症化するとアナフィラキシーショックを起こし死に至る危険性もある。

長谷川医師は「乳幼児期のアレルギーは小麦や卵、牛乳などが原因のことが多いといわれていて、成長とともに改善することが多い。逆に大人の食べ物アレルギーは、小麦や甲殻類、果物のアレルギーが多いといわれていて、治りにくい」と説明する。

「触れる」ことでも発症
食物アレルギーは、食べて腸に吸収され発症する「経口感作」と、皮膚や粘膜に触れることで発症する「経皮感作」の主に2種類に分けられる。

乳幼児の場合は消化機能が未熟なため、アレルギーの原因となるタンパク質が消化しきれずに起きる「経口感作」が原因で反応を起こすことが多いが、一般的には成長とともに消化能力が高まることで自然と治癒していく。
花粉と食物アレルギーの関係
一方で、大人はアレルギーの原因となる食べ物に調理などで触れる機会が多く、「経皮感作」が要因で発症し、受診する人が増えているという。 「近年分かっている範囲では、肌荒れや手荒れの場所からアレルギー物質が侵入し、反応するケースが増えていると考えられる」 と長谷川医師。

大人の食物アレルギー増加の背景には、「国民病」とも呼ばれる花粉症が深く関係していると考えられている。花粉症の患者は10年前と比べて20%以上増加。長谷川医師は、これが年々増加している大人の食物アレルギーが増えている原因だと指摘する。

「カバノキ科の花粉症の人には共通抗原が果物にあり、果物のアレルギーになることが知られている。花粉症自体が生まれつきあるものではなく、大人になるにつれて花粉症になることと関係していると考えられる」
手荒れ予防が発症を防ぐ
他にも、ヒノキやイネなどの花粉でも、それぞれ共通の食べ物でアレルギーを引き起こすことが分かっている。予防法については「肌荒れを予防すること。保湿をして手荒れを予防し、料理をする際は手袋をして防御することが大切」という。

また、原因となる食べ物を食べた直後に運動をすると「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」によって、アナフィラキシー症状を発症する危険性が高くなるため、食後すぐに運動しないよう気を付ける必要がある。特に小麦は注意が必要だ。

まずは血液検査を行い、アレルギー体質かどうか調べるのが一般的だが、それでも特定できない場合は「食べ物を針で刺して、その針で皮膚を刺すプリックプリックテストか、最終的には食物負荷試験といって食べ物を少量食べてアレルギー反応が出るか検査する」という。この検査は、アレルギー専門の医師がいる入院のできる病院で受けることができる。
一度かかったら治りにくい大人の食物アレルギー。予防法を実践し、発症を防ぐようにしよう。