5ブランドが1つの店舗に集合

テイクアウト需要が高まる中、ファミレスのハンバーグも天ぷら専門店の味も、既存店の空き時間にまとめて引き受ける試みがスタートした。

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8月31日にオープンした東京・文京区の店舗(ロイヤルミライダイニング)では、ロイヤルグループの5つのブランドのメニューを頼むことができる。

メニューを見てみると、確かに『ロイヤルホスト』や『てんや』など、全く違う複数のブランドの料理が並んでいる。

キッチンを改装してデリバリーに対応

この店舗は元々、ロイヤルホールディングスが企業の従業員や地域の住民に向けた、いわゆる街の食堂。

もともとはロイヤルホールディングスの食堂
もともとはロイヤルホールディングスの食堂

食堂ならではの幅広いメニューを扱う厨房の設備を生かし、テイクアウトやデリバリーにも対応するキッチンに改装し、天丼からハンバーグ、カレーまで、5ブランド28種類のメニューの提供を始めた。

これまでのランチタイムだけの営業から、午後8時までに延長し、需要を掘り起こしたい考え。

テイクアウトする客:
いつもだいたい同じになってしまうので、新しいのが食べられるのはすごくありがたい。

『ロイヤルホスト』や『てんや』の売り上げは、7月に前年比80%までに回復したものの、その後、再び新型コロナウイルス感染拡大の傾向が強まったため回復が鈍化。

好調なテイクアウトやデリバリーを強化することで、回復を後押ししたい考え。

ロイヤルHD・黒須康宏社長:
客のニーズの変化にともなう1つの対応方法であるとともに、われわれのビジネスチャンスとして捉えて、今回挑戦をした。客にいかに楽しんでもらえるか、しっかりと考えていきたい。

ロイヤルHD・黒須康宏社長
ロイヤルHD・黒須康宏社長

既存の店舗を活用し、テイクアウトを強化する取り組みは、ほかにも。

ガスト店内にから揚げ専門店

『ガスト』杉並和泉店の店内には、すかいらーくグループのから揚げ専門店『から好し』のお品書きが貼られている。

ガスト 東京武蔵野エリア・金子友樹エリアスーパーバイザー:
から揚げという商品は、非常に需要が高い。イートイン、テイクアウト、宅配を含めて10%ほど売り上げが伸びている。

ガスト 東京武蔵野エリア・金子友樹エリアスーパーバイザーの話
ガスト 東京武蔵野エリア・金子友樹エリアスーパーバイザーの話

テイクアウトで好調なから揚げに力を入れることで、売り上げもアップ。

店内に専用のフライヤーを入れるだけという簡単な改装で済むため、初期投資も抑えられているのだという。

現在は、9店舗で展開。2021年3月までに1,140店舗を目指したいとしている。

コロナ禍で売り上げが伸び悩む外食産業。
既存店を最大限活用する取り組みでニーズの変化に対応し、生き残りを図る。

コンビニを凌駕する専門店の味が決め手

三田友梨佳キャスター:
マーケティングアナリストの渡辺広明さんに聞きます。
渡辺さん、ファミレスや天ぷら専門店などの全メニューを既存店1つでテイクアウト用に調理するという今回の取り組みをどうご覧になりますか?

マーケティングアナリスト・渡辺広明氏:
テイクアウト需要を取り込むためには今、スーパーやコンビニの中食(調理済み食品)がすごく美味しくなっているので、それを凌駕する必要があると思います。

特に専門のコックが味に責任を持って最終調理をすることが差別化のポイントになるのかなと思っていますし、中食の効率的な拠点になるのかなと思っています。
その辺りが今回の試みの大きなポイントになると考えます。

三田友梨佳キャスター:
この試みを成功させるためにクリアすべき課題についてはいかがですか?

マーケティングアナリスト・渡辺広明氏:
やはりそこでしか食べられない象徴的なメニューが大事になると思います。
特にコックという専門的な人が作った付加価値が大きなポイントになりますし、そこが成功すると新型コロナ収束後も引き続き成功する可能性が高くなると考えます。

三田友梨佳キャスター:
好みが多様化する中でファミレスだけで多くのメニューを用意するのも大変になってきましたよね。

マーケティングアナリスト・渡辺広明氏:
そうですね。ファミリーレストランはかつては家族が全員だいたい満足する食だったのですが、今の若者や子供はフードコートが一般的になっているので、カレー、お寿司、ラーメン、たこ焼きがあるとなると、ファミリーレストランだと物足りないと思う人が多くなっています。

ですので、社会のニーズに合わせて、ファミリーレストランはファミリーで食べるというよりも、少ない人数で行って食べるようにも変化していっています。

フードコート(イメージ)
フードコート(イメージ)

三田友梨佳キャスター:
ファミリーレストランという業態そのものが転換点を迎えているのかもしれませんね。

マーケティングアナリスト・渡辺広明氏:
そうですね。ただし若者にはドリンクバーは大変人気があるので、そういった多様化したニーズを取り込むという部分は強化する必要性があるかもしれないし、地域のニーズにあった部分をきっちり把握しながらお店を展開することも今後大事だと考えます。

三田友梨佳キャスター:
苦境が続く外食業界ですが、テイクアウトやデリバリーの市場が拡大する中でファミレス業界がどのように変わっていくのか注視していきたいと思います。

(「Live News α」8月31日放送分)