JR長野駅前で男女3人が刺され男性1人が死亡した事件。発生から5日目の26日、矢口雄資(やぐち・ゆうすけ)容疑者(46)が逮捕された。Mr.サンデーの取材で、矢口容疑者の周辺ではトラブルが起きていたことがわかった。

“爆音”鳴り響き…矢口雄資容疑者を逮捕

近隣住民A:
ガス爆発でもしたんかっていう。朝の7時すぎに大きな音が。爆発音みたいな。チェーンソーで警察の人がドアを開けて突入した音だっていうふうに聞きました。

近隣住民B:
すごい「ボーン」っていう音しましたよ。まさかこんなとこで潜んでいるなんて、夢にも思っていないから。

矢口容疑者の自宅前には“電動ノコギリ”が…
矢口容疑者の自宅前には“電動ノコギリ”が…
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26日朝、爆音と共に繰り広げられた逮捕劇。容疑者宅の前には、警察が突入の際に使ったのか、電動ノコギリのようなものが残されていた。

事態が急転したのは26日午前7時すぎ。JR長野駅前で男女3人が刺され、丸山浩由さん(49)が死亡した事件で、警察が行方を追っていた男が確保された。

長野駅から東にわずか3kmの場所に立つ集合住宅。その4階にある、一人暮らしの自宅で逮捕されたのは、無職の矢口雄資容疑者(46)だった。

逮捕された矢口容疑者。右側は警察公開の画像。
逮捕された矢口容疑者。右側は警察公開の画像。

カメラの前に現れた矢口容疑者は、白髪交じりの短髪で眼鏡をかけておらず、長いヒゲをたくわえてはいなかった。その姿は、警察が公開していた頭にタオルのようなものを巻き、メガネをかけ、ヒゲをたくわえていた姿とは違っていた。

逮捕の一報に、子どもを持つ親たちは…。

近隣住民C:
(最近)おまわりさんとかパトカーが近所走り回ってるから(子どもが)出歩かない方がいいとか、1人で家にいさせないようにするとか、そういう感じには多分みなさんなってたんじゃないかなと。

近隣住民と“トラブル”も

長野市の小・中学校で一時約2800人が登校を控えるなど、街を不安に陥れたこの事件。矢口容疑者とはどんな人物なのか?

矢口容疑者は小学校の卒業文集に、「勉強をとくにがんばりたい」と意欲をつづり、好きな言葉は「ベリーグッド」、欲しいものは「やさしい心」、そして、将来の夢を「教師」とつづっていた。中学校では、勉強だけでなくバスケットボールにも打ち込んだのか、スポーツマンらしき姿が残されていた。

一人暮らしをしていた自宅周辺では…。

近隣住民D:
自動販売機がそこにあるんです。毎日、自転車で必ず買って。いつも作業着着てるから、どこか工場にでも勤めているのかなと思って。

近所の人は、作業着姿の矢口容疑者が毎朝自転車に乗って、自動販売機でコーヒーを買う姿を何度も見かけたことがあるという。しかし、警察によれば、矢口容疑者は現在、無職。Mr.サンデーが近隣を取材すると、矢口容疑者らしき男のこんな目撃情報も出てきた。

近隣住民E:
去年ぐらいから(アパートに)入った人。朝、うるさかったですよ。車をバターン、バターンって…。頭にタオルを巻いてるのが(公開された画像と)似てたかなと思いますけど。あまりにもうるさかったから、自分の部屋の窓から「うるさい」って言ったことがあるんですけど。

さらに、2025年に入ってあるトラブルがあったという。

近隣住民F:
1月2日の20時、22時ぐらいに、急に変なこと言ってくる人がいたんですよね。言ってる人に対して名誉毀を毀損する結構なことを言っていいて。その相手方が沈黙していて、多分それで警察呼んで。

1月2日、夜の路上で、誰かに大声で暴言を吐いていたという矢口容疑者とみられる人物。駆け付けた警察官らによって、パトカーに乗せられて行ったという。

こうしたトラブルと、今回の事件に関係はあったのだろうか。

事件の約1時間前、うろつく姿が複数の防犯カメラに

警察によると、事件の1時間ほど前、駅構内などをうろつく矢口容疑者の姿が複数の防犯カメラに記録されていたという。襲撃の機会をうかがっていたのだろうか。

そして、事件発生の20分ほど前の午後7時40分ごろ、駅前で捉えられていたのが、頭に白いタオルのようなものを巻いた矢口容疑者の姿だった。白色系の手袋を着け、ジャンパーのポケットは膨らんでいるようにも見える。その姿は、駅周辺のライブカメラ映像にも映り込んでいた。

