京都市は、2026年3月から宿泊税の上限を引き上げる改正案を発表し、税収は文化財の修繕や“オーバーツーリズム”対策に活用される予定だ。
宿泊税の使途の透明性と観光業者・市民間の対話が、持続可能な観光のカギになると専門家は指摘している。
宿泊税引き上げに市民からは期待の声も
京都市が、宿泊税を引き上げる方針を発表した。

「宿泊料金事前にご精算いただいてますので、宿泊税200円のご精算のみチェックアウトの際にご精算お願いします」

日本国内では、東京都や大阪府などが導入している「宿泊税」。
それぞれ宿泊料金に応じて税額を決めているが、京都市は14日、2026年3月から宿泊税の上限を引き上げる案を発表した。

京都市・松井孝治市長:
観光が市民生活の豊かさにつながっていることを実感していただく。そうした施策を裏打ちするような費用の一部を市民だけではなく、観光客の方々にもご負担いただく。そのために宿泊税の引き上げを実施いたします。

京都市は現在、宿泊料金に応じて、200円、500円、1000円の3つの区分で宿泊税を徴収している。

改正案では、2026年から5つの区分に変更し、税額を引き上げる。
最も高い1人1泊10万円を超える場合の税額は、1万円になる。
1泊10万円を超える部屋があるホテルはーー。

ホテル日航プリンセス京都・田口明 宿泊部部長:
率直に言って金額のインパクトの大きさに非常に驚きました。思ったより上がったという感覚。トータルの宿泊コストは上がるので、そこをどうお客様が感じて、どういう選択をされるかというところを注視していかないといけない。
観光客や京都市民も、おおむね理解を示しているようだ。
外国人観光客:
1万6000円で4泊して、1泊400円(の税)は安いと思う。
京都市民:
観光で市民の方、みんな迷惑している方いっぱいいらっしゃるからね。広い範囲で、市民のみなさんにいくように使っていただきたいです。

松井市長は――。
京都市・松井孝治市長:
公共交通の混雑等の観光課題の対策を、着実に実施しなければいけない。

宿泊税の増収分について、文化財などの修理助成や“オーバーツーリズム”の対策などに使うとしている。
宿泊税の透明性と対話で観光課題の解決へ
「Live News α」では、コミュニティデザイナーで、studio-L代表の山崎亮さんに話を聞いた。
堤礼実キャスター:
ーー宿泊税の引き上げ、どうご覧になりますか?

コミュニティデザイナー・山崎亮さん:
京都を訪れる旅行者は、歴史的な街並みや自然、人々の暮らしや文化に触れて楽しい時間を過ごしています。
当然のことながら、こうした観光資源の大半は観光業者が作り上げたものではない。そこで暮らす人々が長い歳月をかけて育んだもの。
旅行者から代金を預かる立場にある観光業者が、旅行者から代金の一部として、地域の課題解決のための資金を徴収し、地方自治体に納税することは理にかなっていると思います。
堤キャスター:
ーー地域の景観などを守ることにもつながればいいですね。
コミュニティデザイナー・山崎亮さん:
特に昨今のオーバーツーリズムは、地域に大きな課題を投げかけていることも多く、その対策が急がれるところであります。
その資金を、比較的裕福な旅行を楽しむ人たちから、より多く集めようというのが今回の狙いだろうと思います。
支払った宿泊税が、どんなことに使われているのかを明確に伝えるコミュニケーションが重要であり、地域住民に向けても情報発信していく必要があります。
多角的な資金策と合意形成が持続性支える
堤キャスター:
ーーやはり、宿泊税の使い道が問われそうですね?
コミュニティデザイナー・山崎亮さん:
宿泊税の用途については、関係者からの声を受けて、役所が決めることになると思います。ただ、声の大きな関係者の要望や陳情を集めるだけでなく、実際に地域に住んでいる人たちが集まって、生活の目線から意見を交換するようなワークショップ等が必要になると思います。
堤キャスター:
ーー大いに議論して、地域の人たちが納得できるものになるといいですよね。
コミュニティデザイナー・山崎亮さん:
観光業者を通じた地域課題解決資金の徴収を、宿泊税だけに代表させるということでいいのかについても、継続的に議論しておくべき点だと思います。
旅行者・観光業者・生活者のそれぞれが納得できる宿泊税の集め方と使い方が、持続可能な観光を実現するための基礎を形作るだろうなと思います。さまざまな人たちの対話が重要になると思います。
堤キャスター:
観光ビジネスでは、旅行者と受け入れ側のバランスが求められます。
地域を守り、日本の経済を回していくためにも、こうした税を観光インフラの整備に回すなど、有効な活用を期待したいです。
(「Live News α」1月14日放送分より)