2021年に大分県大分市で起きた時速194キロの車による死亡事故について、危険運転致死罪を認め、被告に懲役8年を言い渡した1審判決を不服として、検察側と弁護側の双方が控訴した。

検察側と弁護側の主張が真っ向から対立した裁判員裁判

この事故は2021年2月、大分市大在の県道交差点で会社員の小柳憲さん(当時50)が車で右折しようとしたところ、当時19歳の被告の男が運転する時速194キロで直進してきた車と衝突し、亡くなったものである。

大分市の事故現場(2021年)
大分市の事故現場(2021年)
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大分地検は当初、法定刑が懲役7年以下の「過失運転致死罪」で男を起訴。
しかし、遺族の署名活動などのあと、法定刑が懲役20年以下の「危険運転致死罪」に起訴内容を変更した。

刑罰の違い
刑罰の違い

そして、2024年11月に大分地裁で裁判員裁判が行われ、検察側は「制御困難な高速度」で「妨害目的」という要件を満たし、「危険運転致死罪」が成立するとして、懲役12年を求刑。
これに対し、弁護側は「危険運転致死罪にはあたらず、 被告は過失運転致死罪で処罰されるべき」と主張していた。

判決公判で「危険運転致死罪」が成立すると判断されるも…

11月28日の判決公判で、大分地裁は「妨害運転」については認めなかったものの、「ハンドルやブレーキの操作のわずかなミスによって、事故を発生させる危険性があった」とし、「進行を制御することが困難な高速度」だったと認定。「危険運転致死罪」が成立すると判断した。

その上で、被告の男に対し、懲役8年の実刑判決を言い渡した。

判決後の遺族の会見
判決後の遺族の会見

判決後の会見で、亡くなった小柳憲さんの姉・長文恵さんは「危険運転致死罪で認められる判決になったことはとても大きなこと。ただ、量刑については軽い。自分の中では8年と聞いた時に、その後の裁判長の話は全く耳に入らない思いがして。今後、少し考える時間が必要な気がする判決でした」などと、複雑な心境を語っていた。

遺族側「量刑が軽すぎる」 大分地検に控訴を要請する意見書を提出

この1審判決を巡って、12月4日、遺族側は「量刑が軽すぎる」として大分地検に控訴を要請する意見書を提出した。

大分地裁は懲役8年という量刑の理由について「起訴から裁判開始までが長引き被告は不安定な状態に置かれ続けた」などとしていたが、意見書で遺族側は「裁判までの期間が長引いたのは被告側が危険運転致死罪の成立を争ったため。量刑判断で考慮すべき事情ではない」などと指摘している。
遺族側代理人 森脇宏弁護士は「私たち遺族側としては控訴をすることは出来なくて、検察官の権限行使に委ねるしかないので控訴を前向きに検討してくださいとお願いした」と述べた。

大分地検
大分地検

控訴の期限だった12月12日、大分地裁などによると、検察側と弁護側双方が福岡高裁に控訴したことがわかった。

大分地検の小山陽一郎次席検事は「主張の一部が認められなかったことなどから上級庁とも協議した上、控訴した」とコメントしていて、「妨害目的」が認定されなかったことや懲役8年とした量刑が不当であると理由を説明した。

また、遺族・長文恵さんは「検察が控訴したことを受けてひとまず安心しました。今後、高裁が高速度による進行制御困難との判断を維持した上で、妨害目的についても認め、検察の求刑を踏まえ、適切な量刑判断がなされることを強く願っています」と話している。

一方、弁護側は「控訴の有無に関わらず、回答を差し控える」としている。

(テレビ大分)

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