事件発生10分前には、駅の壁際に頭部が白い人影があった。なぜか、足をブラブラと振っていた。2分後、数メートル移動。その先にあるのはバス乗り場だ。そして、バスを待つ人たちの列ができた、その直後、突然バス停から列が消え、駅の出入り口付近には集まる人たちが。中には、しゃがみ込んだ人影も見える。

その時、現場に居合わせた人は…。

通報者:
バス待ちの集団から犯人が出てくるところを見て、刃物持った状態。奇声上げるとかわめくとか、振り回して誰も構わず危害を加える形ではなかった。ただの通行人に見えるというか、刃物持ったと認識してる人はいなかった。

騒ぐこともなく、次々と3人を殺傷したという矢口容疑者。最初に襲われたとみられているのが、死亡した丸山浩由さん(49)だ。胸と背中の2カ所を刺され、胸の傷は心臓まで達していたという。重軽傷を負った37歳の男性と46歳の女性は、バスを待つ列に並んでいたところ、背後から無言で刺されたとみられている。

犯行から約2分後の午後8時8分ごろのドライブレコーダー映像をみると、バス乗り場には慌ただしく走る警察の姿があった。

目撃者:
さすまたと盾みたいなのを持っていた。
ホテルの方に走って…。(警察は)「逃げられた」みたいな感じ。

――(矢口容疑者が)走って逃げた様子は?
第一通報者:
小走りという表現。ふらつきながらというか、何かを探しながらさまよう感じですかね。

矢口容疑者の逃走経路は…

警察によると、矢口容疑者は事件後、刃物を持ったまま駅前の広場をうろつき、西側へ逃走した。駅前の交番の防犯カメラには、矢口容疑者が逃げていく様子が映っていたという。

矢口容疑者は交番があるのを知ってか知らずか、その前を通り過ぎると、その先のホテルも通過。その後、線路沿いへ向かったという。夜、実際にその道を歩くと、夜は、かなり周りは暗く、電灯もあまりない。

足取りが途絶えたのは、駅の西側。しかし、矢口容疑者が逮捕された自宅は、正反対の東側にあった。矢口容疑者の足取りが確認されたスーパーから、どう進んだのか?

東の自宅方面に、なるべく人目につかず向かうとすると、十字路を左へ、その先はさらに細い道になっていて、より暗く、人通りはない。その先に、線路をくぐる細い地下道があり、ここを抜けると、線路の反対側の南に出て、あたりは住宅街が広がっていた。

また別に、スーパーの手前には、線路をまたいで南側に行ける陸橋もある。矢口容疑者は、こうしたルートで、南へ出た後、引き返すように東の自宅へ帰ったのか。

一方、事件翌日、線路の南側にある住宅街には、すでに警察犬を連れた捜査員の姿があった。

事件翌日には線路の南側の住宅街に捜査員が…
事件翌日には線路の南側の住宅街に捜査員が…

容疑者の自宅周辺を取材すると…。

――警察がいつ頃から張り込みしていたか分かりますか?

近隣住民G:
(事件)翌日かな。そうそう、翌日の昼から警察官来られて「車置いてもいいですか」とおっしゃって。

実は、事件翌日には、警察の捜査の手はすぐ近くまで迫っていた。

26日、長野県警は会見で、市民から寄せられた多くの情報と、「防犯カメラのリレー捜査」が、容疑者特定への決め手になったと明らかにした。こうして事件から4日、逮捕に至った矢口容疑者。被害者3人とは面識がないとみて調べを進めている警察は、他の2人を刺した疑いでも容疑が固まり次第、逮捕する方針だという。

「マル、捕まったぞ」矢口容疑者は取り調べに黙秘

26日も、亡くなった丸山浩由さんを悼む献花台には、多くの人たちが訪れた。そこには、丸山さんがサッカーチームでプレーしていた頃の写真が供えられていた。

献花台には多くの花が手向けられていた
献花台には多くの花が手向けられていた

サッカーチームの仲間:
献花した時にマル(丸山さん)に「捕まったぞ」と。やっぱ悔しいですね。(容疑者には)本当にお前ふざけるなよ、何してくれてんだよ、という感じですね。

丸山さんの同僚:
本当にやさしくて後輩からも慕われていて。容疑者が捕まったということで、浩由(丸山さん)の冥福を祈りたい。

なぜ突然、罪なき命が奪われなければならなかったのか。矢口容疑者は、警察の調べに対し黙秘を続けているという。
(「Mr.サンデー」1月26日放送より)

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