寒くなったこの時期、気づかないうちに進行する「隠れ糖尿病」。専門家が徹底解説する。

■糖尿病にまつわる疑問 専門の医師が答える

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澤木内科・糖尿病クリニック 澤木秀明院長に聞いた。

(Q:なぜ寒い時期は糖尿病リスクが上がる?)

澤木秀明医師:寒い時期は、身体不活動と言いますか、外に出なくなる方が多くなって、運動量が一気に減ります。『こたつにみかん』という方が結構おられまして、糖質の多いものを簡単に食べられる環境が多くなっているとも思われます。また、寒い時というのは、心血管がキュッと縮こまりやすくなって、狭心症や心筋梗塞が多くなる時期でもあります。

(Q:糖尿病は遺伝する?なりやすい人は?)

澤木秀明医師:遺伝に関しましては、やはりご両親が糖尿病の方は、お子さんがなりやすくなるというのはあります。体質を引き継いでるという点からも言えるかと思います。

(Q:父親、母親どちらから影響を受けやすいか?)

澤木秀明医師:両方の親から影響を受けることになります。

(Q:食べ物は関係ある?)

澤木秀明医師:食べ物の中でも糖質が過剰になると起こしやすくはなるんですが、でも体質的に努力されてても糖尿病になってしまう方もおられます。

(Q:太っている人が糖尿病になりやすい?)

澤木秀明医師:太っているかどうかというのは関係ないんです。欧米人の糖尿病の場合には太ってる方が多いんですけれども、日本人の方は、小太りの方が糖尿病になられるケースが多いです。

(Q:糖尿病による突然死はよくある?)

澤木秀明医師:昨日まで元気だった人が突然死するのを防ぎたいということになります。

■糖尿病が引き起こす主な病気や症状

糖尿病が引き起こす主な病気や症状を見ていく。

心筋梗塞、脳梗塞、腎機能の低下、失明、神経障害、手足の切断に至る場合もあるということとだ。

澤木秀明医師:糖尿病の一番多い症状は、『症状がない』ということです。通常だったら痛みがあるから病院に行こうと思うんですけれども、糖尿病、高血糖が長く続いて、初めて症状が出てくるということになります。

(Q:糖尿病はどのように分かることが多いのか?)

澤木秀明医師:健康診断に行って、元気であっても血糖やHbA1cというような指標が、糖尿病の基準になっていないかということの確認が必要になります。

(Q:糖尿病になると『尿が甘い香りがする』と聞いたことがあるが…)

澤木秀明医師:そのような症状がきっかけの一つになる場合はあるんですけれども、圧倒的に症状がないということがあります。健康診断で初めて見つかるというケースが多く、症状だけでは分からない。尿は普段は無臭ですが、何かしらの要因で濁ったりして、臭いが出てくるということもあるかもしれません。

■糖尿病で手足を切断した元プロ野球選手も

症状の一つに手足の切断がありますが、元プロ野球選手の佐野慈紀さん(56)が、切断に至ったことを明かしている。

2008年頃、糖尿病と診断 15年後、2023年4月に右足に感染症が出て、右足の中指を切断 2023年12月にも右手の右指2本を切断 ことし2024年5月に感染症がさらに進行し、右腕を切断 以上のような経緯をたどったということだ。

佐野慈紀さんのことし9月のブログより:重症となるまでのターニングポイントは、未だ分かりません。ある日突然襲ってくるのです。糖尿病の恐ろしさは罹患すると色んな弊害が起こります。免疫力や抵抗力も落ちていきます、小さな傷から大きな代償を抱えることになります。

■なぜ手足の切断をしなければならないのか

(Q:治療していても進行を抑えることはできないのか?)

澤木秀明医師:糖尿病が2008年に診断されたということで、その後、定期的に医療機関にかかられていて、その都度、できる対応をされてたかどうかというところが鍵になってくるかと思います。

(Q:感染症から指や腕を切断するということに至るのはなぜ?)

澤木秀明医師:感染症を糖尿病の方が起こしやすかったり、小さな傷だと痛みを感じて対処しようと思うんですけれども、神経障害が進むとそれが気づかなかったりとか、血流障害のために治りが悪いとか、3つの要素が相まってこのような事例になる方もおられます。

(Q:なぜ切断までしなければいけないのか?)

澤木秀明医師:切断することで感染が体の中心に来ることを防ぐという意味合いもあり、命を助けるために足を諦めてもらうという、つらい決断をされる患者さんもおられます。

(Q:糖尿病は血液検査で分かる?)

澤木秀明医師:HbA1cと血糖値は血液検査で分かります。あとは、症状と合わせて、どの程度合併症が進んでるのかというのは、医療機関の対話の中で早期発見・早期治療に心がけているかと思います。

■糖尿病のリスクがある40代男性の半数が治療をしていない

5人に1人が糖尿病のリスクを抱えているにもかかわらず、40代男性の場合、およそ半分は治療していないということだ。

(Q:糖尿病が強く疑われている40代男性の約半数が治療に行かないという。背景は?)

澤木秀明医師:とても大切なポイントだと考えております。40代の男性は職場においても家庭においてもすごく活躍されてる世代で、自分のことよりもそれ以外のところに意識が集中している世代でもあるかと思います。健康診断で指摘されても、症状がないために後回しにされやすいという点もあるかなと思います。

(Q:自覚症状がないから、治療という行動に結びつかないのか?)

澤木秀明医師:そうなんです。自覚症状がないので、次のステップとして向き合って、定期的にチェックをしようか、治療に踏み込もうというのが後回しになってしまうところが、国としても問題と考えておられるということになります。

(Q:治療で症状を改善、悪化させないことはできるのか?)

澤木秀明医師:受診さえしていただければ、その時点でのベストまたはベターな提案はすることができます。

■糖尿病を予防するために

糖尿病の予防策を見ていく。

・短時間でもいいので、継続的に運動。

澤木秀明医師:ランニングはかなりハードな運動にはなりますが、ちょっと汗をかく程度の歩行でも。運動できない方の場合には、30分おきに立ち上がるというのでもいいです。じっとしていることがよくない。

・糖類の多い飲み物に注意。
・よくかんで、ゆっくり食べる。
・野菜、タンパク質から食べる。

澤木秀明医師:ベジファーストすなわち野菜や、タンパクを先に食べることで、糖が後から入ってくる吸収を抑えるという効果を期待してます。

(Q:糖尿病の恐れがある時は、検査の時に言ってもらえる?)
澤木秀明医師:健康診断の結果説明の時に説明があるかと思います。

糖尿病への対策は検査と日常生活、生活習慣の両輪だ。まず身近な生活習慣から注意していきたい。

(関西テレビ「旬感LIVEとれたてっ!」2024年12月5日放送)

関西テレビ
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