首里城正殿には2019年の火災の反省から、最新の消火設備や防火体制の見直しが行われている。

万が一、火災が起きても被害を最小限に抑える対策について取材した。  

火災被害はなぜ拡大したか

人々が眠りについていた深夜2時30分頃、沖縄のシンボル「首里城」が炎に包まれた。

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巨大な木造建築である正殿内部からあがった火は瞬く間に燃え広がり、7つの建物が全焼、貴重な美術工芸品など多くの文化財も失われた。

消防車両60台、219人体制で消火活動にあたったにも関わらず、なぜここまで被害が広がってしまったのか。  

首里城復元整備推進室 佐野敏幸 建設監督官:
いま見えるのがスプリンクラー配管となっています    

国営沖縄記念公園事務所で首里城の防災設備を担当する佐野敏幸さん。

消火設備としてさまざまな施設に取り付けられているスプリンクラーだが、火災当時の首里城には設置されていなかった。  

首里城復元整備推進室 佐野敏幸 建設監督官:
警備員が駆け付けたときにはすでに煙が充満しており、初期消火に遅れが生じております

スプリンクラーは設置されていなかった理由  

2000年に世界文化遺産に登録された首里城だが、地下の遺構以外は復元された施設のため、正殿などは重要文化財ではない。

そのため木造でありながら文化財保護法や消防法に基づく防火対策は義務付けられておらず、さらに内部の景観を損ねる恐れもあることからスプリンクラーは設置されなかった。

火災の教訓を活かし、今回の再建では景観に配慮したスプリンクラーが導入される。

首里城復元整備推進室 佐野敏幸 建設監督官:
小規模な火災であればスプリンクラーで消火できます。このあと天井材が貼られ、内装にあわせてスプリンクラーヘッドと呼ばれる放水口の設置を進めてまいります

沖縄総合事務局では火災に対し、早期覚知や初期消火、延焼防止など5つの段階に分けて対策を行っている。

火をいち早く発見するために監視カメラもその一つだ。  

火災発生時の映像では深夜だった事もあり画面が暗く、煙や炎の位置が確認できなかった。

一方、今回導入された「低照度型監視カメラ」の映像では、夜間でも鮮明に素屋根内を確認できる。正殿内部にも死角を作らないように設置される予定だ。

さらに、これまでは24時間体制でモニターを監視する警備員が消防に通報していたが、今回から煙や熱感知器が作動すると自動で関係機関に通報される。  

延焼防止

和歌山県の高野山にある御影堂。周囲で火災が発生した際には「ドレンチャー」と呼ばれる装置が作動し、下から放水し水の膜を作ることで、火の粉や熱から建物を守る。

この装置は首里城にも設置されている。

新たな設備では限りある水を有効に使うため4つの系統に分け、必要な箇所に放水できるようになる。

消火活動

首里城での消火活動は困難を極めた。  

Q.消防車は正殿の近くまで入れる? 

照屋雅浩 署長(当時):
いや、入れないです。かなりのホースを繋げて100メートル、200メートルは延長しています

首里城は6メートルを超える城壁に囲まれ、正殿まで消防車が近づくことができなかった。消防士たちは城壁の外から何本ものホースを繋げながら正殿に向かったが、さらに壁が立ちはだかる。

首里城復元整備推進室 佐野敏幸 建設監督官:
消防隊の進入経路に城門があり、城門の開錠がされていなかったために(カギを)破壊しながら消防隊が進入してきたので、その点で時間がかかっている

さらに急な勾配など城特有の構造に阻まれた結果、到着から放水まで17分と大幅に遅れてしまった。  

こうした課題を解決するために、あらかじめ連結送水管を城郭内に敷設し、消火用の水を城郭の外から迅速に送れるように整備。発災時に城門が自動的に開錠するシステムに変更したりしている。

首里城復元整備推進室 佐野敏幸 建設監督官:
設備のみに頼ることはせずに、それを使う人がいるため、防災訓練も常に必要になってくると思います

喪失感や屈辱は忘れることはできない

2024年10月31日の早朝に防災訓練を実施したように、首里城公園では毎月、夜間や日中など火災のシチュエーションを変えて訓練を行っている。

その訓練を主導するのが屋嘉比(やかび)勝さん。  

防災危機管理室 屋嘉比勝 室長:
フェーズに合わせた、しっかりとした防災体制、自衛消防隊の練度を高めていくということを今からしっかりやっていきたいと思っています

屋嘉比さんは火災当時、那覇市消防局の指令センターで現場のサポートや近隣消防への応援要請などをしていた。

防災危機管理室 屋嘉比勝 室長:
首里城正殿を失った喪失感とか屈辱は忘れることができないです

屋嘉比さんは2022年に消防を早期退職し、火災を機に設置された「防災危機管理室」で防災の知識や経験を伝えている。

防災危機管理室 屋嘉比勝 室長:
二度とあのようなことが起きない。もし起きても被害を最小限に食い止めるということをしっかり職員一人ひとりに意識を持って首里城を守り、後世に繋いでいくことを成し遂げたいと思っています

2026年の完成を目指す首里城正殿。沖縄のシンボルを火災から守るための備えが進められている。

(沖縄テレビ)

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