長かった今年の酷暑だが、やっと過ごしやすい季節になってきた。
こんな時期に要注意なのが「秋バテ」だという。
「カラダが疲れる“夏バテ”と違い、自律神経が関係する“秋バテ”は、よりつらい症状が出ることもあるので注意が必要です」 と話すのは、横浜鶴見リハビリテーション病院の吉田勝明院長。詳しく話を聞いた。
■起床時に疲れていたら「秋バテ」の疑い
この記事の画像(5枚)横浜鶴見リハビリテーション病院 吉田勝明院長:『夏バテ』とは、多くの場合、単純な体の疲れです。夏の暑さによって体が衰えた状態。仮に夕食を食べる元気がないぐらい疲れていても、バタンキューと寝て、朝起きると元気になっている。これが体のバテ、夏バテです。
これに対して、『秋バテ』は、体はそこまで疲れていません。なんとなくメンタル的なものが鬱々としていて不眠に繋がる。寝不足で、朝起きた時に疲れている、やる気が出ず、頭がぼーっとする、そういう特徴があります。
■「秋バテ」の原因は自律神経の乱れ
横浜鶴見リハビリテーション病院 吉田勝明院長:秋バテの症状は、自律神経の乱れがベースにあります。
夏に冷たいものを摂りすぎた内臓の冷えや、冷房冷えなどが遠因となって自律神経の変調が起こったところへ、秋は台風や長雨といった気象の影響を多く受けるので、さらに自律神経が乱れます。 夏にはしゃいで、たくさん遊び、食べ、飲んだ人などは注意が必要です。
大別すると、神経は「運動神経」と「自律神経」の2つです。 そのうち「右手を上げて」「左手を下げて」など、自分の意思でコントロールできるのが運動神経。
コントロールできないのが「自律神経」です。「胃と腸を10回動かして」「心臓を5秒間止めて」。できませんよね。これが自律神経です。
自律神経には「交感神経」と「副交感神経」があります。 起きて活動している時に働くのが「交感神経」、リラックスしたり寝ている時に働くのが「副交感神経」です。
例えば「目」は、起きている時(交感神経)は瞳孔が開き、寝ている時(副交感神経)は瞳孔が小さくなります。自律神経が乱れると、本来、瞳孔が小さくならないといけないタイミングで瞳孔が開いてしまい、眠れなくなります。
反対に、「胃」や「腸」というのは、寝ている時(副交感神経)に活発に動き、昼間、交感神経が働いている時はほとんど動きません。夜、しっかり眠れると、副交感神経が働いて胃や腸が動くので、朝起きた時に便通が出て食欲も出ます。しかし、夜、交感神経が働いてしまうと、胃や腸が動かず、便秘になったり吐き気をもよおしたりするのです。
「心臓」に関してもそうです。昼間は交感神経によって早く動き、夜は副交感神経でリラックスしてゆっくり動く。これのバランスが崩れると、眠ろうとした時に心臓が動いてドキドキしてしまい眠れなくなります。 これが自律神経のアンバランスです。
■朝日を浴びて「幸せホルモン」を作る
横浜鶴見リハビリテーション病院 吉田勝明院長:秋バテの予防として、ぜひ習慣にして欲しいのが、「朝日をしっかり浴びる」ことです。
自律神経の乱れを整えるには、脳内ホルモンの「セロトニン」が必要です。俗に「幸せホルモン」とも呼ばれ、交感神経と副交感神経を調節し、心のバランスを整える神経伝達物質です。太陽の光を浴びると、このセロトニンの分泌量が増加するのです。
もちろん、日中でも夕日でも効果はありますが、朝は空気がきれいですし、より多くの効果が期待できることから推奨しています。 それに、朝日を浴びるということは、規則正しい生活が出来ていることでもあります。 通勤や家事の中で取り入れてもいいですし、朝、カーテンを開けて陽射しを取り込むだけでも変わってきます。
■秋の味覚を楽しみ「セロトニン」を増やす
横浜鶴見リハビリテーション病院 吉田勝明院長:自分でセロトニンを作る方法としては、食事も重要です。タンパク質、ビタミン、ミネラルなどの栄養素を積極的に摂って下さい。秋に旬を迎える食材は、これらの栄養素が多く含まれています。サンマや鮭、キノコ類、梨やブドウといった果物、秋の味覚をたくさん楽しみましょう。調理法はスープや煮込みなどの温かいものにして、体を温めましょう。
そして、感動することも大切です。涙が出るほどよかったという経験をしてください。映画やドラマ、アニメ、本。感動して下さい。セロトニンを作る大事な要素です。
■他人と自分を比べない 比べるなら昨日の自分と
横浜鶴見リハビリテーション病院 吉田勝明院長:秋というのは、食欲の秋・運動の秋・読書の秋・芸術の秋、あるいは旅行の秋などと表現され、楽しんでいる人も大勢います。
秋バテして心身に不調を感じている時、楽しんでいる人と比べて「自分は楽しめていない」と落ち込まないで下さい。 他人と自分を比較して、さらに落ち込む悪循環に陥ることがあります。どうしても比べたいなら、昨日の自分と比較して下さい。自分のペースで生活することが大切です。
(横浜鶴見リハビリテーション病院 吉田勝明院長)
(関西テレビ 2024年9月29日)