明治安田生命は、大手コンサルのアクセンチュアと包括的パートナーシップを締結し、AIを活用した「デジタル秘書」を導入。営業職員約3万6000人の業務効率化を進めると発表した。AIは人手不足解消と生産性向上の要であり、AIを活用し尽くす社会になってくると、リスキリングやスキルアップが必須要件になる可能性も専門家は指摘する。

生成AIで営業力強化と顧客対応を効率化

営業をサポートしてくれるデジタル秘書とはーー。

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明治安田生命が16日に発表したのは、生成AIを活用した「デジタル秘書」の導入だ。

明治安田生命・永島英器社長:
人とデジタルの効果的な融合を進めることで、より多くの社会的価値を提供する。

大手コンサルのアクセンチュアと包括的パートナーシップを締結し、技術支援を受け、今後5年間で約300億円かけて、社内の全業務に先端デジタル技術を導入する。

例えば、営業担当者が顧客と面談した際に聞いた、
「最近ご夫婦でゴルフを始められて、ご主人は元野球部で……。」

という顧客情報を音声で記録しておくと、AIが自動でデータを分類し蓄積する。

次の面談を控えた場面では、デジタル秘書に次のように語り掛けるとーー。

営業職員:
高橋さんと面談するので事前準備の確認がしたいです。

前回の面談のデータが瞬時に表示される。

また、面談中は――。

営業職員:
お子さんと変わらず運動されていますか。

顧客:
最近は全然できていませんね。

会話に合った案内を瞬時に表示
会話に合った案内を瞬時に表示

すると、会話に即したイベントの案内をデジタル秘書が瞬時に表示。スムーズに顧客に提案できるというわけだ。

明治安田生命は、デジタル秘書を約3万6000人の営業職員から順次導入を開始し、業務の効率化を図りながらAIを活用できる人材を育成。デジタル分野に精通した人材を300人以上育成するとしている。

技術支援を行うアクセンチュアは、業務・人・文化の3つの変革を行うことで、人手不足や生産性向上といった社会課題を解決していく考えだ。

アクセンチュア・江川昌史社長:
やはり日本で2倍3倍の生産性を高めるくらいのことをしていかないと、なかなかこの国の将来もない。非常に難しいのは人材を変えるということ。明治安田生命様と一緒にチャレンジして日本の社会に対してもいいインパクトを与えたい。

業務に最適化した特化型AIで活用の模索が始動

「Live News α」では、働き方に関する研究・調査を行っている、オルタナティブワークラボ所長の石倉秀明さんに話を聞いた。

堤礼実キャスター:
デジタル秘書の導入、どうご覧になりますか。

オルタナティブワークラボ所長・石倉秀明さん:
現在のビジネス環境において最も大きくて、どの会社も考え続けないといけないのが「人手不足」なんです。

これまでのように「採用」で人手不足を埋める、というアプローチもできなくなってきています。結果として考えざるを得ないのは、今回の試みのように、AIやテクノロジーの活用で人手不足を埋めることです。

もっと言えば、今よりも少ない人数で今以上の生産性をどう生み出していくか、これは全ての会社にとってのテーマなんです。

堤キャスター:
テクノロジーの活用を加速させていく必要がある訳ですね。

オルタナティブワークラボ所長・石倉秀明さん:
どの会社も生成AIなどを積極的に活用していかないといけないが、現在はAGIと呼ばれる汎用型の人工知能というのはまだ実現するフェーズではなく、特化型のAIのみというところです。

だからこそ、業務などに合わせてAIと業務をマッチングしていかないといけないわけです。

今回もまずは保険の営業職というところに特化して、その職種にとって最適なAIの活用を模索することから始めるということだと思います。

リスキリングやスキルアップすることが必須要件になる可能性

堤キャスター:
一方、課題についてはいかがですか。

オルタナティブワークラボ所長・石倉秀明さん:
よくAIによって人の仕事が奪われると言われますが、そうではなくて、AIを活用して、人は今までよりも能力やスキルが求められる仕事にシフトできるかどうかというのが課題だと思います。

人口が減少している社会では、全ての人が自分の持っている能力を最大限発揮してもらう必要があります。ただ、日本は先進国の中でも、従業員が本来持っているスキルや能力を仕事で使い切っていない人が多いとされています。

つまり、能力やスキルを今より発揮できる余地が充分にあって、そしてAIを使って実現しないといけないということだと思います。ただ、これは人によっては今よりも負荷がかかるということでもあるんです。

堤キャスター:
そうなってくると働き方も変わっていきそうですね。

オルタナティブワークラボ所長・石倉秀明さん:
AIを使いこなしながら、ある意味、求められる仕事のハードルそのものは上がっていくということだと思います。

そうなると働いている人のほとんどが今よりも高いスキルが求められるため、そのためのトレーニングや、能力開発をずっと続けていかないといけないわけです。

AIを活用し尽くす社会になると、実は今よりも、リスキリングやスキルアップすることが必須要件になるのではないかと思います。

堤キャスター:
今様々な業界で、デジタルが成長のキーワードになっています。AIの力を借りることで、それぞれが持つ力を最大限発揮することができる、そんな可能性が広がる使い方を期待したいと思います。
(「Live News α」1月16日放送分より)

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