中日ドラゴンズは、3年連続最下位で、2024年シーズンを終えました。研究機関の調査した「プロ野球球団の総合満足度」では12球団の中で最下位に。またビジターでは18の“借金”となりました。
亡き闘将、星野仙一元監督に「育てられた」と自負する井上一樹新監督は、“星野イズム”を受け継ぐのか、2025年シーズンはどうやって戦っていくのか、ファンサービスはどうするのかなどを聞きました。
■井上一樹新監督 2025年は「殻を破る」
2025年1月6日月曜日、球団の年賀会で力強くあいさつした、ドラゴンズの井上一樹監督。
中日ドラゴンズの井上一樹監督:
あけましておめでとうございます。私事ですけども、昨年の暮れからお正月にかけて、カニというカニ、エビというエビを散々食ってきました。ゲンを担いで、いろんな殻を破って爪に身が入りながら、海老と蟹を堪能してきました。ゲンを担いできましたので「勝て」と念じてください。
井上新監督は監督就任後の秋季キャンプでも、選手たちに「殻を破ることを忘れずに」と呼びかけました。

2025年のドラゴンズのスローガンは「どらポジ」。考案したのは井上監督自身です。

中日ドラゴンズの井上一樹監督:
小さい子供でも、お年を召された方でも、ポッと出るような言葉が良いなと思って。平仮名と片仮名の組み合わせというのも、今どきといっては失礼かもしれませんが、親しみやすいものが良いなと思ってこういう形にしました。
■どうするファンサービス…総合満足度調査はセ・パ合わせて最下位に
ドラゴンズは、2024年シーズン、3年連続最下位に沈みましたが、それでもバンテリンドームには常に大勢のファンが応援に訪れました(69試合で231万3777人)。

しかし、慶應義塾大学 理工学部管理工学科の鈴木秀男教授の研究室が行った12球団の満足度調査も3年連続で最下位(1位は2024年バファローズ、2023年バファローズ、2022年ホークス)でした。
項目で最下位だったのは「席からの試合の見やすさ」「フード商品」「球場の雰囲気」「ビジョンの音響施設」「イニング間のイベント」です。

中日ドラゴンズの井上一樹監督:
僕もね、色々な知り合いの方からよく聞くことも確かに(この項目に)入っているんですよ。球場の雰囲気というのは、例えばチームが強くなったり、選手がいつも以上にハッスルするというか、そういったものでちょっとは変えられると思うんですよね。

また名古屋の街で、ドラゴンズへの要望を女性にインタビューすると「もっと強くなってほしい」や「TikTokなど身近なところにたくさんでてきてほしい」という声があがりました。
中日ドラゴンズの井上一樹監督:
僕はイベント部長ではないので、そういったものもどんどんやっていけばもっと盛り上がるらしいよというか、ご意見をいただいたと思えばやってみる価値がありますし。
そして試合のチケットがすぐに完売する「Tシャツ配布」のイベントを増やせば、ファンも喜ぶのではないかと質問すると、井上監督からあがったアイデアがあります。
中日ドラゴンズの井上一樹監督:
「増やします」と僕がいまここで断言するわけにはいきませんけども、出身で言えば福永は滋賀県出身のはずですけど琵琶湖をもじったとかね、遊び心があっても良いのかなと思いますけども。僕は鹿児島ですけども、そういったものが全面的に出るようなものも企画を考えれば、なんぼでも出てくると思うんですけどね。
バンテリンドームで、来場者に鹿児島名物の「さつま揚げ」をもらえる日を設けてみてはどうかという提案には…。
中日ドラゴンズの井上一樹監督:
3万5千個ね、どうやって持ってくるって話ですけど。そういった形のものがいろいろできれば良いですよね。
■ビジターでは“借金18”…甲子園では1度も勝てず「元ヘッド」ならではの攻略法は
試合本線の話では、ドラゴンズは2024年シーズン、ホームでは35勝32敗で3つの貯金を作りましたが、ビジターでは25勝43敗と18の借金を背負いました。
特に甲子園球場で1分け10敗と、1度も勝つことができず、3年前までヘッドコーチとしてタイガースのユニフォームを着ていた井上監督だからこその攻略法はあるのでしょうか。

