20日に最高気温34℃を観測した大阪市、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンで目撃したのは、屋外で働くスタッフたち専用の熱中症対策チームだ。Mr.サンデーは「熱中症ゼロ」を掲げるUSJの、暑さとの闘いに密着。さらに今、急増する熱中症、その後遺症の実態に迫った。
USJが目指すは「熱中症ゼロ」
20日、大阪市では最高気温34度を観測した。

ディレクター:
現在、午後1時のユニバーサル・スタジオ・ジャパンです。手元の温度計は35度以上を示しています。

USJのパーク内にも、容赦ない日差しが照りつけていた。
日傘やハンディーファン、日陰に座り込んでアイスを頬張る人もいる。
来園者:
暑すぎてこの風に当たりに来てました。さっき(USJに)着いたばっかりで。(Q.もう冷風に当たってるんですね?)暑くて暑すぎて…。

ユニバーサル・スタジオ・ジャパンでは、7月から使用する予定だった冷風装置「巨大ミストファン」を1カ月前倒しで設置した。
6月半ばから危険な暑さが続く2025年の夏。
ユニバーサル・スタジオ・ジャパン テクニカルサービス本部 EHS室 尾坂高明さん:
熱中症の特に本当に重篤化される方というのをゼロにするって対策。今年も本気で取り組んでいる。
目指すは「熱中症ゼロ」。
その本気の対策を取材すると…。

ユニバーサル・スタジオ・ジャパン MMP事務局 福島鈴菜さん:
クルーとゲストの皆さんが交流を楽しみながら、熱中症対策を促す。
(来月から)塩分タブレットというものを、ゲストの皆さんにお渡しします。
パークコンシェルジュ:
スプレーアートは今年の夏からは積極的にということで、水を使うアートなので、描きながら目でも楽しく、気化熱でも涼しくっていうふうになっています。
さらに、大量の水を使って、打ち水効果とイベントを融合した本格的な熱中症対策「クール・スプラッシュ・タイム」も7月1日から始まるという。
その本気度は、ゲストに対してだけではない。

ディレクター:
あちらのクルーの方、背中の後ろのあたりに空調のようなものがついてます。
工事現場などで見かけるファンが付いた服をテーマパークのユニフォームに!
スタッフ:
このワードローブ(ファン付きユニホーム)自体は今年からで。後ろに扇風機があることで、服の中で空気が循環されて涼みながら勤務することができるようなお洋服になっています。

6月から法改正され、職場での熱中症対策が企業に義務づけられ、対策を怠った場合には罰金などが科されることになった。
ユニバーサル・スタジオ・ジャパン テクニカルサービス本部 EHS室 尾坂高明さん:
エンターテインメントを届けるためにも、クルーがしっかりと安全で健康に、そして笑顔で働くことができる。そういった環境を我々は提供しなければならない。
スタッフ見守る「オアシス隊」
テーマパークが本気で挑む「熱中症ゼロ」。
20日、最も気温が高かった午前11時過ぎ、パーク内で発見したのは、炎天下で働くスタッフに「頑張ってください」と声をかけて回る2人組の姿だった。

背負ったバッグから伸びたホースを手に持ち、「お疲れさまです。オアシス隊です。ドリンクいかがですか?」と声をかける。

この2人組は、その名も「オアシス隊」。
屋外で働くスタッフに、塩分タブレットやドリンクなどを提供して回っていた。
パーク内に10組が常駐。スタッフを見守る取り組みだという。
ユニバーサル・スタジオ・ジャパン オアシスプロジェクト リーダー 島田悠史さん:
冷たいおしぼりと(塩分)タブレットいかがですか?お代わりいきますか?
スタッフ:
いただきます。ははは。
ユニバーサル・スタジオ・ジャパン オアシスプロジェクト リーダー 島田悠史さん:
めちゃ飲んでくださってる。
スタッフはドリンクを2杯一気に飲み干し、塩分タブレットもすぐ口に入れた。
ドリンクをもらったスタッフ:
お客様との対応で、結構飲む時間がなかったので、すごく喉乾いてたんで、すごく助かります。
やっぱり欲しい時に来てくれるんで…。
ユニバーサル・スタジオ・ジャパン オアシスプロジェクト リーダー 島田悠史さん:
顔色を見ながら、汗の量がすごく多いとか、ちょっと気にして見るようにしてます。
大体一日2000杯ぐらいは配りますね。しっかりとクルーをケアして、クルーが元気になった状態で、ゲストにまた超元気になっていただけるように、しっかりしたサポートをしたいと思います。
22日も都内で77人が熱中症で搬送
連日続く梅雨の猛暑。
22日も東京都心で33℃を超え、7日連続で真夏日を記録。八王子では36.6℃を観測する猛暑日となった。

医師:
お名前分かりますか?ここどこだか分かりますか?
埼玉・熊谷市の埼玉慈恵病院でベッドに横たわるのは70代の男性。
21日、路上で倒れているところを通行人に発見され、救急搬送されたという。

