2024年のノーベル経済学賞に、社会制度と国家の繁栄について研究したアメリカの大学の研究者3人が選ばれた。
受賞が決まったのは、マサチューセッツ工科大学のダロン・アセモグル教授、サイモン・ジョンソン教授、シカゴ大学のジェームズ・ロビンソン教授の3人だ。
この記事の画像(8枚)王立科学アカデミーは、受賞の理由について、3人が国家間の経済格差を是正するという課題において、社会制度の重要性を実証したと評価している。
アセモグル教授とロビンソン教授は共同で執筆した『国家はなぜ衰退するのか』の著作でも知られている。
植民地政策が与えた“長期的な影響”を分析
「Live News α」では、エコノミストの崔真淑(さい・ますみ)さんに話を聞いた。
堤礼実キャスター:
2024年のノーベル経済学賞、どうご覧になりますか。
エコノミスト・崔真淑さん:
今回の受賞理由は、ざっくりいうと、なぜ国ごとに経済格差が存在するのかについて、制度の側面から研究を重ねてきたことに対する受賞です。
現在、最も豊かな先進国、上位20%の国の富は、最も貧しい国の20%の富に対して約30倍もあるという強烈な格差が存在しています。こうした貧困や格差はどこからくるものなのか、その原因と解決策を示しています。
堤キャスター:
世界的な貧困や格差の解消のために、どんなアプローチがあるのでしょうか。
エコノミスト・崔真淑さん:
これまでは、赤道直下の国々は貧しい国が多く、気候の影響が大きいとされてきました。
しかし、アセモグル博士たちが明らかにしたのは、社会や政治制度の影響は極めて大きいということなんです。特に欧州諸国による世界中の植民地政策が、国別の格差を生む契機になったとも指摘しています。アフリカなどの多数の国に対して長期的な影響を分析しています。
堤キャスター:
その長期的な影響とは、どういうことなんでしょうか。
エコノミスト・崔真淑さん:
植民地政策がとられてしまった国の中でも、経済成長を続ける国とそうでない国があります。大衆の利益を搾取する政治制度を作った国では、今でもそうした制度が根付き、現代の低い経済成長につながっているとしています。
一方で、投資を促すなど、相対的に民主的だった国では逆の結果を生んでいます。さらには、博士たちは、独裁的な政治や経済の制度をもつ一部のエリート層に集中した社会は、いずれ変革を迎えることも示唆しています。
世界中で政治が荒れているだけに、そうしたことが彼らの受賞にもつながったようにも思います。
日本の若手研究者のノーベル賞受賞にも期待
堤キャスター:
今後、日本人のノーベル経済学賞の受賞にも期待したいですね。
エコノミスト・崔真淑さん:
不況の仕組みを分かりやすく解明した清滝信宏博士や、家計の消費や貯蓄に関する実証的な研究で知られる林文夫博士など、マクロ経済学者に受賞の期待がかかっています。ただ、若手研究者でも、世界的に有名な経済学の学術雑誌に論文が掲載されるケースが多くなっているため、今後に期待したいです。
堤キャスター:
ノーベル賞は研究者にとって最高の名誉である一方、人類の進歩や社会の発展に尽くしたことへの感謝のしるしなのかもしれませんね。
(「Live News α」10月14日放送分より)