公安一課長の嘘

「事件への関与を認めているオウム信者の警察官がいるのか?」

ハガキを受け取ったマスコミ数社から警視庁への取材攻勢が巻き起こった。
この時、取材対応した公安一課長は記者対応としてはやってはいけない禁じ手に出る。

マスコミからの問い合わせに「そういう事実は全くない」と嘘をついてしまうのだ

当局と記者との間のコミュニケーションは“キツネと狸の化かしあい”とも言われるが、事実かどうかを質問して「そんな事実は存在しない」と嘘をつかれれば、信頼関係は灰燼に帰すだけでない。大きな禍根が残る。

俗に嘘つきは泥棒の始まりだとされているが、泥棒を捕まえる仕事の警察が事実関係でマスコミに嘘をつけばマスコミにとってはネタ泥棒に等しい。

警察当局者から嘘やごまかしが一度でも出れば、その当局者はおろか警察組織そのものの信頼に大きな傷がつくのである。

公安一課長が記者に嘘をつく事態に 資料映像
公安一課長が記者に嘘をつく事態に 資料映像

公安一課長は「組織を守る」という選択肢しかない崖っぷちに追い込まれたとも言える。

記者からすれば公安一課長から全否定されてしまえば、目の前で実際に見た現象でもない限り書けない。

当時、記者対応に追われていた公安一課長は栢木らに「共同通信だけしつこいんだよ」と漏らしていた。

共同はじめハガキを受け取った数社がまごついている間に10日が経過する。

すると再び、10月24日に新たなハガキが警察やマスコミ数社に届いたのである。

そのハガキに記載されていた全文は以下の通りだ。

警察史上例のない不祥事

「国松警察庁長官狙撃事件の犯人がオーム信者の警視庁警察官であることや本人が犯行を自供しているが、警視庁と警察庁の最高幹部の命令で捜査が凍結されていることを、先般、共同通信社など数社の皆様にはお伝えしました。

各社の幹部の方々が当庁に何か弱みを掴まれているのか、当庁と警察庁最高幹部からの圧力で不満分子の戯言とされているようです。

マスコミに届いた“暴露”のハガキ
マスコミに届いた“暴露”のハガキ

警察の最高責任者を狙撃し瀕死の重傷を負わせた被疑者が現職の警察官であったとなれば、警察全体に対する轟々たる非難や長官、次長、警務局長、人事課長や警備上の責任者とは別に警視総監、副総監、警務部長、人事一課長、人事二課長、本富士署長の引責辞任や管理責任が問われないではすまされないと思います。

警察史上、例のない不祥事と批判され、当庁の威信は地に落ちると思います。

警察庁と警視庁の最高幹部が、自己の将来と警察の威信を死守するため真相を隠蔽されようとしても真実は真実です。

警察官の責務は犯罪を捜査し真実を糾明することです。警察、中でも警視庁の威信が地に落ちることは明らかですし、被疑者が法的にも社会的にも組織的にも許されないことは当然ですが、組織を守るためとして、この事件を迷宮入りさせ法の裁きを受けさせなくするため被疑者の口を封じようとする有資格者の動きは恐ろしくこれを見逃すことは著しく正義に反すると思います。

しかし、家族を抱えた一警察官の身では、卑怯ですが匿名によるこの方法しかありません。
心あるマスコミと警察庁、警視庁、検察庁の幹部の皆さまの勇気と正義が最後の拠り所です。
匿名をお許し下さい。」

明るみになったX巡査長の存在

Xが長官を撃ったかどうかの真偽はともかく、このハガキはもはや、ただの怪文書ではなくXの存在を伝える真実の告発文書だった。これによりマグマが一気に噴出した。