1月22日、長野市のJR長野駅前で男女3人が刃物で襲われ、49歳の男性が死亡、37歳の男性が重傷、46歳の女性が軽傷を負う事件が発生した。26日朝、殺人未遂の疑いで46歳の男が逮捕された。容疑者は学生時代は明るく人気者だったが、近年は引きこもりがちだったという。事件の背景に何があったのか。今回の事件では警察は被害者と容疑者に面識はなかったとみている。犯罪心理学の専門家は「通り魔事件は人生の途中で挫折し、孤独と絶望感から犯行に及ぶ人が多い」と話している。

明るい性格から引きこもりへ

逮捕されたのは、長野市西尾張部の無職・矢口雄資容疑者(46)。

矢口容疑者は10代の頃、スポーツに打ち込み明るい性格だったという。

小学校時代の卒業文集には「勉強をとにかくがんばりたい」と意欲をつづり、将来の夢は「教師」だった。

中学時代の矢口容疑者
中学時代の矢口容疑者
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中学時代はバスケットボール部に所属し、同級生によると「明るい性格で運動神経もよかった」という。

しかし、ここ10年ほどは周囲との交流がほとんどなかったことがわかった。

高校時代の矢口容疑者
高校時代の矢口容疑者

実家の近くの住民は次のように話す。「あまり外に出てみえない人だった。引きこもりがちだったのかな。仕事はあまりうまくいかないで、ちょっと勤めたりしたけど、定職というよりはアルバイトだと(矢口容疑者の父は言っていた)」

孤独な日々を送っていたか

現在は集合住宅の一室で一人暮らしをしていたとみられる矢口容疑者。

部屋からは大量の焼酎のパックや緑茶の空き缶、ゴミのようなものが運び出されていた。

矢口雄資容疑者(46)(長野中央警察署 1月26日)
矢口雄資容疑者(46)(長野中央警察署 1月26日)

近所の住民は矢口容疑者の様子をこう語る。「いつも作業着を着ているから、どこか工場でも勤めているのかなと思って。ねずみ色っぽい作業着を上下着ていました、毎日同じ格好で。自転車で来て、すぐそこにある自動販売機で必ず缶コーヒーを買って、毎日、大体8時前後に。真面目そうに見えましたけど、あいさつは全然ないです」

通り魔事件の背景とは

警察は「被害者と容疑者に面識はなかった」とみている。

犯罪心理学が専門の新潟青陵大学の碓井真史教授は、通り魔事件の特徴について次のように説明する。

新潟青陵大学 碓井真史教授
新潟青陵大学 碓井真史教授

「通り魔・複数人を狙うような人は、実はもともと有能だったり恵まれていた人が多い。途中で挫折し『自分の人生はこんなはずはなかった』と孤独と絶望感に押しつぶされて『最後に大きなことをやってやれ』というのが典型的な通り魔事件」

矢口雄資容疑者(46)(長野中央警察署 1月27日)
矢口雄資容疑者(46)(長野中央警察署 1月27日)

碓井教授は矢口容疑者の場合も同様の特徴があるのではないかと指摘する。

「矢口容疑者の場合も途中までうまくいっていたからこそ、その後の挫折がとてもつらかったのかもしれません。(一般的に通り魔事件の犯人は)世の中への不満があるんですね。思いを共有し、社会を改革していくぞという力や意欲がなく、誰にも理解されないから自分だけで何かをしてしまおうと思ってしまう」

現在も黙秘を続ける矢口容疑者。心の内に何が起こったのか、全容解明が待たれる。

(長野放送)

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