軽やかな動きで畳の上で躍動し、持ち前のスピードと技で強豪選手たちと渡り合う愛媛県松山市の中学生がいる。小柄な体格を感じさせない力強い柔道で、全国の舞台でも頭角を現した菅野翔選手だ。柔道一家の誇りを胸に、兄の偉大な背中を追いかけながら、自らの道を切り開いていく若き柔道家の姿がそこにある。

鍛錬の日々、軽やかな綱のぼり

松山市の南第二中学校3年、菅野翔選手を訪ねると、天井からぶら下がった綱を腕の力だけで登るトレーニングに励んでいた。その鍛え抜かれた肉体から繰り出される背負投げは、見る者を魅了する。

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菅野選手は「僕、体が小さいんですけど、体が小さくても大きな相手を投げたり、いい試合ができた時に見ている人が興奮したり、そういうのが柔道の魅力と思います」と語る。

柔道との出会いは、ごく自然なものだった。「お父さんがしていて、僕も自然と始めるようになった」という言葉には、柔道が生活の一部として根付いていた幼少期が垣間見える。

名門道場が認めた稀有な才能

松山市の棟田武道館は、世界選手権を二度制覇した棟田康幸さんの父・利幸さんが館長を務める。

1万人に1人ともいわれる名誉ある「紅帯・九段」を持ち、これまでに多くの選手を育ててきた棟田館長は、菅野選手に大きな期待を寄せる。

「スピードがある。体はこまいけどスピードがあるから技が効く」と技の特徴を語る棟田館長は、「今までうちにきていた選手の中でも一番の練習熱心な子どもです、努力家」と高く評価する。

稽古場では「翔、先にいけ、攻めよう攻めよう」という熱のこもった指導の声が響き渡る。

兄弟で描く世界への軌跡

菅野選手の父は、学生時代国体選手として活躍した。高校2年の兄・駿選手も中学日本一という輝かしい実績を持つ、まさに柔道一家だ。

「僕が中学に入った時に、兄が全国大会で活躍し始めて、全中1位とか、高校に入ったらインターハイ3位になって。僕も負けないように"菅野翔もいるんだぞ"という風に感じて一生懸命練習に取り組んだのでいい刺激になってくれました」と、兄の存在は、菅野選手にとって大きな刺激となっている。

2つ年上の兄を目標に稽古に励んだ菅野選手は、2024年の夏、全国中学校体育大会男子個人50kg級に出場。初めての全国大会で持ち前のスピードと粘り強さを発揮し、3位入賞という輝かしい成果を残した。

「準決勝は1本で敗れてしまったんですけど自分的に悔いがなくて。それが結果だったので、次に向けて取り組んでいこうという気持ちになりました」と振り返る。日本一に立った兄には一歩及ばなかったものの、心に決めた大きな目標に向かって、すぐに気持ちを切り替えた。

菅野選手は「将来の目標は日の丸を背負って戦える柔道家になりたい。空高く羽ばたくように高いレベルで柔道ができるように、これからもっと頑張っていきたい」と力強く語り、世界を見据える強い意志が感じられる。

春からは兄のいる新田高校に進学する菅野選手。
「高校に入ったらインターハイや春の選手権で優勝して、世界の舞台で戦える選手になりたいと思っています」と意気込む。

兄の背中を追い、2人で世界の舞台へ。新たなステージでの挑戦が、今始まろうとしている。

(テレビ愛媛)

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