寒暖差やインフルエンザで体調を崩しがちな秋に、医療現場で「薬不足」が深刻化しています。8年ぶりに流行しているマイコプラズマ肺炎の影響もあり、解消には時間がかかりそうです。
■マイコプラズマ肺炎流行で「せき止め薬」など不足
名古屋市西区の「みわた小児科」では26日、せきなどの症状で子供たちが診察を受けていました。

母親:
熱が出ているのと、鼻水とせきで来ました。はやっています、家族全員もう風邪という感じでずっと長引いています。ちょっと前にマイコプラズマもなったんですけど、そこから(体調を)崩しがちかなという感じです。
最近の寒暖差や、発熱やせきなどの症状があるマイコプラズマ肺炎などの感染症で、多くの患者が訪れています。
そんな中、深刻になっているのが「薬不足」です。
三輪田俊介医師:
せきの薬がやはり不足していますね。マイコプラズマに効く抗生剤が全体的に不足している印象があります。
8年ぶりの大流行といわれる「マイコプラズマ肺炎」は、2024年は春から流行が続いていて、せき止め薬などが不足しているといいます。

三輪田俊介医師:
いくつかの薬がマイコプラズマに関しては効きますので、その時なんとか使える薬を処方してはいます。ただ、あまりお薬がおいしくないんですね。この薬は飲めるんだけど、この薬はどうしても苦手という子がいるので、「ごめんね。苦いけど頑張って飲んでね」と。
東海3県ではすでにインフルエンザも流行期に入っていて、薬の需要がさらに増えるおそれもあります。
■薬が足りない…原因は“安すぎる”?
薬不足は全国的に問題となっています。名古屋市中川区の薬局「大島薬局」でも、主に風邪や感染症などに処方する抗生剤が不足しています。

大島薬局・管理薬剤師の大橋弘治さん:
今こちらの抗生剤、3種類が特に入ってきていない状態ですね。背景としては、もともと作っている会社の工場が行政処分で出荷停止になってしまった。他の製薬会社に皆さん注文がいって、パンクしちゃったという感じ。
薬が足りない原因について、2024年に改定された薬の価格が安すぎることが挙げられています。この薬局で処方していた血圧の薬は出荷停止となり、急きょ他のメーカーに切り替えましたが、入荷するまでに時間がかかったといいます。

大島薬局・管理薬剤師の大橋弘治さん:
血圧の薬が本当にダメになっちゃった。「サンド」というメーカーを使っていたんですけど、こちらの「TCK」というメーカーを入れてもらっているので、なんとかつながっている。小児用の抗生剤は全然入ってきていなくて今はカラの状態。他の薬局さんから譲ってもらったものを使っている。
ほかの薬局と分け合ったり、医師と相談して別の薬で代用するなど、厳しいやりくりが続きます。
大島薬局・管理薬剤師の大橋弘治さん:
ほぼ毎日あります。患者さんが処方箋をもって来られて、ない抗生剤だったりすると「あ、これないわ」となって、ドクターに電話をかけて「同じタイプの代わりになる薬剤あるんですけど、どうしますか?」と言って、処方箋が変わって患者さんに説明すると。なんとかしてくれと思いますけどね、正直な話。
■専門家「急な増産難しい」「薬価が抑えられていて…」
厚生労働省が発表している医薬品の供給状況では、11月25日現在、すべての受注には対応できていないということです。
限定出荷や供給停止の医薬品は、全体のおよそ2割、あわせて3103品目にのぼっていて、その6割以上がジェネリック医薬品です。2020年以降、ジェネリック医薬品メーカーの不祥事が相次ぎ、生産停止となった影響がまだ残っています。

薬が不足している原因について、医薬品の問題に詳しい神奈川県立保健福祉大学の坂巻弘之さんに聞きました。
▼薬の製造は細かくスケジュールが綿密に決められていて、需要が増えても急な増産は難しい。
▼薬の原料は主に海外から輸入していて、円安でコストが上昇しているのに薬の価格は抑えられていて増産意欲につながらない。
薬不足は、感染症が落ち着く春先に少し改善するのではとのことです。
(東海テレビ)