東京・墨田区にある住宅地の一角に、1938年から続く革(かわ)の鞣(なめ)し工場がある。
鞣し(以下、なめし)とは、漢字の通り、硬くて伸びにくい動物の皮を、柔らかくしなやかな「革」にする技術。
最盛期は墨田区に100軒あったタンナー(なめし業者)は、わずか5軒に減ってしまった。
その墨田区で、山口産業株式会社はある画期的な製法を元に、「人と自然と環境にやさしい革」を作り続けている。
クロムを使わず自然由来の成分で
動物の硬い皮をなめすには、重金属系薬品の「クロム」を使うのが一般的だが、廃水の汚染や強い臭い、職人の健康面などに問題があった。
3代目の社長である山口さんは、「父である先代の社長が、人と自然と環境に優しいなめしをしたいということで、一切クロムを使わないなめし方法を確立した」と話す。
山口さん自身も金属アレルギーのため、クロムを使ってなめした革を触ると手がかゆくなってしまったという。
人にも環境にもやさしい革を作るために、先代の社長が試行錯誤を重ねた結果、クロムを使わないと難しいとされてきた柔らかく、しなやかで、発色の良い革にする加工技術を自然由来のなめし剤「植物タンニン」だけで実現した。
今では、国内外の一流ブランドから高い評価を受けている。
そして、山口さんはこの技術を廃水の汚染が深刻なモンゴルに無償提供した。
「技術を自分だけのものにするというよりも、その技術が世界中に広まってくれたら、何十年後かに宇宙から見た地球はやっぱり青いんじゃないかな」と山口さんは期待を込めた。
山口産業株式会社
https://www.yamaguchi-sangyou.co.jp/
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