習い事や集まりは一旦行かなくなると、再開するのがおっくうに感じる人も少なくない。子どもとしては何とか参加を促したいところだが、その前にはまず、親の“今の趣味”を正確に把握する必要があるという。

「子どもは、自分が小さかったころの親の趣味を覚えていることが多いです。昔はハワイアンが好きで“フラ”を習っていた母親も、今は全く興味がなく韓国ドラマに夢中になっているケースもあります」
今の趣味を知り「一緒に探そうか」
「そこで『今何にハマっているの?』と直接聞いたり、“今の親”を知っている人に最近の様子を聞いてみてください。趣味を把握した上で、『一緒に探そうか?』『○○できるといいね』などと促すのが良いと思います。
会話で大事なのは、自分の考えを一方的に伝えるのではなく、『そういうことになっているんだね』と、言われたことを返してあげることです。我々は働いていると“解決思考”がクセになっていて、ついつい指示してしまいますが、そうではなくて親に自主性を持たせるように促すことが大切です」

そしてこれらの知識は、介護が必要になった時にも役に立つという。
「今の親の趣味を知っておくと、いずれ介護が必要になった時の判断材料にもなります。
例えば、デイサービスを選ぶ際、歌が好きならば“歌うアクティビティ”があるデイサービスをセレクトできます。趣味がマッチングしていないと親は行きたがりません。会話がしっかりとできるうちに親の意思を確認しておくことが大事です」
社会参加とコミュニケーション
高齢者はどんなに足腰を鍛えていても、人との「コミュニケーション」が不足していると、頭や顔の筋肉が衰え、思考力も低下してしまう。
ただ、話したいと思っても近所に会話する仲間がいない人もいるかもしれない。そこで飯野さんは「自治体が運営するパトロールやボランティア活動への参加」を提案する。

「近所に散歩仲間やおしゃべりする相手がいない場合は、自治体が行っているパトロールやボランティア活動に参加することも1つの選択肢です。『街を守る』といった役割を担い、人に必要とされているといった使命感や充実感が得られます。
そしてコミュニケーションをとることで高い満足感も得られます。会話はレスポンス能力が必要なので頭を使います。また、喋ることで顔の筋肉が鍛えられます。コロナで面会が制限された老人ホームでは会話の機会がほとんどなくなってしまったため、口腔機能が衰えて歯がすべて抜けてしまったケースもあります。
フレイルは足腰の筋肉だけでなく、耳や味覚、脳、心など全身の状態なので、コミュニケーションはとても大切です。社会的な活動に参加する意識の高い人ほど介護状態になる時期は遅くなります」