中日ドラゴンズの井上一樹監督:
もし原因があるとすれば、例えば甲子園球場の5万人の大観衆の中で、360度ほぼほぼ黄色一色の中でやるっていうのは、選手は「そんなことない」とは言っていたとしても萎縮感があると思うんですよね。その萎縮感を逆に、ビジターであるドラゴンズがタイムリーヒットを打った、ホームランを打ったってなると静まりますよね、ため息出ますよね。そのため息を「そうそう、ため息ちょうだいよ」っていうような形のポジティブに考えていけば、僕はそのように考えるようにしていた。
■絶対的恩師・闘将の「星野イズム」は引き継ぐのか
そして、井上監督の“恩師”で、元ドラゴンズの監督、故・星野仙一さんへの想いや、指導法への考えについても聞きました。今の時代は星野さんのような指導はできないと話しましたが、「それでも残したいものがある」と考えていました。

中日ドラゴンズの井上一樹監督:
僕は皆さんご存知の通り、星野仙一監督に育てられた男なので、そういった「根性や」、「何をさらしとんじゃ」というような形の、「野球はケンカや」みたいな感じのものを植え付けられてきた人間なので、少し僕は残しておいた方が良いと思っているんですよね。今はWBCとか、侍ジャパン、いろんな形で各球団の選手たちが交流する機会が多くなったことによって、選手がまた選手を連れてきたりと輪が広がっていっているんですよね。みんなが仲良くというかNPBを盛り上げていきましょうよと、手を取り合っている感じが見えちゃう。いやそうじゃなくて試合始まった時には、例えば際どいボールがきたときには、ピッチャーに向かって、睨みつけて「何しとんねん、コラッ」というのが本当はほしいんですよ。でもいま、そういう時代ではないっていうことで片付けてしまうと、バチバチ感がどうしても見えてこない。そこは新しい時代だからといって、言葉は気を付けてはいますけど、そこだけはちょっと残しておきたいというのは僕の中であります。

現時点で、星野さんを彷彿とさせるような選手はいないといいます。
中日ドラゴンズの井上一樹監督:
(星野さんの)メラメラ感、ギラギラ感っていうのは僕も真似できませんし、あれだけの方がこれから先出てくるのかって言ったら、多分出てこないと思うんですよね。それくらい偉大な方ですし、僕は大好きでしたけど。ものすごくよく怒られましたし、ちびりあがりましたけど。
■どんなに勝っても負けても…井上監督が大切にしたい「凛とした部分」
井上監督には、監督という立場として「心がけていきたい」ことがあるといいます。
中日ドラゴンズの井上一樹監督:
立場的に、これはお約束を僕がみんなの前で公言したところなんですけど、それできるかなって思うんですけど、どんなに負けていても、どんなに大勝していても、常にポジティブに凛としていたいっていう。なぜなら選手たちは見ているから、自分もそうでしたから。選手みんな見るより、やっぱり監督をチラッと見るんですよ、どんな顔しているのって。必ず意識はするし、されますので。そういったときになんだよって表情もすると思うんですけど、その喜怒哀楽を出すのもそれはそれでいいのかなって。でもまだいけるぞっていう凛とした部分は持っておきたいかなと思っています。

最後に、2025年の抱負を聞きました。
中日ドラゴンズの井上一樹監督:
強いドラゴンズを見たい、そしてワクワクするようなドームに行きたいっていう、選手たちみんなにも言っていますけども「束にならないと勝てないよ」って。一本の矢は折れるけども3本5本だと折れないよという部分を大事にして、そして束になって戦えばこんな結果が出るじゃないかっていうのを見せたいと思っています。
2025年1月9日放送
(東海テレビ)