北海道でヒグマを駆除する猟友会が、自治体からの駆除要請を今後、拒否することを検討しているという。背景にあるのは、2018年8月の北海道・砂川市が要請したヒグマ駆除でハンターが発砲した弾が建物に当たる可能性があったとして、猟銃所持の許可を取り消された一件。北海道猟友会は拒否について11月末にも幹部会合、理事会を経て、道内71の支部に通知する予定だ。
2024年はドングリ10年ぶり並作で目撃件数は減
人の生活圏に山から下りてくる熊。秋は熊にとって冬眠前の栄養を蓄える期間のため、人を襲うなどの被害が相次ぐ季節だが、2024年は異変があった。
この記事の画像(48枚)ヒグマの主食・ドングリがよく実り、10年ぶりの並作となったのだ。
そのため、2023年まではエサ不足で熊の行動範囲が人の生活圏にまで及んでいたが、2024年は山にエサがあるため、熊の目撃件数が減っている。
とはいえ、熊はいつどこで現れるか分からず警戒が必要だ。
そんな中、北海道でヒグマを駆除する猟友会をめぐり、大きな動きがあった。
自治体からのヒグマの駆除要請を今後、拒否することを検討しているというのだ。
発砲した弾が建物に当たる可能性…猟銃所持の許可取り消し
背景にあるのは、2018年8月の北海道・砂川市が要請したヒグマ駆除だった。
ハンターの池上治男さんが発砲した弾が建物に当たる可能性があったとして、猟銃所持の許可を取り消されたのだ。
10月に行われた処分の取り消しを求めた控訴審でも、札幌高裁は「跳弾により弾道が変化するなどし、建物5軒に到達する恐れがあった」などとして、池上さんの訴えを退けた。
人が暮らす地域で熊被害が起きた場合、どうするのか。
猟友会の幹部はこの判決に対し、「街中や住宅が近くにある場合など、駆除が難しい場所の判断をハンターに迫られ、責任を負うのは問題だ」とコメントした。
ハンター「依頼する以上は行政に責任がある」
問題のきっかけとなったハンターの池上さんは、猟友会が駆除要請の拒否を検討していることに対し、次のように語る。
猟銃所持の許可を取り消された池上治男さん:
「撃った弾があっちいったりこっちいったり飛ぶ。(撃った弾が)ぶつかっていくんだ」と言われたら、ハンターの人たちはどうしようもない状態に追い込まれる。
拒否というよりも、やろうと思ってもできない状態になったということ。拒否ということは正確には当てはまらないと思う。
依頼する以上は行政に責任があるということは間違いない事実。(駆除を)頼んだら「後は知らん」では、信頼関係はできない。
札幌市でヒグマの駆除を行っているヒグマ防除隊の玉木康雄隊長も、「ハンターが1人で、猟友会だけでヒグマを捕獲しているわけではなく、関係者一同の共通認識の中、信頼関係ができあがって初めてトリガーに指がかかる。どこまでの部分はハンターの責任に持ってこれるのか、ここからここまではハンターに指示した側が負うべき責任なのか。あるいは保険を導入するとか、インフラ整備はこれから必要」と訴える。
北海道猟友会はヒグマ駆除の拒否について11月末にも幹部会合を行い、理事会を経て、道内71の支部に通知する予定だ。
熊の目撃件数は2023年に比べて減ったものの、熊が駆除できない場合、被害に遭うのはその地域に住む住民。クマ被害をどう防ぐのか、今後の動きに注目したい。
(「イット!」11月14日放送より)