2024年10月から新型コロナワクチンの定期接種が始まり、福岡市内のクリニックにも患者が接種に訪れていた。対象となるのは65歳以上の高齢者。今回から費用の一部が自己負担となることもあり、出足は鈍いという。

この記事の画像(11枚)

『やまもとホームクリニック』の山本希治・院長は「インフルエンザワクチンの接種には、かなり多くの患者が来るが、コロナワクチンは、その半分くらいの人が受けに来ている状況。まだ周知されていないのかもしれない」と話す。

承認されたばかりの新ワクチン追加

今回の定期接種に使われるワクチンは全部で5種類となっている。ファイザー、モデルナなどの『mRNAワクチン』、武田薬品工業の『組み換えタンパクワクチン』、そして承認されたばかりの新しいワクチン、MeijiSeikaファルマの”次世代型mRNAワクチン”といわれる『レプリコンワクチン』だ。

レプリコンワクチンは、抗体を作るために必要なウイルスのタンパク質であるmRNAを一定期間、体内で作り続ける”自己増幅型”で、従来のワクチンより効果が比較的長く続くとされている。

やまもとホームクリニックでは現在、2種類のワクチンを使用している。山本院長に聞くと「いままで通り、同じタイプのファイザーのコミナティというワクチンと、どうしても国産がいいという人のためには、第一三共も準備している。レプリコンワクチンは1バイアル(瓶)に16人分が入っているので、短時間で使用をしないといけない。いまの接種状況からしても現実的ではない」とワクチンを巡る現状を話してくれた。

日本でしか承認されていない…

この日訪れていた患者からはレプリコンワクチンについて「ジムとかあちこちに行くと『レプリコンワクチンを打った人は来ないで下さい』と張り紙が貼ってあると聞いて、打ったらいけないのかなと思って…」と困惑した声も聞かれた。

レプリコンワクチンを巡っては2024年8月、日本看護倫理学会が緊急声明を発表。このなかで、このワクチンが、まだ日本でしか承認されていないことや自己増幅型のため、接種者から非接種者にワクチン成分がシェディング、感染する懸念があることなどを指摘したのだ。

福岡県内にも“入店拒否”店が続出

これを受けネット上などでは”ワクチンの空気感染”を恐れる声が相次ぎ、レプリコンワクチンを接種した人の入店を拒否する店が続出。HPに「レプリコンワクチンの接種をされたお客様におかれましては入店をお控え頂きますよう、お願い申し上げます」と掲載する店舗や美容院の予約サイトにも「レプリコンワクチン接種者の入店禁止」と表示する店舗が数多くあった。

実際にインスタグラムで「レプリコンワクチン接種者の入店拒否」を伝えている福岡市内のラーメン店を訪ねた。”レプリコン接種者”の入店を拒否している店主は「周りの接種していない人にも影響を与える。唾液とか汗とかを介して感染するという話も多いので、やはり安全性が確認していないという状況でほかの人に迷惑がかかるんじゃないか。やっぱりちょっと怖いですよね。治験を行ったベトナムであったり、(共同開発した)アメリカであったりしても、許可されていないのに、なぜ日本が承認するのかという疑問があります」と複雑な胸中を語った。

専門家「科学的根拠が一切ない」

日本のみ承認されている理由について佐賀大学医学部附属病院感染制御部の的野多加志・特任准教授は「世界でも、もう既に申請を進めていて、今後、世界でも出てくるワクチン、つまり何か重大な副作用を隠して、何か不安があるからほかの国では採用されていない、そういったものは誤解だと思っています」と明言する。

また”ワクチンが感染する”可能性については「結論から申し上げますと、感染は起こらないと断言していいと思います。ワクチンによって自分に免疫をつくるという効果はありますけれども、自分の体に作ったものを外に出してしまう。そういったシェディングというものは、科学的な根拠が一切ないと考えています」と話した。

”ワクチンの感染”について福岡資麿・厚生労働相も「ワクチン成分が他者に伝播し、健康被害が生じるという科学的知見はなく、こうした内容について厚労省のHPで周知を行っているところです」と国民に冷静な対応を呼びかけた。

レプリコンワクチンを製造するMeijiSeikaファルマは、批判を繰り返す団体を名誉毀損で提訴する意向を示している。

新型コロナ感染拡大からまもなく丸5年。私たちはまだその向き合い方に悩まされる日々が続きそうだ。

(テレビ西日本)

テレビ西日本
テレビ西日本

山口・福岡の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。