和歌山地裁前から12日までの裁判を取材した樋口諒記者の解説だ。
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■須藤被告 すすり泣く場面も 一礼をして法廷を後に

関西テレビ 樋口諒記者:12日、和歌山地裁は須藤被告に無罪を言い渡しました。判決を言い渡されるとき、須藤被告はまっすぐと裁判長の方を向いていましたが、その後、目を下に落とし、弁護人がハンカチを手渡すと、須藤被告のすすり泣く声が法廷に聞こえました。そして最後、須藤被告は裁判長に一礼をして法廷を後にしました。
吉原キャスター:12日の須藤被告は、これまでの須藤被告と変わったところはあったんですか?
関西テレビ 樋口諒記者:これまでの裁判をすべて傍聴し取材していますが、須藤被告はいつも冷静に表情を変えず話している印象でしたが、12日はすすり泣く場面もあり、感情が少し表に出ているなと感じました。さらに裁判が始まる前、髪を触るような場面も多く、判決ということもあり、緊張している様子も見られました。
■28人の証人尋問 「関係性の薄い証人もいた印象」

吉原キャスター:長期の裁判となり28人の証人尋問も行われました。この判決のポイントについてどう見ていますか?
関西テレビ 樋口諒記者:捜査を担当した警察官や、野崎さんの遺体を解剖した解剖医、さらには野崎さんと須藤被告の関係性を知る近い人物など、たくさんの人物が証言台に立ったのですが、その中には野崎さんの家で働いていたハウスキーパーの友人や保険の外交員など、少し関係性の薄い証人もいた印象です。この点に検察側が必死に立証する姿勢が伺えました。
■「致死量の覚醒剤を摂取してしまった可能性は否定できない」

関西テレビ 樋口諒記者:直接的な証拠がない中での裁判になりましたが、大きなポイントとなった『事件性』、自殺や事故の可能性は考えられないのかについて、判決理由の中で裁判長から言及がありました。 まずは自殺についてで、野崎さんが亡くなる直前に愛犬が死んでしまい、ひどく落ち込んでいたことが複数の証人の証言で明らかになっています。ただ、愛犬のお別れ会をすることを野崎さんが非常に楽しみにしていたというような証言などから、自殺の可能性は考えられないとなっています。 さらに自殺以外の方法で、例えば事故などで野崎さんが覚醒剤を摂取したという可能性についても言及があり、証人の中に野崎さんとおよそ20年交友のある女性が出廷し、野崎さんが亡くなる直前に『覚醒剤やってるで』というような電話をしてきたという証言がありました。 裁判長も『冗談の可能性ももちろんある』としつつも、直後に野崎さんが急性覚醒剤中毒で亡くなっていることから、野崎さんが亡くなる直前に何らかのきっかけで覚醒剤に関心を持ち、致死量の覚醒剤を摂取してしまった可能性は否定できないと判決理由にも示されていました。
■須藤被告の検索履歴 「殺害を計画していなければ検索することはありえないとまでは言えない」

吉原キャスター:須藤被告が行っていたインターネットでの検索も犯人という理由になるまでは至らなかったということなんですね?
関西テレビ 樋口諒記者:検察側の間接証拠の一つになっていますが、判決理由の中でも『検索履歴については殺害を計画していなければ検索することはありえないとまでは言えない』と指摘していて、検察側の立証としては足りないということです。 さらに、須藤被告が密売人から覚醒剤を購入していたという検察側の主張に対しても、『覚醒剤に間違いないとは認定できない』などとして、被告の犯行に合理的疑いが残り、無罪判決を言い渡したということです。
吉原キャスター:覚醒剤を買ったことそのものも認定されなかった、これが判決に与える影響は大きいですよね?
菊地幸夫 弁護士:大きいですね。そもそも今回の事件では覚醒剤がいわば、被害者の命を奪う凶器みたいなものですから、それが凶器じゃなかったかもしれないっていう入り口でもう結論が出ているという。また誤飲の可能性があるのも大きいと思います。
(関西テレビ「newsランナー」2024年12月12日放送)