都会ではすっかりおなじみとなった電動キックボード。愛媛県内ではまだ珍しいこの新しい乗り物が、この度、新居浜市に登場した。2023年7月の道路交通法改正で16歳以上なら免許なしで乗れるようになり、新たな移動手段として注目を集めているが、その使い方には意外な盲点も。実際に乗ってみた記者の体験と合わせて、その可能性と課題に迫った。
手軽さが魅力の新たな移動手段
愛媛県内の街中ではまだ見かけることの少ない電動キックボード。実際に乗ってみた青木稜悟記者は「電動キックボード、初心者でも運転しやすく走っていてとても気持ちいいです」とのことだ。地元の女子高校生は「都会に行ったときは見たことあるんですけど、愛媛の新居浜ではあんまり見ないかもしれないですね」と話す。

このサービスを手がけるのは、新居浜市に本社を置くハートネットワーク。通信インフラや地域活性化事業に力を入れる同社が、愛媛県内で先駆けてスタートさせた。

駅前や飲食店など新居浜市内8箇所にあわせて10台が設置され、レンタルした車両はどこで返却してもOK。料金は初乗り330円で、15分おきに220円ずつ加算される仕組みだ。1時間の利用なら990円となる。

ハートネットワークまちづくり事業局の佐野裕一局長は「結構スピードも出るので、思ったよりも早く目的地に着くとか、小回りが効くのでちょっと停めてお買い物したりというのも非常にやりやすいとお声をいただいております」と、手応えを語る。
意外と多い!知られざる交通ルール違反
レンタルは専用アプリから簡単に行える。

ハンドル付近のQRコードを読み取り、スマホに表示される「ライド」のボタンを押すだけで利用開始。支払いもアプリに登録したクレジットカードで完結する。

ただし、この手軽さの裏には注意点もある。警察庁のまとめによると、制度が始まってから1年3カ月で4万件を超える違反が確認されているのだ。最も多いのは「通行区分」の違反で、検挙された違反の半数以上を占める。

特定小型原動機付自転車に分類される電動キックボードは原則、車道の左側端を走行するのがルール。歩道を走れるのは、時速6km以下などの条件を満たす場合のみだ。今回レンタルされている車両では、最高速度が時速6kmとなる低速モードを搭載。低速モード中を知らせる緑のランプが点滅し、自転車が走れる歩道などでの走行が可能となる。
観光振興への期待と安全性の両立に向けて
佐野局長は「新居浜市内に観光施設とかが点在していることや、やっぱり交通の車がないと、今まではどうしても回れなかったと思うんです。市内の歴史文化という部分もその低速モードだと感じていただきながら、市内観光していただけるかな」と期待を寄せる。

現状、サービスの1日あたりの利用者は1人前後とまだ少ない。佐野局長は「最初の乗り方っていうのが難しいみたいで、乗り方どうやって乗るんですかっていうお問い合わせを結構いただいているのが現状」と課題を指摘する。
愛媛県警察の状況把握も進んでいる。愛媛県警察交通指導課の武智祐治警部補は「令和5年7月の道路交通法改正後、愛媛県内での特定小型原動機付自転車の違反検挙はありません」と話す。

愛媛県内で特定小型原付のナンバープレートが交付された枚数は2024年12月までで約250枚と、まだ利用者は少ない状況だ。

しかし今後は利用者の増加も想定され、交通ルールの周知が課題となる。武智警部補は「利用者自身が交通ルール等を十分に理解していない点がありますので、その点を広報啓発活動であったり、交通指導取り締まりで周知させていきたい」と強調する。
この課題に対し、新居浜市のレンタルサービスでは初めての利用者にアプリでテストを実施。佐野局長は「交通ルールの簡単なテストがアプリ上で行えるようになってますので、利用の方法をしっかり見ていただいて、利用してもらえたらと思います」と説明する。

便利な乗り物として、観光振興にも効果が期待される電動キックボード。その普及には、交通ルールを守って安全に乗ることが不可欠だ。
新居浜市の取り組みは、新しいモビリティの可能性と安全性の両立いう、今後の課題解決のモデルケースとなるかもしれない。
(テレビ愛媛)