セブン-イレブンやエネオスなど7社が、家庭で使い終わった油を回収し、持続可能な航空燃料(SAF)への活用を目指す事業を開始した。
回収ボックスや使いやすい容器を活用することで、参加のハードルを低くしている。
専門家は、国内で調達できるメリットのある廃食用油を家庭から回収する試みに期待したいと評価している。
家庭の廃食用油が持続可能な航空燃料へ
家庭で使われた油をコンビニエンスストアで回収し、持続可能な燃料に生まれ変わらせる。

セブン-イレブン・ジャパンや、エネオス、三井住友銀行など7社は15日から、家庭で使い終わった油を回収し、SAF(持続可能な航空燃料)への活用を目指す事業を開始した。

お店でもらったボトルに油を入れて、店舗に設置されているボックスに入れるだけで簡単に参加できる。

家庭から出る廃食用油は年間約10万トン発生している一方、ほとんどが廃棄されていて、各自治体や企業が再利用の取り組みを進めている。

今回の取り組みでは、千葉県内のセブン-イレブンやマンションで油を回収し、まずはバイオディーゼル燃料への活用を進め、2027年以降にSAFの製造を目指す。
CO2を8割削減するSAFを家庭の廃油で実現
「Live News α」では、日本総合研究所 チーフスペシャリストの村上芽さんに話を聞いた。
堤礼実キャスター:
ーーSDGs(持続可能な開発目標)にくわしい村上さんの目には今回の廃食用油の取り組み、どう映っていますか?

日本総合研究所 チーフスペシャリスト・村上芽さん:
注目なのは、SAFと呼ばれる持続可能な航空燃料の原料としての活用も視野に入れていることです。成田空港のある千葉県での実証実験には、航空燃料の需要地が近いという意味があります。
SAFの原料調達から消費までの過程で、既存のジェット燃料と比べて、CO2の排出量を最大8割減らせるとされています。
このSAFの原材料としては、廃食用油のほかには、バイオマスとして、さとうきびやトウモロコシの食べられない部分やごみ、海藻などがあります。
堤キャスター:
ーー原材料としてさまざまなものがある中で、廃食用油ならではメリットなどはあるのでしょうか?
日本総合研究所 チーフスペシャリスト・村上芽さん:
廃食用油は国内で調達できるという強みがあり、「都市油田」ともいわれています。ただ、食品工場やホテル、飲食店などから出てくる廃食用油のほとんどは回収されていて、家畜のエサやせっけんなどにリサイクルされています。
そこで今回のように、家庭から廃食用油を集める試みに期待したいです。
廃油回収の新習慣で手軽に気候対策を推進
堤キャスター:
ーー使い終わったら捨てるという行動が変わっていくといいですね。

日本総合研究所 チーフスペシャリスト・村上芽さん:
今回の試みでは、家庭で使い終わった油を集める容器を、マンションの住民にも事前に配布するということです。この容器は注ぎやすい口の大きさにするなど、新たな行動をしやすくする工夫があります。さらに回収ボックスが置かれ、油を出しやすくなっています。
こうした使いやすい容器といつでも出せるという利便性があれば、取り組みのハードルは高くないように思います。
堤キャスター:
ーー家庭からの回収も広がるといいですね。
日本総合研究所 チーフスペシャリスト・村上芽さん:
使い終わった油の処理が大変だとか、カロリーが気になるなどの理由で、揚げ物を作らない家庭も一定数あると思いますが、揚げたてのおいしさや好きなものを揚げられる楽しみもあるはずです。
今回の試みによって、「油の処理が簡単になって、しかも気候変動対策になれば」と、家で揚げ物をしてみようかなという人が出てくると、面白いと思います。
堤キャスター:
料理で使った油の処理はなかなか面倒ですから、回収して、さらに有効活用してくれる仕組みは個人的にありがたいと感じました。
あらためて生活を見つめ直すと、再利用できるものがまだたくさんあるのかもしれませんね。
(「Live News α」1月15日放送分より)