首相指名選挙を経て、第2次石破内閣が発足した。少数与党政権下で国会のルールはどうなるのか。「BSフジLIVE プライムニュース」では立憲民主党の長妻昭氏と国民民主党の古川元久氏を迎え、田﨑史郎氏とともに議論した。

“与党ボケ”石破自民に欠如していた危機感

反町理キャスター:
首相指名の前に国民民主の玉木代表に女性問題が出た。玉木さんは「報道された内容はおおむね事実。本当に申し訳ございませんでした」と謝罪。国民民主の両院議員総会では首相指名選挙に向けて代表続投、玉木代表に投票する方針を確認した。辞任を求める声はなかったか。

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古川元久 国民民主党国対委員長:
こんな大事なときに何をやってるんだ、と厳しく本人に怒った。本人もしおれていた。だがこれはプライベートの話で、総選挙では党として有権者の皆さんの期待を受けた。手取りを増やす政策の実現を党一丸で目指していこうと皆で確認した。

政治ジャーナリスト 田﨑史郎氏:
国民民主の判断は一つの選択だが、政党代表が選挙直後を含めた時期に不倫するのはかなり脇が甘い。処罰もなければ疑問は残る。自民党の閣僚がやれば即刻アウト。今後そういう閣僚が出ても国民民主が厳しく言えない不安もある。ただ103万円の壁に対しては、いい加減に手を打つとスキャンダルがあってそうなったと言われるから、より世論の方に重きを置いて迫っていく期待もある。

竹俣紅キャスター:
首相指名を経て第2次石破内閣が発足。衆院選での現職閣僚の落選に伴い、法相に鈴木馨祐氏、農水相に江藤拓氏が就任。斉藤鉄夫氏が公明党代表に就任したため国交相に公明党の中野洋昌氏。その他は第1次石破内閣のメンバー。

長妻昭 立憲民主党代表代行:
代表選時の推薦人が多いのは異例。各分野で聞いたことのない方も一定程度おられる。大臣は委員会でふさわしい答弁をしてほしい。参議院は自公が多数だが、通るものから衆議院を通過させ直近の民意は衆議院だとプレッシャーを与えていく。

古川元久 国民民主党国対委員長:
本当に大丈夫なのか。安定多数ならこの布陣でもいいが、委員長も取られているこの状況で立ち往生したときには資質が問われる。

政治ジャーナリスト 田﨑史郎氏:
入れ替わった閣僚のうち鈴木さんは麻生元総理の側近、江藤さんは総裁選で林芳正さんの推薦人。党の新しい選対委員長の木原誠二さんは岸田総理の側近。この3人は石破総理が考え抜いた人選。だが第1次から残った人たちは大丈夫か。すぐ予算委員会で問われる。

竹俣紅キャスター:
法案などを審議する各委員会の委員長を与野党どちらが務めるかが論戦を大きく左右する。委員長のポストの割り振りは、17ある常任委員会のうち野党が2から7に増やし、与党は15から10に減った。

政治ジャーナリスト 田﨑史郎氏:
自民は従来通り立憲に常任委員長2つと特別委員長2つをあげておけばいいという非常に甘い考えで臨み、蹴られた。立憲の要求は委員長配分をドント方式で行うこと、予算委員長か議院運営委員長のどちらかを取ること。のまないなら採決で決めるという野党間のコンセンサスを作りうまく対応した。自民は、野党には予算を成立させないことはできないという読みで議運を優先し予算委員長を渡した。だがその判断が甘かったかも。総理は答弁能力が高いが各閣僚が危ない。かなり辛くなるのでは。

古川元久 国民民主党国対委員長:
国会を与野党がもっと建設的に議論できる場にするため、従来の与党中心の国会運営を変えていかなければ。予算委員長を渡してきた自民党は、石破総理は予算を通すまで、つまり3月末で終わりと考えたのでは。首を差し出すから予算を通してくれと。

長妻昭 立憲民主党代表代行:
野党が本気で結束すれば議長も含め全委員長ポストを取れる状況。与党ボケしていた自民党がやっとそれに気づいた。議長が自民・議運委員長が野党になれば、全ての法案審議が大変なことになりかねないと考えたか。我々も理由なく予算審議を引き延ばすことはできない。国民の皆さんに理解いただける修正案や組み替え案を出す。自民党もこれは大幅にのむ、仕方がないと覚悟したのでは。

反町理キャスター:
政策協議を経て、自公は国民民主の意見をかなりのんだ案を出す可能性がある。一方、立憲が音頭を取って野党全体で意見をまとめ組み替え動議を出す可能性も。国民民主が自公に賛成すれば過半数となり立憲の話を聞く必要がなくなる。つまりキャスティングボートを握ることに。

古川元久 国民民主党国対委員長:
我々はわずか28議席で、衆議院のわずか6%。うち新人が18人。立場・責任もあるが、なんでもできるような状況ではない。党を挙げて103万の壁の問題で一点突破のようにしていかなければ。党内で口酸っぱく言っている。

