熊本・南阿蘇村で31年間開かれ、2019年にいったん幕を閉じたカントリーミュージックの祭典『カントリーゴールド』が、2024年10月に5年ぶりに『同窓会』として復活した。『約束の日』を喜ぶ多くのファンでにぎわった一日を取材した。
南阿蘇村『カントリーゴールド同窓会』
2024年10月20日、熊本県野外劇アスペクタ(熊本・南阿蘇村)には、心地よくも時折肌寒い風が吹き抜けていた。午前10時の開場を前に、入場ゲートにはウエスタンスタイルのファンが列を作る。
この記事の画像(14枚)5年ぶりに復活するカントリーミュージックの祭典『カントリーゴールド同窓会』。秋の装いに交じり、伝説のカントリーシンガー・チャーリー永谷さん(88)だけがTシャツ姿だ。
チャーリーさんは「きょうはいろんな人と会える。こんな天気になって、うれしいですよ」と話し、「もうだいぶん入りよるですね。きのうはめちゃくちゃ雨でね」と、多くのファンとの再会を喜んだ。
1989年から始まり、国内最大規模のカントリーミュージックコンサートとして愛され続けてきたカントリーゴールド。2万人を超える観客を集める祭典には、本場アメリカのミュージックチャートを駆け上がった多くのアーティストも出演してきた。
そして2019年、惜しまれつつ幕を閉じた『約束の日』が、2024年にファンの企画で、有志による実行委員会が立ち上がり同窓会として復活した。
伝説のカントリーシンガー・チャーリ―永谷さん
チャーリーさんは「電話がなかったら、全く忘れていた。『最後の〈取り〉だけん、ゆっくりよかたい』て言いよった」と、マイペースな88歳のレジェンドは、頼まれていたオープニングの挨拶を忘れ、開演まで1時間を切ってから会場入り。
チャーリーはいつだってマイペース。開演10分前に現れても誰も気にしない。共演者は「(チャーリーは)自由人ですから」と話し、高辻満男実行委員長も「きちんと歌ってよ。涙で歌詞を忘れたらいかんばい」と声をかけた。
のんびりと、気の向くまま、風の吹くまま音に身を任せ、カントリーゴールドは31年間、愛されてきた。
来場者は「日頃は(ウエスタンスタイルが)派手すぎて恥ずかしいから、ここだけ」や「カントリーが大好きで、ここに来るのは初めて。チャーリーさんを楽しみにしています」と、5年ぶりの『同窓会』を楽しみにしていた。
みんながこの日を待っていた『同窓会』には、7つのバンドが出演。誰もが久しぶりに感じていた「南阿蘇の空と山々にはカントリーがよく染みる」。
70年近いキャリア ファンを『友人』
会場には2世代のファンも多く訪れていた。高齢になった親を連れて、孫と一緒に…。チャーリーさんは『約束の日』を支え続けてきた人々をくまなく回っていた。
信じられないかもしれないが、チャーリーさんは5年ぶりに会ったファンでも、名前とどこの県から来たかをスラスラと口にする。
チャーリーさんは「名前を聞いて、住所の番地までは覚えてないけど、東京のどことか、大阪のどことか、町くらいまでは覚えている。昔5000枚も6000枚も暑中見舞いと年賀状を書いていたから」と話す。
来場者一人一人に便りを出し、コツコツとチケットを販売してきたチャーリーさん。70年近いキャリアのレジェンドはファンを『友人』と呼び、アメリカ国内33の州で名誉州民の称号を授けられている。
チャーリーさん「あと50年は頑張る」
5年ぶりに立つアスペクタのステージ。31年愛され続けてきた『約束の日』が終わることはない。
訪れたファンは「言葉が出ないくらい楽しかったです」や「初めてカントリーミュージックを聴いて、素朴な音楽と阿蘇の風景に癒やされました」と話す。
チャーリーさんは「ウクライナとかいろいろあるじゃないですか。僕が行って、カントリーミュージックを広げようと思う。そしたら平和になりますよ。プーチン大統領の前で歌ったら絶対平和になる。あと50年は頑張りますので」と話し、平和を願う伝説のシンガーとカントリーを愛する人々の『約束の日』はきっと、いつまでも続いていく。
(テレビ熊本)