意識がもうろうとしている様子の男性は、熱中症と診断された。
2025年5月以降、発表された全国の熱中症警戒アラートの回数は、すでに49回。
22日も東京都内で、午後9時までに77人(暫定)が熱中症で搬送された。
5月から6月15日までに熱中症で救急搬送された人数は、全国で4799人に上る。
2年前に発症した熱中症…後遺症いまも
そんな中、Mr.サンデーが取材したのは、2年前に発症した熱中症の後遺症で、いまも苦しんでいるという漫画家の、ふじた里奈さんだ。

実は彼女、熱中症をキッカケに自身の身に起きた変化を漫画化してSNSで公開し、注意を呼びかけている。
ふじた里奈さんの漫画「はとにっきシリーズ」より:
曇りだけど蒸し暑い…湿度がえぐい…
始まりは2023年の6月。
講師を務めるコミックエッセイ講座のため徹夜明けで、気温30℃の池袋に向かっていた。
漫画家・ふじた里奈さん:
ちょっとほかほかした感じがあるのは、単純に眠れていないからかな?って。
屋外にいたのは行き帰りのわずかな時間だけで、大半は冷房の効いた屋内で過ごし、適度に水分補給もしていたというが…。
ふじた里奈さんの漫画「はとにっきシリーズ」より:
ほかほか通り越して煮えそうなんだが…!?
漫画家・ふじた里奈さん:
途中で耐えられないぐらいほっかほかになってしまったので、とりあえずお店に入って体を冷やそうと思って、冷たいものを飲んだりしてました。靴下も脱いで、とりあえず手を水で冷やしてみたり。
帰り道に、寝不足では説明がつかない異様な体の熱さに襲われたという。

ふじた里奈さんの漫画「はとにっきシリーズ」より:
熱中症…?
でも頭痛や目眩はない
食欲もある
漫画家・ふじた里奈さん:
帰りに暑い暑いって思ってスポーツドリンクをがぶ飲みしながら帰ったんですけど、取った水分の割に汗が出てないみたいな。
帰宅後は水でシャワーを浴び、保冷剤や氷枕で体を冷やして眠りについたが…。
ふじた里奈さんの漫画「はとにっきシリーズ」より:
関節が痛い!
これ絶対熱ある… そこそこある
漫画家・ふじた里奈さん:
夜中に、これは熱があるぞみたいな感じで目が覚めて…。とにかくひたすら暑くて、その時38度ぐらい。
それから微熱が続き、2日後、ようやく平熱に戻ったという。
ふじた里奈さんの漫画「はとにっきシリーズ」より:
が、ここから予期せぬことに
スーパーまで往復15分…発熱
おでかけ…発熱

暑い日に外出すると、必ずと言っていいほど発熱するようになり、ひどい時は、ベランダで5分ほど洗濯物を干しただけでも発熱した。
ふじた里奈さんの漫画「はとにっきシリーズ」より:
一瞬でも「暑いな」と思うと
ほっかほかになる体になってしまった!
さらには…。

ふじた里奈さんの漫画「はとにっきシリーズ」より:
基本引きこもってるけど
ずっとクーラーの風浴びてると寒い
止めると死ぬ
変温動物に
なっちまっただ
漫画家・ふじた里奈さん:
暑いところにいたら、もう際限なく温まっちゃうし、最初から涼しいところにいると、それはそれで冷えすぎちゃうみたいな。
その熱中症になってから1年は(後遺症を)引きずっているなって…。
だから、体温をうまいこと調節する機能がバカになっちゃったっていう感覚がありましたね。
あまりに続く発熱が不安になり、医師に相談すると…。
漫画家・ふじた里奈さん:
いろいろ血液検査とかして特に引っかからず、(医師が)熱中症きっかけに自律神経がおかしくなっちゃったのかね~、みたいな感じで…。
後遺症を引き起こさないためには?
ふじたさんの体に何が起きていたのか?

熱中症に詳しい三宅康史医師は「これ多分、自律神経症状だと思うんですよね。汗をかいたりとか、血管を広げたりとか、逆に血管を閉めたりとか、そういった部分がやられているような症状」と説明する。
自律神経が正常に機能している場合、暑い時には血管を広げて熱を放出し、寒い時には血管を収縮させて熱を逃がさないようにする。
だが、ふじたさんの場合、熱中症になったことで、この機能に異変が起きた可能性があるという。

では、熱中症になってしまった場合、後遺症を引き起こさないためには、どうすればいいのか?
三宅康史医師:
初期治療というか、応急処置が十分でなかったっていう可能性はある。
しっかり体を冷やすこと。しっかり水分、必要に応じて塩分を補給すること。あと自分が本当にリラックスできる状態で体を休めること。そこが十分ではなかった可能性ってのはある。
やっぱり十分な応急処置をして、症状が良くなってるっていうのを確認してほしいです。そこをしっかりきっちりやるっていうのが、後遺症を残さない一つの方法。
熱中症の後遺症が現れて2度目の夏を迎えるふじたさん。
今でも、まだ完全には治っていないという。

漫画家・ふじた里奈さん:
昨日、一昨日とか、ちょっと出かけたんですけど、手とか足がホカホカする感じは、すでにちょっとあるので、まずいなあと思って。怖いです…。
(「Mr.サンデー」6月22日放送より)