海外からの旅行客を愛媛県内に呼び込み、長期滞在してもらおうと、地域の魅力を体験する観光コンテンツ作りが進んでいる。和菓子作りに郷土料理、さらには斬新な遊覧体験まで、日本の文化や風景を楽しむ企画が目白押しだ。
伝統の技と創造性が融合 和菓子作り体験
厳しい寒波が襲来する2025年2月7日、愛媛・大洲市の「まちの駅あさもや」に、愛媛県内各地の観光事業者や自治体の担当者ら約20人が集まった。この日行われたのは、日本航空が観光庁から地域観光新発見事業の採択を受け企画する、外国人旅行客向けのモニターツアーだ。

オーストラリアから旅行会社関係の2人を招き、「本物を知る旅」を展開する。日本航空西日本支社松山支店の澤田康子支店長は「ここでしかできない新しいものをひとつでも作っていこうと思いまして。欧米豪からの長期滞在のお客様に魅力的なものを作っていこうと」と意欲を語る。

観光庁の調査によると、訪日外国人の平均滞在日数はアメリカが12.1泊、フランスが16.8泊、オーストラリアが13.8泊と、欧米豪が韓国や台湾などアジア各国の3倍程度。特にオーストラリアは1人当たりの旅行支出も高く、魅力的な日本文化の体験コンテンツで観光客を愛媛県内にどれだけ呼び込めるかが、インバウンド獲得の大きなカギとなる。

一行がまず向かったのは、「おおず赤煉瓦館」だ。船による流通の拠点として栄えた大洲で、明治時代に銀行の本店として建築された和洋折衷の建物だ。ここでは、大洲の銘菓「志ぐれ」を製造する老舗和菓子店の職人から基本的な作り方を教わり、参加者たちは生地を丸めたりこねたりしてオリジナルの和菓子作りに挑戦した。

オーストラリアで旅行会社を経営するケリー・ディクソンさんは「This is my『Hijikawa』。きょう雪が降っているので塩をのせて表現した」と手作りの和菓子を見せてくれた。同じくオーストラリアのJTB勤務、ダニエル・ハンガンさんも「自分の手で形を作っていくのが楽しい」と、和菓子作りを楽しんだ。出来上がった練り菓子は抹茶と共に味わい、日本伝統の文化を楽しんだ。
愛媛南予の伝統が息づく至極の味わい
続いて訪れた創業約400年の老舗料亭「いづみや」では、愛媛南予の魅力が凝縮された伝統料理の数々が供された。その日の朝に獲れた新鮮な鯛を使った「鯛めし」と、大洲産のサトイモを使って甘めの味付けに仕上げた「いもたき」のセットだ。

現役のJAL客室乗務員が「いもたきは日本三大芋煮の一つで、里芋、こんにゃく、鶏肉、油あげ、干しシイタケなど具材を醤油ベースで煮込んだ大洲の伝統料理です」と機内アナウンスさながらに解説。モニターのケリー・ディクソンさんは初めての愛媛の味に舌鼓を打ち、「Very delicious! Very Good!すごく郷土感を感じるよ」と絶賛した。
革新的な「こたつ舟」で愛媛の冬を楽しむ
この日の大洲は最低気温氷点下2.7度を記録。午後のツアーでは、寒い冬にぴったりの「温かい体験」が用意された。それが新たなコンテンツ「こたつ舟遊覧」だ。大洲の夏の風物詩である鵜飼いで使用する船を冬季に活用する試みだ。

キタ・マネジメント事業課の横山真美子営業統括マネージャーは「元々は鵜飼いの時に使っている船なんですけど、6月から9月までしか乗ることができないので、どうにかそれ以外の時期にも活用できないか」と、オフシーズン活性化への思いを語る。コタツに入りながら凛と澄み切った肱川沿いの風景と大洲城を望む景観は、外国人観光客の心をつかむ新たな魅力となりそうだ。

今回のツアーは2泊3日の日程で、大洲での体験に加え、松山での芸者さんのお座敷体験やお遍路体験なども組み込まれている。ツアーを終えたケリー・ディクソンさんは「大洲の魅力のひとつは、リラックスしてゆっくりとくつろいで歴史や文化とのつながりを実感できるところだと思います」と評価。ダニエル・ハンガンさんは「まだ帰っていないのに、大洲にまた来たい、泊まりたいと思っています」と次回の来訪を期待した。

日本航空西日本支社松山支店の澤田康子支店長は「ただこちらに来ていただくことが目的ではなく、それを通じて地域が元気になっていくことを目指してますので、とにかく地域の魅力を磨き上げていくことを一つ一つ丁寧にやっていきたい」と展望を語る。日本航空は、このツアーの2025年度中の商品化を目指している。
(テレビ愛媛)