孫とのふれあいも高齢者にとっては笑顔が増え、脳が活性化する貴重な時間だという。

「孫の柔らかい手を握るだけで『幸せホルモン』と呼ばれるセロトニンやオキシトシンが出ます。これは老人用施設で犬や猫を飼うのと同じ理由で、スキンシップはとても大切です。
おばあちゃんと手をつないで散歩したり、肩をもんであげると温かさが伝わります。おじいちゃんやおばあちゃんとスキンシップを図ることで、『人間は年をとると筋力が衰える』ということを孫が学べる大切な機会になります」
思い切った「片付け」はやめて!
一方、気を付けたい行動もある。
たまに帰省すると「実家を思い切って片付けよう」と考えがちだが、高齢者にとっては大切な思い出を一気に捨てられた寂しさから、認知症を発症するリスクがあるという。

「最近のブームもあってか、子どもが実家を一気に片付けることがあるようです。しかし一度にごっそり捨てると心にぽっかり穴が開いてしまい、喪失感から認知症になってしまうことがあります。
認知症の治療では、懐かしい物を見て当時の記憶を思い出させる方法もあるので、モノを減らしたい場合は、少しずつ捨てたり『これ買い換えようよ』と促して、身の回りのものをコンパクトにしていき、思い出の物はなるべく残してあげてください。
また、家具などの配置換えをする際は、その人の使いやすさを尊重してください。家の中の動線は『慣れ』があるので、他人から見ると不便でもその人には良い場合があります。どう動いているかを観察するのが大切です」

コロナにより加速した「個の尊重」。
しかし高齢者にとって行き過ぎた「ひとり時間」は、孤立や社会性の欠落を招き、認知機能の低下につながる危険性がある。
帰省した際は、親の様子を観察し、出来ていないことを指摘するのではなく「把握する」に留め、今後の過ごし方を一緒に考えてみてはいかがだろうか。
