色鮮やかな体色が錦にたとえられ、国魚としても位置付けられているニシキゴイのオークション。その驚きの落札価格とは?

日本の「わびさび」を象徴

2024年11月6日、福岡県南部を流れる筑後川沿いの一角に集まった多くの外国人たち。観光目的ではなさそうだ。いったい何のために? 彼らのお目当ては、日本が誇る“泳ぐ宝石”ともいわれるニシキゴイだ。久留米市の『尾形養鯉場』で開かれたオークション。この日は、約200匹のニシキゴイが競売にかけられた。

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「アメリカでも多くの人が日本のニシキゴイを楽しんでいます。予算は5ミリオン円(500万円)」とアメリカから買い付けに来たバイヤーは鼻息も荒い。中国人バイヤーは「予算はちょっと言えないけど、きょうは50センチから1メートルの魚が登場するから皆さん注目していると思います」と真剣な表情でニシキゴイの値を定めていた。

ニシキゴイは、日本の「わびさび」を象徴する、その華麗な姿が好評で、海外でも人気が高い。さらに円安の後押しも受け、国内生産の約8割が輸出されている。

「人気があるのは『丹頂』ですね。頭に日の丸があるみたいな白地に赤い模様のやつ。すごく海外のお客様に人気があります」と笑顔でニシキゴイを眺めるのは、オークションを取り仕切る養鯉場オーナーの尾形学さん。丹頂とは、白地に赤と黒の斑紋のあるニシキゴイ。大正時代に品種改良された中心品種だ。

頭部が赤い「丹頂」
頭部が赤い「丹頂」

一大マーケットの中国が“解禁”

「中国が解禁されたおかげで中国からのお客さんも多いし、東南アジア、ヨーロッパ、すごく増えましたね」と話す尾形さん。2023年、福島第一原発からの処理水放出などを受けて「一大マーケット」とされる中国が、日本からのニシキゴイ輸入を禁止していたが、1年ぶりに再開されたとあって、今回は高値に期待が高まっていた。

午前10時、異様な熱気に包まれるなか、オークションが始まった。序盤からどんどん、つり上がって行く値段を横目に、大きなバケツに入れられたニシキゴイは、レッドカーペット上を行ったり来たりしてバイヤーに披露される。

「310万、310万、310万だ!イエーイ!」と場内に響くバイヤーの声。ニシキゴイの「わびさび」とは対照的に、会場では、札束が飛び交うマネーゲームが繰り広げられていた。

高級車も買えるほどの値段で落札

この日、200匹余りのなかで最も注目を浴びたニシキゴイは事前に行われた品評会でも高評価を受けた『大正三色』と呼ばれる紅白模様に黒が混ざったニシキゴイだ。価格は大台3桁の100万円から始まった。

「470万!480万!!490万!」とどんどん値が上がっていく。その結果、『大正三色』に付けられた最終値段は何と510万円。高級車さえ買える金額だ。

落札したのは大分県から参加した男性。「素晴らしい、素晴らしいコイで…、模様と質と…、素晴らしいですね」と外国人バイヤーとのマネーゲームに競り勝ち、感無量のようすだった。

「きょうは私が想像していた以上に良い相場で皆さんに落としていただいて、本当に良かったです」と話す尾形さん。そして「本当に良いコイを送るときって、寂しいんですよ。娘を嫁がせるときの親父の気持ちだと思います」とオークションを振り返った。

世界中で注目を集める“泳ぐ宝石”ニシキゴイ。止まらない円安を横目に、きょうも世界のどこかで優雅に泳いでいることだろう。

(テレビ西日本)

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