静岡県掛川市の病院で、患者に対してわいせつな行為をしたほか、その様子を動画で撮影した罪などに問われている小児科医の裁判が結審し、検察側は懲役14年を求刑した。一方で弁護側は情状酌量を求めている。
密室で繰り返された悪質行為
起訴されているのは中東遠総合医療センター(掛川市)の小児科診療部長の男(44)で、2017年から2023年にかけて当時10代だった少女4人に診療を装って服を脱がせ胸や陰部を触ったほか、4人を含む10人に対して裸やわいせつ行為の様子を動画で撮影するなどした強制わいせつ、準強制わいせつ、児童買春・児童ポルノ法違反の罪に問われている。

男は行為の“正当性”を主張
これまでの裁判で、撮影した動画は男が編集した上でハートマークや性的な内容のテロップを入れていたことがわかっているが、男は撮影した目的について「診察の確認・記録のため」と話し、「文字や静止画だと必要な情報が入らなかったり、後から比較できなくなったりする場合があるため」と主張。

また、服を脱がせたことについては「着衣の上からだと細かい部分を判定できない」と述べ、胸を揉んだ理由に関しては「胸郭の進行を確認するため」などと正当性を訴えていた。
検察「真摯な反省は認められない」
こうした中、2月17日に静岡地裁浜松支部で開かれた裁判で、検察側は少女の陰部を触った際に気持ちいいか尋ねるなど「診察とは考え難い言動をとっており、専ら性的意図をもって行われたことは明らか」と断罪。
また、動画も被害者の斜め前から撮影されたものが大半で正面や側面など様々な角度から撮影しておらず、衣服を着脱する場面も含めて映されていたことから「医療的な適切性には多大な疑問がある」と指摘した。

その上で、「長期間にわたり、多数の被害者に対し多数回わいせつ行為を繰り返していて常習性は顕著。被害者及び保護者からの信頼につけ込み、自身の性欲のはけ口としたものであることは明らかで極めて卑劣な犯行。歪んだ性的欲求を満たすために保護者や看護師の目が届かないところでわいせつ行為を繰り返すなど動機は身勝手極まりないもので酌量すべき点は一切ない」と述べ、「被害者は適切な診察を受けられなかったどころか信頼していて被告からこれ以上ない形で裏切られ、精神的に深い傷を負わされた。不合理な弁解に拘泥し、言い逃れてばかりで、自身の犯した罪の大きさを自覚し、真摯に向き合っているとは全く認められない」として懲役14年を求刑。
弁護側「医療目的だった」
これに対し、弁護側は「性的な感情を完全に否定できるわけではないが医療目的だった」との主張を崩さず、一部の被害者に対して30万円から最大300万円の弁償金を支払っていることを理由に情状酌量を求め結審した。
判決は5月9日に言い渡される予定となっている。
(テレビ静岡)