ありそうでなかった子供目線の宿泊施設。4人の子育てをしながら夢の実現に向け準備を進め、こぢんまりとした4部屋の温泉旅館をオープンさせたオーナーの思いに迫る。

「あったらいいな…」夢を実現

タイム クローバー外観(静岡県伊東市)
タイム クローバー外観(静岡県伊東市)
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年間約260万人が宿泊する静岡県の伊東温泉。

伊東市の調査ではコロナ禍が明け観光客は回復傾向にあり、中でも子供を連れた家族旅行が前の年に比べて5%増加している。

こうした中、2024年11月17日にオープンしたのが客室数わずか4部屋の小さな温泉旅館「タイム クローバー」だ。

オーナーの末吉千波さんは「大きな所ではなくて、本当にこぢんまりとした客室が4部屋くらいでという夢が、自分の中で昔からあった」と話す。

千波さんは都内でカフェを営んでいたものの、新型コロナウイルスのあおりを受け4年前に閉店。「何ができるのかというのを2年間くらいずっと考えていた」という。

4人の子供を育てる傍ら旅館を作りたいという夢の実現に向け、巻き寿司など様々な資格を取得したほか物件探しに奔走すると伊東市で希望通りの物件に出会い移住した。

プレイルーム
プレイルーム

旅館はもともと企業の保養所で、和室だった客室は個性あふれる洋室にリフォーム。

さらに、談話室だった場所はボルダリングも楽しめるプレイルームへと生まれ変わった。

また、館内の至る所に子供向けの絵本や遊具が設置されている。

大人は温泉を楽しめるが、子供はピンとこないと感じていた千波さんは「『こんなのがあったらいいな』というのを作っていったらこういう旅館になった」と笑う。

実家に帰って来たような感覚に

宿泊客の子供と遊ぶ翔空さんとよね子さん
宿泊客の子供と遊ぶ翔空さんとよね子さん

旅館を作り上げるにあたって根底にあるのは4人の子供を育てた経験だが、その思いは接客にも活かされている。

宿泊客の子供と遊ぶのは千波さんの長男・翔空さんと母・よね子さんだ。

翔空さんに何の遊びか聞くと「みんなで遊ぶウイルスに関するゲームで、宝さがしのような感じ。小さな子供たちがこれ(カード)を集めて遊ぶ」と教えてくれた。

この旅館は宿泊客との距離の近さが特徴で、時には叱ったり注意したりすることもあるが宿泊客もそれを受け入れている。

宿泊客の1人は「(叱ってくれるのは)助かる。どうやって怒っていいのかとか、叱り方がわからない時もあるので、そういう時に(叱り方が)すごく上手」と証言。

千波さんはデジタルの発展により人との関わりが減っている今だからこそ、宿泊客と積極的に交流し、時には悩みや相談を聞く存在でありたいと願っていて、「ひとりひとりのお客さんとしっかりコミュニケーションを取りたい。悩みを抱えているママもたくさんいると思う。自分も同じでそういうのを気軽に話し合えるアットホームな、実家に帰ってきたような感覚で来て欲しい」と話す。

始まりの一歩を家族もサポート

長男・翔空さん(赤い帽子)
長男・翔空さん(赤い帽子)

夢を実現させた千波さんを家族も応援している。

「お母さんは、仕事熱心な人なので成功するとは思っていたが、 新しい物に挑戦するということだったので、こっち(伊東)に来ても、どこでも応援する」と力強く語ってくれたのは長男の翔空さんだ。

また、母親のよね子さんも「以前から自分で4人の子供を育てるにあたり『こんなことがあったらいいのに』と言う事はいろいろ言っていた。それを実現した。だから、やっぱり頑張って欲しい」とエールを贈る。

これまで、ありそうでなかった子供や親の目線に立った温泉旅館。

末吉千波さん
末吉千波さん

千波さんは「ひとりひとりのお客さんとみんなで作り上げていく旅館。『こういうのがあったらいいな』というのを言ってもらったり、できる限りで直していったり、子供も大人も本当に楽しめる温泉旅館にしたい」と口にする。

プレイルームで遊ぶ子供たち
プレイルームで遊ぶ子供たち

どうやらこれで完成ではなく、まだ始まりの一歩にすぎないようだ。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
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