町工場が始めた「ものづくり相談サービス」

活気ある下町の町工場。

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その職人たちが、新たにチャレンジしたのは、ネットを使ったコンサルティングサービス。
スタートアップや大企業も頼りにする、ものづくりの“駆け込み寺”とは。

東京・墨田区にある浜野製作所。

創業およそ40年。
主に金属加工を行うごく普通の町工場だが、熟練した職人の技術は、世界的にも評価されていて、2年前には、上皇さまも訪れたことがある知る人ぞ知る町工場。

 

その町工場が6年前から始めたのが、スタートアップなどを相手にした「ものづくり相談サービス」。

浜野製作所・浜野慶一社長:
情熱を持っているベンチャーの経営者もいっぱいいる。
特にハードウエアが絡むようなスタートアップは、なかなかものづくりに対する専門性がなかった

 

アイデアはあるけど、ものづくりのノウハウがない企業を応援したい。
そんな思いから始めたが、新型コロナウイルスの感染拡大で、あらためて社長が感じたのが、必要なものは自分たちで作るという“ものづくり自給率”の大切さ。

クライアントとの主な連絡ツールはチャット。
タイムリーにやりとりできるほか、コロナで人が集まりにくい状態でも、すぐに相談にのれるというメリットがある。

浜野製作所 設計開発部・山下大地部長:
例えば、「ある製品が、くっつけるときに、ちょっとえぐれて変形してしまったんですけど、どうしたらいいでしょうか」ということで、「このまますぐにビデオ会議をしましょう」

数多くの製品を送り出す

長年ものづくりをしてきた町工場だからこそできる、きめこまやかなアドバイス。
手探りで始めた相談サービスだが、これまでにアスパラを自動で収穫する農業用ロボットや、風力発電設備、電動車いすなど、数多くの製品をスタートアップとともに、世に送り出してきた。

今では、大手企業も含め、年間200~300の相談があり、その売り上げは全体のおよそ3割を占めるなど、浜野製作所の新たな柱となる事業に成長した。

浜野製作所・浜野慶一社長:
この国の実力って、まだまだあると思う。高い志を持っている子たちも多くいる。
これを僕らがサポートしなかったらいけないんじゃないか。
周りの中小企業・町工場と共に、日本の製造業を支えるということを今後やっていきたい

二つの「タクミ」

内田嶺衣奈キャスター:
ものづくりの相談サービス。
松江さんはどのようにご覧になりましたか。

デロイトトーマツグループCSO 松江英夫氏:
素晴らしいと思います。
その心を私はこの二つの言葉で表したいなと思います。

匠×巧 
二つのタクミということです。

デロイトトーマツグループCSO 松江英夫氏:
まさに、ものづくり。
これはまさに「匠」の技ということで職人技ですね。

長年の蓄積があって、ある種日本の強みでもあるし宝だとも言えると思うんですけれども、
ただ一方で、ややもすると属人化してなかなか人に伝わりにくいという課題があったんですが、
先ほどの取り組みのように、そこを今度は伝え方の「巧」さですね。
ここのところが加わると一気に価値が上がる。
これをまさに示している例だと思うんです。

特にコロナの中でオンラインという手段を使っていろんな形で伝え方が増えていくと、かなり変わるのではないかと思いました。

内田嶺衣奈キャスター:
必要としている特別なノウハウを困ったときにすぐにオンラインで相談できるというのは非常に大きいですよね。

デロイトトーマツグループCSO 松江英夫氏:
実際に伝え方がオンラインになりますと、日本だけではなくて世界に対しても場合によって伝える距離を超えることができます。
また先ほどのようなスタートアップのようなベンチャーと一緒に組むということになりますと、スタートアップは技術の蓄積に時間がないので、そこを逆に賄えるという時間を超えることもできる。
距離と時間を超えるということで、伝えることのまさに「巧」さが加わると「匠」の技の価値っていうのは一気に広がりそうだと思います。

内田嶺衣奈キャスター:
大切にしてほしいと感じる日本の技術はたくさんあるなと感じます。
その強みを広く社会にアピールしていくチャンスになるかもしれません。

(「Live News α」 9月4日放送分)