政策決定・法案修正プロセスは透明化されるか

竹俣紅キャスター:
立憲の野田代表は会見で「予算委員会では我々の案も議員立法として提出をして、政府案とともに協議してもらいながら修正を勝ち取れるように頑張っていきたい」。国民民主の玉木代表はプライムニュース出演時に「(自民と国民民主の政策協議における)意思決定のプロセスを透明化していく」と発言。立憲民主は国会審議で、国民民主は与党との政策協議で、と政策実現へのスタンスが異なる。

長妻昭 立憲民主党代表代行:
我々は国会審議における理念として「公開と熟議」を重視する。裏の打ち合わせや協議は重要だが、理事会や委員会、議員立法の提出など見える場での協議をしていきたい。

古川元久 国民民主党国対委員長:
政党間の協議も密室で行うのではなく透明化していく。これは国会も当然。そこは長妻さんと全く変わらない。

反町理キャスター:
自公政権の力の根源となっていたのが事前審査制。自民党と公明党の政調で議論し了承されたものが国会に提出され、修正協議には応じず、一定期間審議すれば過半数の力で採決。これを変えたいと。

古川元久 国民民主党国対委員長:
鳩山政権時に変えようとしたができなかった。与党の中で事前審査で決めたことを出してきて国会で議論するのではなく、決める前に出してこいと。国会で法案ごとに小委員会を作り与野党の議員が一緒に逐条審査をやる。

反町理キャスター:
立憲は対自民のリーダーシップをとりたいが、国民民主は立憲の言いなりになる立場は嫌だ。参院選を見据え、野党全体ではなく国民民主が今の勢いを維持することに苦心しているように見える。

古川元久 国民民主党国対委員長:
国会の改革は今、与野党を超えた深刻な問題。そんな目先の政局の話じゃない。今回投票率が下がったことは本当に深刻に考えなければいけない。投票に行かない人たちが半分近い。国会でちゃんと議論がされている姿を作り、日本の民主主義を守らなければ。

反町理キャスター:
例えば党首会談において玉木さんが石破総理に要求した三つの提案は103万円の壁、能動的サイバー防御、政治改革。関連して視聴者からメールが来ている。「野党の与党への要求の裏付けとなる財源は、与党が責任を持って捻出すべきか野党が財源を示すべきか」。

古川元久 国民民主党国対委員長:
政策一つごとに財源をという問題じゃないはず。予算とは100兆の中でどう考えるかだから、全体の枠を考えるのは与党の責任。我々は後ろに政府がいるわけでもなく、そこまで細かい計算はできない。

長妻昭 立憲民主党代表代行:
我々も補正予算案を出したが、金融所得課税の強化で格差を是正すると同時に財源を捻出する手法についても明記した。内々では試算しているが、政府に対しても今後求めていきたい。

政治資金規正法、選択的夫婦別姓の行方

竹俣紅キャスター:
立憲は政治資金規正法の再改正などを議論する政治改革特別委員長のポストを押さえた。議論への影響は。

政治ジャーナリスト 田﨑史郎氏:
これは委員長云々ではなく、自民が臨時国会で旧文通費の問題、政策活動費の問題、第三者機関の設置を打ち出していることが重要。

反町理キャスター:
自公と国民民主の間で議論されるのはその3つだけでは。立憲・野田代表の発言ではそれに加えて企業・団体献金の禁止の問題が挙げられたが。

古川元久 国民民主党国対委員長:
私達は政治改革の話で自公と個別の議論をしない。また与野党の第一党だけで協議してまとめてはダメ。国会全体で。

長妻昭 立憲民主党代表代行:
野党第一党でも勝手にやるのではなく、野党の皆さんの意見を集約するということもある。ラウンドテーブルみたいなやり方もある。だが今回の本丸は単に裏金どうこうではなく企業・団体献金を禁止すること。

古川元久 国民民主党国対委員長:
立憲が出している企業・団体献金禁止の案には(ただし政治団体は除く)というカッコ書きがある。いろんな団体が政治団体を作って献金することは禁止されない。そこは議論が必要。

竹俣紅キャスター:
選択的夫婦別姓などを審議する法務委員会でも、立憲が委員長のポストを獲得。

長妻昭 立憲民主党代表代行:
我々が法務委員長を取って公明党さんも賛成できる法案を作って議員立法すれば、法務委員会で成立する可能性が高い。今や経済界もこぞって賛成している。

古川元久 国民民主党国対委員長:
これは賛成。強制ではなく選択なので。価値観に関わることなので、自民も党議拘束を外せばいい。それぐらいのリーダーシップがなければ政権は続かないのでは。

反町理キャスター:
自民の保守派の人たちが反対・棄権した場合、見た目では党が割れたように見える。

政治ジャーナリスト 田﨑史郎氏:
党議拘束をかけなければ当然投票行動は違ってくるが、それで党が実際に割れることはないだろう。

「BSフジLIVEプライムニュース」11月11日放送