「合わせガラス」はハンマーでも粉砕できない
暑い夏が終わると到来するのが、豪雨や台風のシーズン。
最近では短時間の局地的な豪雨により道路が冠水し、自動車が立ち往生してしまい“水没”するケースを目にする。
こうした中、国民生活センターが8月20日、気になる呼びかけを始めた。
台風や豪雨で水没した自動車から脱出する際、“緊急脱出ハンマー”で窓ガラスを割ろうとしてもできないケースが増えているとして、注意を呼び掛けているのだ。
国民生活センターによると、車に使われる窓ガラスのうち、熱処理で強度が増した「強化ガラス」は“緊急脱出ハンマー”などで破砕できるが、ガラスを2枚以上接着させた「合わせガラス」は破砕できないのだという。


4割が「ハンマーで粉砕できないガラスがあることを知らない」
さらに、国民生活センターが、自動車を所有する消費者5000人を対象に実施した調査では、自分が所有する自動車のドアガラスの種類を知らない人が約7割に上った。
また、“緊急脱出ハンマー”を積載している(積んでいる)人の約4割が「緊急脱出ハンマーで破砕できないガラス(=合わせガラス)があることを知らない」という結果が出ている。

調査結果のように“緊急脱出ハンマー”を使えば、車の窓ガラスを割ることができると思って車に積んでいる人がいると思うが、実はそうではなかった。
では、自分の自動車の窓ガラスが「強化ガラス」なのか、それとも「合わせガラス」なのかを、簡単に見分ける方法はあるのか?
また、窓ガラスが全て「合わせガラス」の自動車に乗っている時、水没の被害に遭ったら、どのように対処すればよいのか?
国民生活センター・商品テスト部の担当者に聞いた。
高級車や電気自動車ではサイドガラスにも使われ始めている
――「合わせガラス」はどのような自動車で使われている?
「割れても視野が確保できる」、「破片が飛び散らない」、「モノ(=飛んできた物)が貫通しない」というメリットがあるため、今は、ほとんどの自動車のフロントガラスに使われています。
また、外の音を遮断する「遮音性」も高いため、最近では、高級車や電気自動車のサイドガラスにも使われ始めています。
自動車のどの箇所のガラスが「強化ガラス」なのか、「合わせガラス」なのかについては、ガラスに表示されたマークの表記を参考にしたり、取扱説明書を確認したり、自動車メーカーに問い合わせるなどして、あらかじめ確認しておきましょう。
「強化ガラス」と「合わせガラス」の見分け方
――「強化ガラス」と「合わせガラス」の見分け方は?
「強化ガラス」は、“JISマーク”の付いた自動車用ガラスでは、JISマーク付近に「T」または「TP」の表記があります。

「合わせガラス」は、“JISマーク”の付いた自動車用ガラスでは、JISマーク付近に「L」または「LP」の表記があります。

――「合わせガラス」はなぜ、緊急脱出ハンマーで粉砕できない?
「合わせガラス」は、2枚のガラスを重ねたもので、ガラスとガラスの間に柔らかい樹脂が挟まれています。
この樹脂が、ガラスが割れても残るため、緊急脱出ハンマーでも粉砕できないわけです。
水没した時の対処法
――「合わせガラス」が使われた自動車に乗っているとき、水没したら、どう対処すればよい?
まずは落ち着いて、シートベルトを外してください。
その後は、水没の程度に合わせて、対処する必要があります。“車の位置が水の浅い場所にある場合”は、ドアが開く可能性がありますので、ドアが開いたら、脱出してください。
――“車がある程度、深い場所に沈んでしまった場合”は?
“車がある程度、深い場所に沈んでしまった場合”は、水圧差が大きくなり、人の腕力ではドアを開けるのは難しくなります。しかも、「合わせガラス」は、緊急脱出ハンマーでも粉砕できません。
こういった場合は、しばらく浸水させ、“車内”と“車外”の水圧差が無くなるまで車に水が入ってくるのを待つ。
そうすると、ドアが開きやすくなりますので、ドアを開けて脱出してください。
なお、国土交通省では、車が水没した場合の脱出手順について注意喚起を行っていますので、こちらもご覧になってみてください。

――このような呼び掛けを、真夏の今、出したのはなぜ?
今年も梅雨の時期に水害が起きたのに加え、これからは台風シーズンで水害の危険性が高まります。こうしたことから、台風シーズンが到来する前の今、注意喚起の意味を込めて、出すことにいたしました。
自分が所有する自動車の窓ガラスは「強化ガラス」なのか「合わせガラス」なのか。
確信が持てない人は、本格的な豪雨・台風シーズンが到来する前に確認し、いざというときのために備えておくことをおすすめしたい。
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